パンデミックをきっかけに、数年で日本の企業の働き方が変化しました。
出社が主流だった時代から、在宅や時差出勤という新たな選択肢が増え、見直されています。
自分の会社にとって、どういった働き方を構築すればよいのだろうか、と模索されているのではないでしょうか。
そんな中注目されているのが「ハイブリッドワーク」です。
ハイブリッドワークは出社や在宅など、柔軟に対応する働き方で、会社の生産性を上げる効果が期待されています。
ハイブリッドワークのメリットや課題、導入する際に成功するためのポイントなどを具体的に説明していますので、参考にしてください。
ハイブリッドワークとは
ハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方のことです。
従来の出社型では共同作業や打ち合わせを行い、在宅では一人集中して仕事をすすめるなどというように、さまざまな働き方を組み合わせて、効率よく仕事を進められます。
従来のようなオフィスワークをしながらも、在宅やフレックスタイムを同時にうまく取り入れていくことが大切です。
ハイブリッドワーク背景と普及率
WeWorkJapan合同会社「コロナ渦長期化における働き方」に関する調査結果によると、従業員と経営者側の働き方に関する意識が変化していることが分かります。
ハイブリッドワークが認められている従業員は2021年の48%から、2022年には55.6%と増加。
経営者側のハイブリッドワークに対する意識も2021年72.2%から、2022年には74.9%と増え、「魅力的な働き方」としています。
さらに、東京都のテレワーク実施状況(最新)によると、テレワーク実施は緊急事態宣言の2022年8月よりは13%ほど減少してはいるものの、パンデミック以前のようなオフィスワーク主流には戻っていません。
今もテレワーク実施回数は週3日以上が変わらず実施されています。
以上のデータより、ハイブリッドワークという働き方に従業員も経営者側も意識が変化して、定着しつつあります。
このようにハイブリッドワークという働き方が急に導入されるようになったのは、新型コロナのようなパンデミックが要因です。
東京都のテレワーク実施率からも分かるように、新型コロナ発生以降から急激に普及されました。
経営者側のハイブリッドワークのメリット
まずは経営者側のメリットは以下の点になります。
生産性の向上
ハイブリッドワークで在宅や自由な出勤時間などが実施されると、社員の柔軟な働き方が可能になります。
テレワークはデータ分析や資料作成などのデスクワーク向きですし、チームでお互いにコミュニケーションをとることや、取引先の訪問などは、オフィスワークに向いています。
社員全員が同じ時間帯で同じ働き方をするよりも、一人一人によって効率的な働きをする方が、ずっと生産性が高いといえます。
新たな人材の採用が可能
「働く環境が整っている」かどうかは、社員にとって大切なことです。
会社で柔軟な働き方を構築すれば、社員が子育てや介護といった理由で出社が難しくなっても、在宅や別のコアスペースで働くということも可能になってきます。
さらに、今まで雇用が難しかった子育て世代の母親の雇用の幅を広げ、優秀な人材確保もしやすくなります。
経費の削減
ハイブリッドワークでは出社する人数が少なくなるため、個人用のスペースを全員確保する必要がなくなります。
個人スペースを共有スペースにしたり、余ったスペースでラウンジや個人ブースを作るといった活用ができます。
オフィスを縮小して、別のオフィスに移れば、電気代や賃貸といった経費を節減することも可能です。
社員側のハイブリッドワークのメリット
社員側のメリットは以下の3点です。
多様な働き方が可能
ハイブリッドワークでは社員の置かれている状況により、働き方を選択できる自由さがあります。
実際に、社員は毎日出社に囚われない、柔軟な働き方を求める傾向が強くなっています。在宅や出社のバランスを主体的に決めることで、社員の働く環境が改善されます。
それだけではなく、出社による通勤の手間(時間や通勤費)や、個人のケガや病気によって、仕事がストップするなどのリスクも減らせます。
ワークライフバランスの実現
ワークバランスとは、仕事と生活のバランスが取れた状態のことを言います。
仕事をする上で、プライベートが充実していることも欠かせません。
具体的には、育児休暇が取りやすい、短時間勤務制がある、テレワークやフレックスタイムの導入などが挙げられます。
(フレックスタイムは、社員が仕事の終始時間や労働時間を決めること)
まさにこれらはハイブリッドワークと合致しているため、自然と社員のワークライフバランスが実現できます。
モチベーションアップ
ワークライフバランスの実現や、社員の置かれている状況に応じた働き方は、社員のモチベーションアップにつながります。
決まった時間と場所に全員が従うのではなく、自分の意思で働く場所や時間を決めることで、主体性が生まれます。
個人の責任や管理能力が問われますが、それでも、社員が自主的に働く環境であることは、会社にとってもメリットです。
ハイブリッドワークのデメリットや課題
日本での導入が始まったハイブリッドワークですが、課題も見えてきました。
社員の勤怠管理が複雑
勤怠管理とは社員の労働状況を記録し、会社が状況を正確に把握するものです。具体的には、以下のようなものです。
・労働時間や出退勤時間
・実働時間や時間外
・欠勤や有給休暇取得や残日数
などテレワークは、勤怠管理が難しいという側面がありますが、さらにオフィスワークが組み合わさることで、より複雑になります。
オフィスワークとテレワークのルールを明確にするとともに、勤怠管理システムの利用がおすすめです。
社内のコミュニケーション不足
オフィスワークのみと比べると、テレワークが増えることで、社員同士のコミュニケーションが希薄になる可能性があります。
テレワークが多い時期には、孤独を感じたり、チームの連帯感が薄れたりという人も多かったようです。
