人事部では社員の個人情報を回収したり、契約書を作ったり、役所に書類を郵送したりと、色々と手間がかかる業務がありますね。
なかには記入漏れがあったり、誤字脱字があって再度書類を受け渡しするなんてことも人事の「あるある」なのではないでしょうか。
しかし近年では、このような「労務」の仕事を便利にするためのシステムがたくさん開発されています。
こちらの記事では労務担当者の仕事をサポートする労務管理システムの概要、機能、おすすめのサービスをご紹介します。
貴社バックオフィスの業務効率化のお役に立てれば幸いです。
労務管理システムとは
労務管理システムとは社会保険や年末調整の手続き、個人情報の届け出など、労務に関する社内外の手続きを効率化させるシステムの総称です。
従来紙で行っていた申請や承認をシステム上で行うことで、社員への記入フォーム配布、回収、郵送をスピーディに行える上、書類の記入漏れ、誤字脱字、間違いなどの不備を防いでくれます。
労務担当者だけではなく従業員にかかる負担も減らすことのできる便利なシステムなのです。
労務管理システムの機能
サービスによって機能は異なりますが、代表的な労務管理システムでできることをお伝えしていきます。
入退社手続き
住所、名前、電話番号、家族構成・・・など、
入退社の際に必要な情報の収集を社員本人にスマホで入力してもらうだけで完結できます。
入力に漏れや誤りがあれば即時システムが指摘してくれるので、何度も書類のやりとりをする必要がなくなります。
帳票作成
回収した従業員情報に基づき、社会保険の加入に必要な書類などを自動作成する機能です。
電子申請(e-Gov)
e-Govとは総務省が管轄するオンライン手続き、申請用の行政ポータルサイトのこと。
e-Govと連携した労務管理システムであれば各種保険の申請書をウェブ上で行政機関に提出できるので、
行政機関に直接出向く必要がなくなります。
年末調整
従業員に年末調整用URLを送信するだけで、申請書の記入、添付資料の回収をオンライン上でできるようになります。
従業員情報管理
各社員の住所、メールアドレス、マイナンバー、家族構成、給与振り込み口座などを一元管理する機能です。
初回登録後の変更も社員本人のスマホ操作で完結できます。
有休管理
従業員の有休の日数管理や申請をする機能。
従業員本人も常に自分の有休日数が確認できるので安心です。
おすすめ労務管理システム比較6選
ここでは、おすすめの労務管理システムをいくつか紹介・比較していきます。
マーケットシェア率が高く、企業からの評価が高い6つの労務管理システムをご紹介します。
SmartHR
【対応業務】
- 入退社手続き
- 帳票作成
- 電子申請
- 年末調整
- 従業員情報管理
【月額費用】
0円(30人未満)/30名以上は要問合せ
SmartHRは株式会社SmartHRが提供する労務管理システムです。
2021年まで3年連続でマーケットシェアNO1を維持する、非常に信頼性の高いサービスです。
多くの労務管理機能を備え、使いやすさやデザインにも定評があります。
またオプションで人事評価や組織図の管理、タレントマネジメントの機能も備えた万能の人事システムとして活用することも可能。
30名以上の会社でも無料でトライアルができますので、労務管理システム導入の際には必ず一度は検討すべきシステムといえます。
ジョブカン労務HR
【対応業務】
- 入退社手続き
- 帳票作成
- 電子申請
- 年末調整
- 従業員情報管理
【月額費用】
400円/1名
国内のバックオフィスシステム領域で12万社の導入実績を誇る「ジョブカンシリーズ」の労務管理システムです。
ジョブカンシリーズは給与計算や勤怠管理、採用、評価など様々な管理業務のシステムがあります。
同シリーズの複数のシステムを導入することにより「価格の割引」「相互データ連携による業務効率改善」など、様々な恩恵を受けることができます。
50名以上の会社で実施が義務化されている「ストレスチェック」をこのシステム行うことができる点も嬉しいところです。
freee人事労務
【対応業務】
- 入退社手続き
- 帳票作成
- 電子申請
- 年末調整
- 有休管理
【月額費用】
問い合わせ(従業員数により単価が変動)
freee人事労務は会計ソフト開発においても高い評価を誇るfreee株式会社が提供する労務管理システムです。
入退社手続きや年末調整など一通りの労務管理機能はもちろんのこと、単一のシステムだけで給与計算から銀行振り込みまで行うことができる点は他にない利点です。
利用料金の目安は2,000円前後から。
