DX化が叫ばれる世の中になってきました。
そんなDX化の一翼を担うのがRPAです。
今回はRPAの実際の導入事例を見て、RPA導入のリアルを覗いていきます。
営業事務へのリアルなRPA導入事例を2つみていきます。
【事例1】営業事務へのRPA導入
まずは、1つ目の事例からです。
営業事務のRPA導入背景
私は現在、広告営業の部署の営業マネージャーとして働いております。
私の抱える業務のひとつに、営業の生産性の向上があります。
営業が営業活動に集中するために、社では、営業5人に1人の割合で営業アシスタントが在籍しています。
しかし、営業の担当する顧客数も多くなり、営業アシスタントの手が足りず、営業の業務が増えテイク状況が多々発生しています。
さらに社全体の状況として、営業アシスタントを追加で雇う余裕がないことや採用しても離職するケースもあり、常に営業も営業アシスタントも、人手が不足している状況です。
そこで何か業務効率を上げる方法はないものかと考えている時に、人に変わる作業を行うRPAの存在を知りました。
少しずつ空いた時間に何かRPAで代替できる業務がないものかと考えたり、実際にRPAツールを使用し、ロボットの開発を行ったりしていました。
微々たるものではありますが、業務の合間に無料のRPAツールを使用し、営業アシスタントの業務を代替するロボットを開発しました。
私の直属の上司に、単純業務を自動化するRPAツールというものがあることや実際に開発したことを伝えたところ、RPA導入に対して前向きになっていただきました。
さらに執行役員にまで話が上がり、有料のRPAツールの使用を検討してみようということになりました。
営業事務のRPAツール導入の決め手
無料のRPAツールを個人的に利用していた際に試したツールは、いくつかあります。
具体的には、Microsoft社のPower Automate Desktop、UiPath株式会社のUiPathです。
弊社で正式にRPAツールを導入することになった際に、そのほかのツールも比較検討した結果、RPAテクノロジーズ社のBizRobo!を使用することに決定しました。
他RPAツールと比較したBizRobo!のメリットとしては2点あります。
1つ目は、ひとつの有料ライセンスで複数人での開発利用が可能であることです。
ライセンスが人に紐づく形ではないので、1ライセンスを使いまわして複数人で使用することが可能です。
ただし、同時間に複数人で開発を行うことはできないという問題がありました。
しかし、弊社では、RPAの開発部門を設立しておらず、各部署の代表者が業務時間の合間にロボット開発を行うため、開発時間が重複することがあまりないであろうということで、導入の際には、大きな問題とはなりませんでした。
2つ目は、一部ではあるもののバックグラウンド処理ができることです。
他デスクトップ版RPAツールは、PC画面を占有してしまい、ロボット起動中にPCを操作することができないケースが多いです。
しかし、BizRobo!の場合は、バックグラウンドでロボットが実行され、自身のPCで業務を進めることができます。
さらに、画面ロック状態でも正常に処理することが可能です。
バックグラウンド処理ができない場合もありますが、その懸念点を解消するためにもう一台ロボット実行専用のPCを準備しています。
営業事務業務のどこにRPAを導入したのか
ひとつのライセンスで社の複数の部署が共用利用しています。
営業が営業活動に集中するために社では、営業5人に1人の割合で営業アシスタントが在籍していますが、まずは、単純作業の多い営業アシスタントの生産性向上をし、人でしか出来ない業務や頭を使わなければならない業務のみに営業アシスタントが注力できるようにと考えました。
具体的には、営業アシスタントの業務の6割を占める原稿作成業務についてのRPA導入です。
原稿作成は特別なネットのシステムにログインし入力、コピー、写真のアップロードを行うことで完結する作業です。
原稿作成の業務の中には、元々ある原稿内容を全てコピーするという作業が発生することがあります。
手動で行っていたコピーアンドペーストをロボットで自動化しました。
