電子契約とは、紙による契約からWeb上での契約書に押印・署名して契約を締結できるサービスのことです。
また契約書のテンプレートを提供したり、文書作成の補助機能やシステム上で承認・稟議ができるようにワークフロー機能を備えたものもあり、サービスの充実が図られている現状です。
電子契約の普及について、JIPDEC、ITR共同調査「企業IT利活用動向調査2022」によると、国内企業982社のうち69.7%の企業が電子契約を導入しており、電子契約の未導入企業のうち14.7%が導入を検討している結果のとなっており、コロナ禍の影響もあり市場規模はますます拡大することが想定されます。
今回は、電子契約サービス選び方のポイントや各社サービスの比較を紹介していきます。
引用:JIPDECとITRが『企業IT利活用動向調査2022』の速報結果を発表
電子契約サービスを選ぶポイント
電子契約サービスを選ぶポイントは、会社の規模や契約数などによって異なりますが、以下の点に注目して選んでみてはいかがでしょうか。
- 費用対効果が高いか
- セキュリティが十分備えられているか
- 自社の利用目的に合っているか
- 取引先に手間がかからないか
順番に詳しく解説します。
費用対効果が高いか
電子契約の場合は、印紙税が不要なため取り交わす契約書が多いほど経費削減につながり、また契約作業に従事していた人件費の削減、郵送代もかからなくなるなどのメリットがあります。
ただし、電子契約サービスは基本的にサブスクリプションにより毎月経費がかかるため、導入前の経費を計算したうえで導入するかどうか検証しましょう。
セキュリティが十分備えられているか
電子契約では「タイムスタンプ」「電子署名」が改ざんされていないことが証明できれば契約書の法的効力の証明を担えるため、これらが備わっているサービスを選びましょう。
費用対効果を重視しすぎ、セキュリティ面の確認をおろそかにしないようにしてください。
セキュリティに問題があり、万が一不正アクセスを原因とした情報漏えいなどでが起きた場合、自社の信用が失われ会社存続の危機に直面してしまいます。
電子契約サービスを選ぶ際は、自社にあったセキュリティ機能の有無を必ず確認しましょう。
自社の利用目的に合っているか
電子契約サービス会社が提供するサービスにはさまざまな使い方があります。
利用目的をいくつか以下にピックアップしました。
- 契約書作成から管理までクラウド上で行いたい
- 紙の契約書も活用したい
- コンサルなどのサポートを重視したい
- 海外の事業所でも使用したい など
自社の利用目的にあったサービスの提供がある電子契約サービス会社を選びましょう。
そのほか、電子契約サービスの場合「当事者型」と「立会人型」に区分され、その違いは電子署名を付与するのは誰なのかという点です。
当事者の身元確認 | 電子署名付与 | 価格 | |
当事者型 | 公的な認証局 | 当事者 | 高額 |
立会人型 | 電子契約サービス | 電子契約サービス | 低額 |
「当事者型」は当事者双方が署名をするため、双方の本人認定は公的な認証局で電子証明書を発行しなければならないですが、法的な効力が強く、なりすまし防止となるのが特徴です。
電子証明書を発行する場合は1名ごとに発行費用がかかり、時間を要するなどコストと手間がかかることがデメリットです。
一方、立会人型は電子証明書が不要でメールアドレスがあればすぐに導入ができるため、当事者型よりもコストはリーズナブルに行い導入までの時間を要することがないメリットがあります。
ただし、なりすましによる契約が懸念されます。
メールアドレス管理を厳格にすることで、なりすましの防止ができるため、現在は立会人型が主流で当事者型は少数となっております。
取引先に手間がかからないか
利用する電子契約サービスによっては、取引先にアカウント登録をしてもらう必要があります。
なるべく相手先の負担を減らすには、アカウント登録をしなくてもURLを伝えるだけで利用できるサービスがおすすめです。
契約を行う際、双方が電子契約サービスを利用している場合、相手先と互換署名が可能なサービスを利用しておくと、スムーズに契約をすすめることができます。
電子契約サービスを導入するメリット
電子契約サービスを導入するメリットをいくつか以下にピックアップしました.。
- 印紙税がかからない
- 即日契約が可能
- 契約書の保管スペースが要らない
- 契約書情報をすぐ探し出せる
- 契約書の改ざん・紛失を防げる
- テレワークに対応している
順番に詳しく解説します。
印紙税がかからない
電子契約サービスを導入すると、収入印紙代を削減できます。
5万円以上の課税文書を紙ベースで作成した場合、印紙税が課せられます。
ですが電子データ(Fax・PDF)で文書を作成し取引を行う場合、印紙税が課せられません。