他の労務管理システムより割高に感じられるかもしれませんが勤怠管理と給与計算の各システムを個別に契約することを思えば、妥当な数字といえるでしょう。
オフィスステーション労務
【対応業務】
- 入退社手続き
- 帳票作成
- 電子申請
- 年末調整
- 従業員情報管理
- 有休管理
【月額費用】
440円~/1名
オフィスステーションは株式会社エフアンドエムが提供する労務管理システムです。
対応する行政手続き帳票は100種類以上と労務管理システム中で最多。
「労務」「給与明細」「年末調整」「マイナンバー管理」「有休管理」の5つから必要な機能だけを選んで運用でき、他に運用中のシステムと機能が重複しないように導入できます。
ジンジャー労務
【対応業務】
- 入退社手続き
- 帳票作成
- 従業員情報管理
【月額費用】
300円/1名
ジンジャー労務は株式会社ネオキャリア提供の労務管理システムです。
労務システム単一としてできる機能は控えめですが勤怠管理や給与計算、経費精算などの同シリーズ複数のシステムを組み合わせて活用することにより、バックオフィスのあらゆる情報をシームレスに閲覧、活用することができます。
トライアル導入もできますので、大規模な業務改善を計画する企業であれば試してみてはいかがでしょうか。
sai*reco
【対応業務】
- 帳票作成
- 従業員情報管理
【月額費用】
180円/月
※別途システム導入費40万円
株式会社アクティブアンドカンパニーが提供するsai*recoは従業員情報管理に強みのあるシステムです。
入退社に必要な自動書類発行などの基本的な労務管理機能のほか、タレントマネジメント機能や適性検査、ストレスチェックの結果、評価機能、組織図管理など、人事戦略に必要なあらゆる情報を単一のシステムで管理できます。
人的資源の可視化と労務管理業務の効率化を同時に進めたいという企業におすすめです。
労務管理システムのメリット
労務管理システムを導入することにはメリットもあります。
どのようなメリットがあるのか知っておくことで導入を検討して会社の業績アップにつなげることができるでしょう。
労務管理システム導入には以下のようなメリットがあります。
作業時間の短縮と負担軽減
労務管理システムを導入すると、作業時間の短縮と負担軽減を行うことが期待できます。
労務管理システムを導入するにあたり、労務担当者だけでなく従業員もシステムで入力することができるため、担当者が書類を配布することや、回収する手間を省くことが可能です。
紙の場合だと従業員に書類を配布して記載してもらい、後に回収しなくてはいけないため手間と時間がかかり、もし社会保険の資格取得や書類を喪失した場合は回収後に内容確認をしなくてはいけないので、さらに負担が増します。
さらに、入力ミスがあった場合は該当人物を探す必要もあるため、従業員が多いと負担はかなり大きいでしょう。
労務管理システムを導入するなら担当者側で処理を行え、書類の受け渡し作業も必要ないので負担も軽減され、作業を効率的にすることが可能です。
自治体などへの書類提出が手軽になる
労務管理システムを導入するなら、自治体への書類提出という点でも電子申請で行うことができます。
何か書類を自治体へ提出するときに紙のままだと、その場所まで行かなくてはいけなかったり、発送したりしなくてはいけないため、時間を浪費することになります。また、訂正が求められると再度発送しなくてはいけないこともあり、手間がかかることもあるでしょう。
しかし、システムを導入しておくなら、オンライン上でやり取りできるので、交通面での費用と手間を削減でき、さらに紙よりもスムーズでスピーディーに作業することもできるため、急ぎの場合でも素早く対応が可能です。
自治体への提出は期限が設けられている場合もあるため、忙しい時期だとより楽に処理することができるでしょう。
従業員の負担も軽減できる
労務管理システムを導入すると、従業員もパソコンやスマホなどのデバイスを通して入力することができるようになります。
全ての作業を労務担当が行うよりも従業員が隙間時間を利用して必要な項目に記載するなら、担当者を探す手間を省くことが可能です。
早めに記載して欲しい場合はメールなどで連絡してもらえれば直ぐに記入することができるため、従業員は仕事の隙間時間など空いているときに素早く対応できます。
オンライン上ならどこでも対応できることから、帰宅している場合は自宅から提出することもでき、再度帰社する必要もありません。
従業員にとってもメリットがあるため、導入は前向きに検討できるでしょう。
セキュリティ対策にも利用できる
労務管理システムを導入するなら、セキュリティ対策としても利用できます。