また、社で担当する3000件のお客様にお送りする原稿の情報を抽出する作業も毎月手動で行っていたところをロボットで自動化しました。
さらに営業の商談資料作成の際には、ひとつひとつ目視でWEBサイトに訪問し、必要な情報を探し出し、エクセルへ転記するという作業を膨大に行っていましたが、そちらもロボットにて自動化をしました。
RPA導入により、単純作業から開放され、より知的業務に集中することができました。
営業事務業務へのRPA導入前と導入後の比較
2021年10月のRPAツールBizRobo!の導入以降、現時点で8か月経過しています。
毎月ロボットの開発をし、いくつかのロボットをリリースしていることや、現場にいる営業アシスタントのPCにBizRobo!をインストールし、ロボットの実行方法をレクチャーすることにより、業務効率化時間が毎月増えています。
現在では、月に135時間の業務時間削減及び25万円分の人件費削減に成功しております。
また、ロボットの実行を現場に任せたことにより業務改善思考が生まれ、「これもロボットに業務をお願いできないだろうか?」とさまざまな開発提案が自然と上がるようになりました。
営業事務業務へのRPA導入のメリット・デメリット
RPA導入のメリットとしては、パソコン上で行う作業をロボットが代行・自動化してくれるため、定型業務をロボットに依頼することができる点です。
人の業務であれば、休憩が必要であり、処理の速度も遅く、ミスや漏れがある可能性があります。
さらに、業務を行う作業時間と比例して費用がかかります。
また業務を行うためのレクチャー時間や研修時間もかかる上、離職のリスクや離職に伴う採用コストがかかる可能性もあります。
ロボットであれば、24時間休暇不要で動き続けることができ、開発したロボットによりますが、人での作業よりも数倍処理速度が速く、ミスはありません。
さらに費用面においては、業務量に関わらず費用が一定であり、採用やレクチャーが不要です。
そのため。生産性の向上だけでなく、コストの削減にもつながるメリットがあります。
また、’’手作業’’になっていたつまらなく感じる単純業務をRPAによって自動化していくと、生産性を大きく高めるだけでなく、単純作業から開放され、知的業務に集中することで、働きがいの向上にもつながっていきます。
反対に、RPA導入のデメリットとしては、ロボットの開発と実行が属人的になってしまう恐れがあることです。
例えば、社内の誰か1人のみがRPAでロボットを開発しているできる人を増やしておかないとその方が動けなくなった際に開発が全く進まなくなります。
そのため、複数人が開発できるような体制を早めに敷くことが大事になるでしょう。
さらに、ツールの使用料として、ランニングコストがかかり続けるため、開発初期には、業務効率化による費用削減効果が少なく、ロボット開発が進まない状況が続くと、コストばかりかかり続けてしまう恐れがあります。
【事例2】営業事務へのRPA導入
次に、2つ目の事例です。
営業事務へのRPA導入背景
私の会社は地方の小さな食品会社ではあるが、それなりに業績もよく、週休二日制で給与は地方にしてはかなりの高収入。
ただ、人が続かない。
せっかく毎年新卒の若い子たちが希望をもって入社してくるのに、3年とたたずに辞めていってしまう。
原因は、人手不足とそれによる1人当たりの残業過多。
若くて優秀な人材が入ってきても、日々事務作業に追われ、気づけば残業。
ただただ単純作業をこなす日々に若い社員は皆、やりがいを失い辞めてしまう。
この悪循環を止められずにいました。
そんな時でした。
システム関係を一貫して付託している業者へこの悩みを相談したところ、RPAという聞きなれない言葉が出てきました。
「伝票発行、受注データ入力、資材発注、売上集計、データ資料作成、PC上で作業しているこの仕事、RPAなら全部できますよ」
私は、もしそれが本当に可能になるなら我が社の悩みを解決する手段は、このRPAしかないと思い、導入を検討しました。
誰でもできるような単純な事務作業は全てRPAにさせよう!若くて未来のある力を会社の発展につながる付加価値の高い業務に注ごう!