ただし電子データを紙で出力した場合は、課税対象となるので注意が必要です。
即日契約が可能
電子契約サービスを導入すれば、即日契約が可能になります。
従来の契約は、契約書を作成し、契約書を相手先に届け、契約書を受け取るといった流れが一般的です。
しかし、電子契約サービスではすべての作業をオンライン上で行えるので、スムーズに契約が進みます。
また、郵送の必要がないので、切手代の節約にもなります。
契約書の保管スペースが要らない
一般的に契約書は10年間保管しなければいけません。
紙ベースの契約書の場合、件数が多いほど面積の広い保管場所が必要になり、レンタルスペースや倉庫を借りなければいけない可能性があります。
電子契約書の場合、紙ベースの契約書と違い保管場所が必要ないので、保管場所にかかる費用の削減を期待できます。
契約書情報をすぐ探し出せる
電子契約書は、ファイリングする必要もファイルをめくって探し出す必要もなく、パソコンで検索すれば、必要な契約書の情報をすぐ探し出せます。
保管期間の過ぎた契約書もすぐ分るので、整理に困ることがありません。
契約書の改ざん・紛失を防げる
電子契約書は、内容を書き換えるとその記録がシステムに残るので、改ざんされる可能性が限りなく低くなります。
また、データとして保管されるので、紛失リスクもありません。
テレワークに対応している
紙ベースの契約書の場合、捺印を貰うために出勤し相手先に出向く必要があります。
電子契約書の場合、直接捺印を貰う必要がないので、フルリモートで契約が完了します。
通勤時間・交通費の削減が期待でき、社員のテレワーク成功の一歩になるでしょう。
電子契約サービスを導入するデメリット
便利な電子契約サービスにも以下のようなデメリットがあります。
- 電子契約書が認められない場合がある
- サイバー攻撃を受ける可能性がある
- 運用体制を整える必要がある
順番に詳しく解説します。
電子契約書が認められない場合がある
2021年にデジタル改革関連法が施行されてから、電子契約できる契約は増加しました。
しかし以下の契約では、紙ベースでの契約が義務付けられています。
- 専業用定期借地契約
- 任意後見契約書
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 など
上記の契約書を交わす必要がない場合、電子契約が可能なので、問題はないと思われます。
今後の法律改正によっては、電子契約が認められる場合もあります。
サイバー攻撃を受ける可能性がある
電子契約サービスでは、先述した通り契約書の保管スペースが不要で、改ざん・紛失を防げるメリットがあります。
しかし契約データを保管しているサーバーがサイバー攻撃される可能性があります。
このようなリスクを防ぐためにもセキュリティ対策をしっかりしているサービス会社と契約しましょう。
運用体制を整える必要がある
電子契約サービスを導入するに当たり、社内での運用体制を整える必要があります。
契約書の作成方法から管理・保存方法まで、まずは管理者がきちんと知識を身につけ、業務フローを作成しなければいけません。
取引先に対しても電子契約の説明等が必要です。
電子契約サービスおすすめ7選!機能・価格比較
電子契約サービスのおすすめ7選の比較を以下にまとめましたので参考にしてください。
サービス名 | クラウドサイン | GMOサイン | ContractS CLM | freee サイン | BtoB プラットフォーム契約書 | ジンジャーサイン | DocuSign |
プラン名 ※複数プランの中より1つ選んでいます。 |
Standard | 契約印&実印 | Standard | Light | シルバー | ライトプラス | Standard(企業向け) |
テンプレート | - | - | ● | - | ● | ● | ● |
社内稟議によるワークフロー | ● | ● | ● | ● | ● | - | ● |
電子契約+タイムスタンプ | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
電子署名の付与形式 | 立会人型 | 当事者型、立会人型 | 要問合せ | 立会人型 | 当事者型 | 立会人型 | 立会人型 |
多言語対応 | - | ● | - | - | - | - | ● |
契約書1件送信 | 220円 | 330円(当事者型) 110円(立会人型) |
要問合せ | 220円 | 50円 | 220円 | 要問合せ |
月額料金 | 11,000円 | 9,680円 | 要問合せ | 5,478円 | 11,000円~ | 11,000円 | $25/1user |
- 印はプラン名の機能に合わせて表示。詳細はサービスベンダーにお問い合わせください。
比較!おすすめ電子契約サービス7選