必要な書類を作成するためには住所やマイナンバーなどが必要になりますが、しっかり管理していないと流出する危険もあり、万が一漏洩した場合は個人情報の観点から大きく信頼を失うことになるでしょう。
労務管理システムは業者側がセキュリティの更新をして、常に万全な状態にしてくれるため、重要な個人情報なども漏洩する心配はありません。
従業員の多い会社だとセキュリティは重要になるため、その点を考慮して導入を考えてみましょう。
労務管理システムのデメリット
労務管理システムを導入することには、デメリットもあります。
デメリットを確認しておくことで、労務管理において会社の損失を回避することにつなげられます。
労務管理システムの導入には以下のようなデメリットがあるので確認してください。
各システムによって機能が違う
労務管理システムを導入するときは、各システムの機能面について確認しておくことが大事です。
労務管理システムは、それぞれ対応されている機能に違いがあるため、内容をチェックしていないと、必要な機能が使用できない場合もあります。
もし、使用しない機能ばかりで必要な機能が備えられていないなら、労務管理の効率化を行えず、コストのみがかかることになるでしょう。
そのため、労務管理システムを導入するときは、必要なものを初めにピックアップしておき、その後に確認して選びという手順が必要になります。
全てに同じ機能が揃えられていないので、選ぶまでに手間がかかるのがデメリットになるでしょう。
予期しないトラブルが発生することもある
労務管理システムは基本的にクラウド型で、インターネットに接続して作業することになります。
そのため、従業員に一斉に入力を依頼する必要がある場合、アクセスが集中し過ぎてフリーズするなどのトラブルが生じることもあります。
もし、トラブルが発生すれば業務を行うことができず、復旧するまで待つ必要も生じるため、余計に時間と手間がかかる場合もあるでしょう。
トラブルにならないために、ネットワーク環境を整えるなどの対策を考えておく必要があります。
労務管理システムの選び方
労務管理システムを選ぶ上で大切にしたいのは以下3つの基準です。
- 効率化させたい業務をカバーしているか
- 自社で扱っている他システムと連携できるか
- 使いやすさ
順番にご説明します。
効率化させたい業務をカバーしているか
「労務管理業務」と一言で言っても、業務内容は様々。
帳票作成、電子申請、年末調整・・・。
予め効率化させたい業務内容を明確にし、それを解決できるシステムを選ぶことが大切です。
労務管理システムも対応可能な業務の種類が多いほど利用料が高くなる傾向がありますので、
自社にとって不要な機能に余計なコストをかけることも避けたいところです。
自社で扱う他システムと連携できるか
すでに給与計算ソフトや勤怠管理システムを運用中の企業であれば、既存のシステムと労務管理システムをデータ連携させられるかどうかを確認しましょう。
システム間で連携ができないと、何か情報を見る際に、別々のシステムにログインし、照合作業などをする必要が出てくる可能性があります。
連携ができる同システム上で、すぐに情報を把握できるので、作業者にとって非常に楽です。
使いやすさ(操作しやすい、見やすい)
「社員にとって使いやすいか」も大切なポイントです。
労務管理システムは「必要な情報を社員本人に入力してもらう」ことが前提のシステムですので、
従業員が使いやすいと感じられるシステムであることが大切です。
外国人労働者の割合が増えている昨今、言葉のわかりやすさだけではなく直感的に操作できるわかりやすさが一層求められます。
労務管理システムの成功ポイント
労務管理システムを成功させるためには、ポイントを把握しておくことも大事です。
労務管理システムの成功ポイントを確認しておくことで、導入の効果をより向上させることができます。
労務管理システムの成功ポイントは以下のようになります。
外部システムと連携をスムーズに行うようにする
労務管理を効果的に運用するためには、外部システムと上手く連携できるようにする必要があります。
労務管理システムは帳票作成や電子申請、年末調整などの点で効率化させることができますが、それぞれ他のシステムと連携させることによりより業務効率を向上できるケースが多いです。
例えば、給料管理システムに従業員データを入力してデータを労務管理システムと連携させることができれば、人事異動があったときに、自動的に所属部署にデータを反映させることが可能です。
会計システムで出張申請の情報を入力することにより、データを労務管理で連携すれば、勤務時間記録簿に自動反映させることが可能です。