こうして藁にも縋る思いで、我が社はRPAの導入を決意しました。
営業事務のどのRPAツールを導入したのか
当社が導入したRPAは[WinActor]です。
WinActorは、NTTアドバンステクノロジー株式会社が提供のRPAツールで
初心者でも扱いやすく、国内シェアもNo.1ということで薦められました。
導入の際のコストなども、他のRPAツールよりも抑えられるので、RPAが初めての方には導入しやすいかと思います。
※ただMacでは使用できないため、Windowsの方のみになります。
他のRPAツールの紹介も受けましたが、当社がWinActorを選んだ決め手となったポイントは大きく2つです。
プログラミング知識0の私でも操作しやすい
これが最大の決め手でした。
正直、ただのExcelでさえ完璧に使いこなせていない私にとって、RPAなど神の領域・・・。
と、初めは思っていたのですが、実際にテスト運用をさせてもらうと、自身の画面操作を自動で記録してシナリオに書き起こしてくれるので、プログラミング等は全く必要なく、スムーズにシナリオを作成することができます。
編集の際などもシナリオがフローチャートで表示されるので、視覚的に作業がしやすく、とにかくRPA初心者にとっては非常に作業がしやすいです。
より高度なシナリオを作るには、WinActorの操作自体の勉強はもちろん必要になるが、専門的な高度な知識は必要なく、まずは身近な簡単な作業からシナリオ作成に取り組んでいけば、確実にWinActorを使いこなすことができるようになると思います。
あらゆるアプリケーションに対応
WinActorはIEやOffice製品から、個々の業務システムまであらゆるアプリケーションの操作が可能となっています。
中でも、個々の業務システム(当社であれば販売管理システム)の操作をRPAに組み込めることが何よりも大きかったです。
実際、RPA導入の話がある前に、現状の問題を打破するために、大規模な販売管理システムの改修を検討していたのですが、数千万もの費用が必要で、なかなか実現できていませんでした。
しかしながら、RPA(WinActor)を導入することで、当社の販売管理システム上の作業も自動化することができたので、RPAの費用だけで問題を解決することができました。
実際にRPAを導入した営業事務業務と、導入前後の比較
さて具体的に当社でのRPAをどういった業務で活用し、どのような成果がでたのか、実際の業務を例にご紹介いたします。
《業務内容》受注データの入力~伝票発行業務まで
〈導入前〉
-業務の流れ-
1.当社指定の発注書にて、各得意先から発注をデータ(メール)もしくはFAXで受注。
2.届いた発注書をもとに、自社販売管理システムへ受注入力(手入力)。約90分/日
3.受注入力が完了後、販売管理システムにて出荷日ごとに集計がとられる。
4.出荷日当日に販売管理システムから出力した出荷表(紙ベースの帳票)をもとに販売管理システムにて伝票発行(手入力)。約50分/日
当社はこの作業を事務員2人が行っているため、1日当たり約280分の業務です。
※当社の販売管理システムは10年ほど前に構築したもので作り込まれておらず、同じ販売管理システム内のツールでもそれぞれ孤立しており、受注入力~伝票発行までが連携しておらず、手入力での作業が多く存在していた。
先にも述べたが、当初はこの販売管理システムの改修を行い、受注からその他の業務を連携させることで業務の改善を検討したが多額の費用が発生するため断念していた。
〈導入後〉
まずは導入するにあたって運用の変更を2点行った。
・受注専用アドレスを作成、各得意先からの発注メールの受信を1つのPCに統一。
・各得意先へFAX注文からメールでの発注への切り替えを推進。
上記2点を変更し、RPAを導入したことで業務が次のように改善された。
-業務の流れ-
1.受注専用アドレスへ発注メールが届く。
2.RPAにて8:00~15:00までの間、1時間ごとに受信BOXのチェックが入り、RPAが未読のメールに添付されている発注データを指定のフォルダへ保存。
3.RPAにてフォルダ内に保存された受注データをもとに販売管理システムへ受注入力を行う。
4.1日1回RPAにて販売管理システムの受注データから当日出荷のデータを出力し、そのデータをもとに伝票発行を行う。
以上、ほぼすべてRPAが作業しているので事務員の作業時間は実質0分です。
厳密にいえば、FAXでの発注からメールでの発注へ切り替えができていない得意先様が数件あり、FAXでの受注をデータに打ち換える作業が必要で日々10分程の作業が発生しています。
ただ、今後は全得意先メールでの発注に移行してもらい、本作業も必要なくなる予定です。
また余談ですが、別途導入が必要で費用も掛かりますが、OCRシステムを導入することでFAXの受注から販売管理システムの入力までをRPAにて自動化することも可能とのことです。
このようにRPAを導入した業務のたった1例ですが大きな業務改革となりました。
当社の平均稼働日は月間23日なので、
RPA導入前:1日当たり280分(4.6時間) 月間6440分(107.3時間)
RPA導入後:1日当たり10分(0.16時間) 月間230分(3.8時間)
※あくまで事務員の作業時間です。RPA稼働時間は含めていません。
結果、月間約100時間の削減!