おすすめの電子契約サービスについて、機能や特徴を比較していきます。
クラウドサイン
【特徴】
「クラウドサイン」は弁護士ドットコム株式会社が運営していることで電子契約サービスです。
業界における知名度はNo1となっております。
導入を検討する段階から導入後のコンサルティング実施まで、国内最大級の電子契約サービスのベンダーとして、経験や実績に基づき業務設計や運用支援をサポートしてくれます。
「導入経験や実績を重視したい」「導入することで電子契約のすべてが網羅されている」といった企業に向いているサービスです。
【料金】
月額固定費:10,000円〜28,000円(プランによって異なります)
別途、送信件数ごとに220円/1件
GMOサイン
【特徴】
「電子印鑑GMOサイン」は、ITインフラを支えるGMOが運営している電子契約システムです。
電子署名の付与を「当事者型」と「立会人型」の双方を取り入れることで、それぞれのメリットを生かしたハイブリッド型の電子契約です。
「自社では法令適合性の担保は厳格に行いたいが、契約相手には手間や負担をかけたくない」といった企業に向いているサービスです。
【料金】
月額固定費:9,800円
別途、送信件数ごとに110円〜330円/1件
ContractS CLM
【特徴】
「ContractS CLM」は、契約書の作成から管理までを1つのツールで対応できる契約マネジメントシステムです。
Wordによる編集やナレッジ機能も備えており、契約プロセス全体の効率化を実現した電子契約サービスになっています。
「システム導入によって契約関連業務すべてを効率化したい」などといった本格的な導入を考えている企業に向いているサービスです。
【料金】
要問い合わせ
freeeサイン
【特徴】
「freeeサイン」は、契約書の作成、締結、管理までのプロセスをクラウド上で完結する電子契約サービスです。
用途に応じたテンプレートを登録することにより契約書を素早く作成できたり、またドラフトによる編集をクラウド上で行えます。
契約にかかわるデータを保護する高いセキュリティ技術も採用し、さらにサポート体制ではfreeeサインユーザーのみならず契約相手へのサポートも行っているため、ITリテラシーに強くない企業に向いているサービスです。
【料金】
4,980円〜120,000円/月額(プランによって異なります)
別途、初期費用がかかるケースがあります
BtoBプラットフォーム契約書
【特徴】
「BtoBプラットフォーム契約書」は、契約書だけではなく、見積・受発注・請求の際の書類・帳票類をすべて電子データ化でき、また1つのID/画面ができる高度な電子契約システムです。
非正規社員を含む雇用契約の定期更新手続きの煩雑を解消、各種帳票の紛失リスクを解消したいなど、書類のやり取りは全て電子化にしたいといった企業に向いているサービスです。
【料金】
10,000円〜30,000円/月額(プランによって異なります)
別途、送信件数や契約締結件数によって料金が変わります。
ジンジャーサイン
【特徴】
「ジンジャーサイン」は使いやすくきめ細やかなサポート体制で安心して利用できる電子契約サービスです。
契約書テンプレート化、契約状況を細かく管理できる契約ステータス管理、ならびに契約締結に関する業務がWEB上にてワンストップで行えます。
シンプルに契約書関連の業務を行うことができるため、電子契約サービスを初めて導入する企業でも安心して利用しやすいサービスです。
【料金】
10,000円〜50,000円/月額(プランによって異なります)
別途、初期費用50,000円〜250,000円かかります。
また、署名(サイン)数によって料金が変わります。
DocuSign
【特徴】
DocuSignは、契約書や同意書、稟議書、申込書など、合意・契約が必要となる文書を場所や時間を問わず世界中で利用することができる電子契約システムです。
米国やEUなど世界各国における文書の法的有効性を保証できます。
さらに、MicrosoftやGoogleなどの連携により契約プロセスをより効率化することもできるため、海外拠点がある国内企業や、海外企業との取引を行っている企業に向いているサービスです。
【料金】
1,200円〜4,400円/月額(プランによって異なります)
まとめ:電子契約サービスで劇的な効率化!
電子契約サービスを導入することで、契約書作成から成立までのスピードアップ・コスト削減・契約書管理の効率化が可能になります。
導入する際は、重視したい目的を明確にしましょう。
扱う契約書の種類や契約形態によっては、契約の法的効力の担保方法も気にすべきポイントになります。
各サービスの特徴・強みと、自社の利用目的にあったサービスを取り入れることで、高い導入効果が得られるでしょう。
本記事が電子契約システムを検討する際の一助になれば幸いです。