このように外部システムと連携させるなら、データを反映させて労務管理システムのメリットを活かすことができるため、互換性や相性などを確認して導入するようにしましょう。
カスタマイズして運営を行うようにする
労務管理システムを導入するときは、カスタマイズすることも検討すべきです。
労務管理システムはいろいろな機能が付帯されていますが、自社の目的や課題を解決するためには、カスタマイズすることで効率を向上させることができます。
例えば、日常生活で使用する勤務時間や管理簿や給与明細書の様式は分かりやすい形式で行っていた方が良いでしょう。
そのため、シンプルな構造にするためにカスタマイズしておく方が、従業員の操作が分かりやすくて運営を効果的に行うことができます。
カスタマイズについてはサービス会社と相談することにより詳細な点を理解することが可能です。
カスタマイズのポイントを押さえて、効果的に運営することができるように取り組んでみましょう。
従業員に周知してもらうようにマニュアル作成する
労務管理システムを導入するときは、従業員に周知してもらうことも大事です。
システムを導入すると、既存とは違う仕様や方法に変わるため、理解してもらうために時間がかかることも予想されます。
少しでも早く従業員に慣れてもらうためには、マニュアルを作成してシステムの使い方について理解してもらうようにすることです。
労務管理システムのマニュアルは、比較的シンプルで分かりやすくなっているため、従業員にとっても把握しやすいはずです。
ただ、ITの操作などに慣れていない従業員だと、マニュアルがあっても混乱してしまう可能性もあります。
そのため、自社の状況に合わせてアレンジし、マニュアルをわかりやすくするように取り組みましょう。
労務管理システムの導入手順
労務管理システムの導入を行うときは、手順を確認することも大事です。
労務管理システムの導入手順を確認しておくことで、スムーズに始めることができます。
労務管理システムの導入手順は以下のようになります。
導入の目的を明確化する
労務管理システムを導入するときは、目的を明確化しておくことが大事です。
労務管理システムは、機能がそれぞれ異なり、コストも違います。
また、どのような分野をスマートに効率化する必要があるのか、事前に把握できていなければ効果を発揮しないため、漠然と導入するだけでは意味がありません。
給与関連のシステムの効率さか勤怠面なのか企業側の課題を明確にし、労務管理システムでどこまで向上させることができるのか、はっきりさせておくことが重要です。
導入の課題を明確にしてからサービスの選択をするようにしましょう。
タイプを決定して選定する
労務管理システムを導入するときは、タイプを確認しましょう。
クラウド型とオンプレミス型があり、クラウド型は主にインターネットへの接続により利用、オンプレミス型は社内ネットワークのみで利用する方法です。
企業によって利用しやすいタイプは異なるため、決定しておきましょう。システムのタイプを決定することができれば、選定を行うようにしましょう。
システムは就業規則や働き方に対応しているのか、外部システムとの連携は問題ないのかをポイントにすべきです。
合うシステムを探すことができれば、契約へと進めていきましょう。
テスト運用をして契約をする
労務管理システムの導入が決まれば、従業員に周知させて操作などに慣れてもらう必要が生じます。
労務管理システムでは、お試し期間として無料トライアルが実施されるはずなので、問題なく利用できるのかテストしてみましょう。
サービス会社によってはマニュアル作成やサポートも行ってくれるため、頼ってみることもおすすめです。
システムに問題無いようであれば、契約を進めていき、導入して業務効率の向上を期待してみましょう。
まとめ:自社に合った労務管理システムを導入検討しましょう
ここまで労務管理システムについてまとめてきました。
最後に簡単におさらいしておきます。
- 労務管理システムは労務に関する社内外の手続きを効率化するシステム
- 代表的な機能は入退社手続き、帳票作成、電子申請、年末調整、従業員情報管理、有休管理など
労務管理システムの選ぶときは、
- 自社で効率化させたい業務をカバーしているか
- 自社で扱う他システムと連携できるか
- 使いやすさ(操作しやすい、見やすい)
などに注意してください。
労務管理システムを有効に活用することで労務担当者、またすべての従業員が感じる煩雑さを大幅に軽減できます。
労務管理に課題を抱えているご担当者は、ぜひご紹介したシステムの導入も検討してみてください。