正直ここまで効果があるとは思っていませんでした。
RPAを運用するためには、今回の例のように今までの運用の変更が必要な場合もあり、 RPAへ切り替えるまでは少し労力がかかりましたが、それさえ乗り越えれば世界が変わります。
営業事務にRPAを導入してみてのメリット・デメリット
RPA導入のメリット
・大幅な業務改善を図れる可能性がある
当社の例のように手作業で行っている業務をRPAに置き換えることができれば
業務時間の大幅な軽減が見込めます。
そのうえRPAは24時間稼働させられるので人間以上に働いてくれます。
・作業の正確性が上がりミスが減る
人が作業していた時はどうしても入力ミスや操作ミスがあり、その修正などでまた時間を取られるなどの事案が多発していました。
しかしRPAなら、決められたことを正確にこなすので、こういったミスがほぼ0になりました。
・社員が付加価値の高い仕事に取り組める
単純作業をRPAで運用することにより日々の業務に余裕ができ、人にしかできない 付加価値の高い仕事に人員を割くことができ、会社の発展につなげることができます。
RPAのデメリット
・作業は完璧ではあるが、悪く言えば融通が利かない
システム障害やバグ、いつもと異なるシチュエーションが起きてしまうとエラーになってしまい業務が停止してしまいます。
実際に運用しながらエラーが起きた際はその原因を究明し、シナリオを修正するなどの対応が必要です。
・大幅な運用変更の必要がある場合も
RPAはPC上での作業しか対応できません。よって当社の例のように今までの運用を見直し、場合によっては運用方法を変更しRPAを導入する必要があります。
RPA導入のシミュレーションを行わず、中途半端にRPAを導入してしまうと反って
業務負担になる可能性もあります。
・RPAの管理者が必要となる
RPAを導入したからといって、RPAが勝手に業務を見つけてシナリオを作ってくれるわけではありません。
しっかりとした管理者のもと、RPAに何をさせるかを考え、業務内容の見直しを行い、自社の運用に沿ったシナリオを作成する必要があります。
また、間違ったシナリオを作成してしまうと、RPAは間違った状態で業務を進めてしまいます。
管理者により定期的なメンテナンスを行い、処理内容に間違いがないか確認をすることが重要になるでしょう。
最後に
RPAは我が社にとってピンチを救った救世主とも呼べるものになりました。
導入から運用までは正直かなりの労力が必要でしたが、導入後はその労力の甲斐あって
大きな成果を得ることができました。そして何よりも若い社員たちが様々な提案や新しい
取りみに力を注ぐ時間が増え、以前よりも活気のある職場になりました。
RPAを導入して本当に良かったです。
まとめ:RPA導入で営業事務業務の効率化に成功!
ここまで、営業事務におけるRPA導入についてまとめてきました。
重要な点をおさらいしますと、
・実際に大幅に人件費と作業時間を削減することに成功
・RPAで開発できる人を複数に用意する体制を作りことが大切
・RPA導入により、ミスや漏れがなくなる
・ロボットが自動でやってくれるので、他の業務に集中して取り組むことができる
業務効率向上だけでなく、従業員の働きがい向上やコスト削減など多くの利益をもたらすRPAを是非、検討してみてください。
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