新型コロナウィルスの流行に伴い、テレワークを導入する企業が増えてきました。
一方、「総務や経理などの一部の部署では、テレワークの導入がなかなか進まない」というお悩みを抱えている企業も、多いのではないでしょうか。
テレワークを導入しにくい部署の担当者は、
「他の部署はテレワークができているのに、自分たちだけは出社しなければならない」
「通勤のことも考えると、感染リスクが高くなり怖い」
という不公平感・不安感を抱えている可能性があります。
本記事では、総務のテレワーク促進を目指す企業に向けて、総務のテレワークの現状や課題を整理し、導入にあたって必要な3つの準備をご紹介します。
総務のテレワークの現状
株式会社インフォマートが実施した、『総務の業務課題についての調査』によると、総務のテレワークの実施状況は、「テレワークをしていない」「週平均で1日未満(月に数回程度)」の回答が75%を占めました。
つまり総務では、テレワークをしていないか、していたとしても月に数回程度、という総務担当者が、7割以上にも及ぶということです。
また、組織風土に関する設問では、「どちらかというと過去のやり方や慣習を重視する組織風土である」という回答が69.1%でした。
総務は、企業の根幹を担う業務が多いにもかかわらず、過去の慣習が見直されていないと感じている担当者が7割近くもいるという状況です。
これらの結果を踏まえると、総務のテレワークがなかなか進んでいない現状を、読み取れるのではないでしょうか。
なぜ進まない?総務のテレワークが難しい理由
サービス業や、営業など、誰かと会うことが必須の業種・職種とは違い、事務職は本来であればテレワークを導入しやすいといえるでしょう。
ではなぜ、総務のテレワークは進まないのでしょうか。
ここでは、総務のテレワークが難しい理由を整理します。
株式会社月刊総務が実施した、『総務のリモートワークの実態に関する調査』によると、緊急事態宣言中に完全リモートワークができた総務担当者は、わずか1.6%という結果になりました。
出社理由の1位は「郵便物の対応」、2位は「契約書等の押印」、次いで「電話対応」や「office環境整備」が続いています。
このように、総務で行う主な業務のうち、「郵便物」・「紙の書類やハンコ」・「電話」という一部の業務により、完全テレワークの対応が難しくなっているのです。
特に契約書など、紙の書類と収入印紙、割印が必要な業務では、どうしても出社が必要となります。
また、セキュリティ面での危機感も、総務のテレワークを躊躇させる要因の一つと言えるでしょう。
社員情報や顧客情報、契約書等、社内外問わず秘匿性の高い情報を扱っている総務では、高度なセキュリティ対策が非常に重要であるからです。
総務のテレワークを進めるための3つの準備
それでは、総務のテレワークをより進めるためには何が必要なのか、を考えてみましょう。
総務のテレワークの課題を踏まえると、郵便物・紙の書類やハンコ・電話に関わる懸念点が払拭できれば、テレワークを導入できる可能性は非常に高まります。
完全テレワークは難しいとしても、社員で持ち回りにすれば、月に数回の出社で済むかもしれません。
少なくとも、「全くテレワークができない」という状況は改善されるはずです。
では、総務のテレワークを促進するために、どのようなシステムを検討するとよいのでしょうか。
1.セキュリティ対策
セキュリティ対策は、何よりも重要と言って過言ではありません。
総務で扱う情報は、企業により若干の違いはあるものの、マイナンバーや顧客情報をはじめとし、特に秘匿性の高いものが多いからです。
セキュリティ対策システムの導入はもちろんのこと、情報セキュリティに対する社員の危機感を高く保つことも、忘れてはいけません。
セキュリティへの一般知識だけではなく、「パソコン端末にウィルスが侵入した可能性があるときには、どのように対応すべきなのか」といった実践的な部分まで、しっかりとルール化し、社員全員が共通認識を持っている必要があるのです。
2.ペーパーレス化
紙やハンコが必須の書類についても、検討していく余地が充分にあります。
日本のハンコ文化は根強く、特に歴史のある企業ほど、一気に全てをデジタル化するのは難しいという現状もあるでしょう。
ですが、書類への押印のために、社員が出社を余儀なくされる環境があるとすれば、一度見直してみることが必要です。
ただし注意点として、不動産の賃貸借契約書など、書面として残すことが義務づけられている書類があることは忘れないでおきましょう。
大切なのは、「この書類は本当に紙とハンコでなければいけないのか?」を一つひとつ検討し、デジタルに移行できるものはしていくということです。
ペーパーレス化には、例えば電子契約システムや、勤怠管理システムの導入など、初期費用が必要となります。
一方、印刷コストの削減や、書類を紙で保管することに伴う場所や資材の経費削減、検索性がアップすることに伴う人件費削減など、長期的に見たときには大幅なコスト削減が見込めます。
社員にとっても、「書類のために出社しなければならない」といった不満感の解消となり、モチベーションの向上につながるでしょう。
ペーパーレス化のメリットとデメリットを把握し、紙で残さなければならない書類以外はデジタル化を進めていく。
これだけで、総務のテレワークが一歩進むことは間違いありません。
3.クラウドシステムの導入
総務のテレワークを進めるためには、企業を運営していくにあたって必要なシステムを、クラウドに切り替えていくことも重要でしょう。
営業支援、勤怠管理、経理、契約、ストレージ、電話、人事採用にいたるまで、あらゆるクラウドシステムが開発されています。
総務のテレワークが進まない大きな要因であった郵便についても、クラウド郵便のサービスが提供されているのです。
クラウドシステムの主なメリットとしては、以下のようなものがあります。
- 企業の規模や従業員数など、状況に応じて柔軟に選択できる
- 従業員がどこにいても、オンライン環境があればアクセスできる
- 保守やアップデートは原則サービス提供会社が行うため、ランニングコストが抑えられる
一方で、以下のようなデメリットも考えられます。
- 必ずオンライン環境が必要となる(オフライン作業が不可能である)
- 使用しているクラウドシステムのサービスが終了したり、金額やサービス内容が予期せず変更されたりする可能性がある
- サービス提供会社でシステム障害が起こった場合に、業務が滞ってしまう
こうしたメリット・デメリットをきちんと把握し、自社に必要なサービスを見極めたうえで、優先度の高いものから徐々に導入を進めていくのがおすすめです。
そうすることで、総務のテレワークに今よりもまた一歩近づけるでしょう。
まとめ:3つの準備+αを整えて、総務のテレワークを促進しよう!
3つの準備+αを整えて、総務のテレワークを促進しよう!
本記事では、総務のテレワークの現状を整理し、課題とそれを解決するために必要な3つの準備について紹介しました。
総務にテレワークを導入するときには、システムの準備だけでなく、社員の意識改革も必要であることを忘れないでください。
どんなに便利なシステムを導入したとしても、実際に運用していくのは社員一人ひとりであるからです。
社員の意見も取り入れつつ、無理のないスケジュールで、総務のテレワークを進めていきましょう。