対策としては、こまめなコミュニケーションを取れるツールを活用することです。
オンライン会議システム「ZOOM」や気軽に雑談できる「chatwork」や「Slack」などを利用している方は多いのではないでしょうか。
このようなツールでオフィスと同じように連絡を密にできます。
環境や設備が整っていない
テレワークの場合は個人が在宅で仕事をする環境を整えることが必要になってきます。
例えば、Wi-Fi環境やワークスペース、パソコンなどの端末などです。
自宅に近いところで、共同でコアスペースを利用する、会社からテレワーク用の端末を支給するなどの、対策をしましょう。
従業員への評価の不公平さ
在宅での仕事の進捗が分かりづらいということから、出社している人への評価が高くなってしまいます。
そうなれば、テレワークで働く人の士気が下がってしまい、組織全体にも影響を及ぼすことになります。
テレワークでも、正当に評価されるような、目標管理ツールなどを導入して、可視化することが大事です。
また、明確な評価項目を作ることも有効です。
従業員の健康への不安
在宅ワークでは社員の働き過ぎやコストパフォーマンスが落ちているなどの状況も把握しづらいことがあります。
つい働く時間が長時間になってしまったり、プライベートと仕事が同じ空間のために、ストレスを感じやすくなったりします。
そんな時は、勤怠管理ツールを利用して状況を把握したり、連絡して話を聞いたりなどの対策しましょう。
ハイブリッドワークを成功させるコツ
ハイブリッドワークでは、オフィスやテレワークの環境を整えることで導入しやすくなります。
その詳細について解説します。
オフィス環境を整える
自分のパソコンやスマホの端末だけで、どこでも自由に働ける環境を作ることがおすすめです。
フリーアドレスといって、オフィスの中で固定の席を持たずに、自分の好きな場所で働くことです。
フリーアドレスもグループごとに作るものから、完全に部署を問わずに自由に移動できるという2つの導入方法があります。
完全にフリーアドレスにすることに抵抗があれば、部署ごとのグループの導入がよいでしょう。スペースの削減ができるというメリットもあります。
ICT環境の整備やセキュリティの徹底
ITCとはインターネットを活用して情報をやりとりできる環境のことで、時間や場所を有効活用できるメリットがあります。
具体的には、SNSやWeb会議といったツールやアプリなどがITCになります。
特に、テレワークでは個々との情報共有や連絡を密にする必要があるので、早急な整備が必須となります。
各自の情報漏れを防止するセキュリティ対策も欠かせません。
個人のセキュリティリテラシーを向上させることはもちろん、ネットの高度なセキュリティ対策VPNなどを利用するなども徹底しましょう。
VPNとはネット上に仮想の空間を作り、そこに特定の人しかアクセスできない仕組みです。
認証キーは暗号化されていて、安全性が高く、どこからでもアクセスできるというメリットがあります。
評価方法や労働時間などのルールを決めておく
会社の評価方法や勤怠管理を徹底しないと、仕事への士気が低くなったり、会社の生産性にも影響が出たりします。
事前に労働時間や評価方法のルールを決めておき、それをしっかりと管理できるようにしましょう。評価や勤怠管理ツールの活用もおすすめです。
出社でしか対応できない、緊急時に備える
ハイブリッドワークになると、担当が在宅の場合は、緊急事態に対応できないことも出てきます。
そういった場合に満足な対応ができないと、大きな損失になることもあります。
例えば、対応できる担当者を交代で出社することや、マニュアルを作って誰でも対応できるよう、工夫が必要です。
ハイブリッドワークの成功事例
実際に導入した企業の事例について紹介します。
日本マイクロソフト
ハイブリッドワークを実現する管理ツールや空間づくりを徹底しています。
コミュニケーションアプリとして「Microsoft Teams」の開発をしました。
ハイブリッドワークをサポートする空間づくりとして、オフィスのリノベーションを行っていました。
音漏れを防ぐ防音ブースや、電話に最適なphoneブースなど、会議や会話に集中できるスペースをどこでも設置。
また、運動不足を補うアクティブルームや疲労回復のリラックスルームもあります。
富士通
富士通ではコンセプト「Work Life Shift」を発表し、オフィスとテレワークを組み合わせた働き方の実現をかなえています。
社内教育施設を削減し、一部施設を開放するなど新たなオフィス転換をしています。
社内のコミュニケーションを強化するとともに、地域創生に貢献するなどの活動も活発です。
さらに、男性の育児参加や、副業の推奨など、革新的な取り組みをしています。
サイボウズ
サイボウズはハイブリッドワークをいち早く導入した企業で、そのノウハウは情報共有ツール「kintone」や「サイボウズGaroon」の開発に活かされています。
ハイブリッドワークの課題である「情報の格差」。
場所という物理的な理由や実際に情報を共有できないという問題から、オフィスをオンライン上に作り、そこで情報を共有することに成功しています。
在宅の「孤立」により、組織の連携が取れなくなる課題に対して、社内のSNS活用で気軽に発信できてコミュニケーションを取りやすい環境を目指しています。
他にも社員同士の勤怠管理が可視化されるツールの開発など、革新的なサービスを開発し続けています。
ベネッセ
株式会社ベネッセコーポレーションは「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」のような子どもの通信教育を展開する会社です。
ハイブリッドワークを導入するにあたり、社員の声を聞きながら、以前の働き方ガイドラインを見直し、改良することに勤めました。
まずは、課題となった「勤怠管理の煩雑化」や「社員の健康管理」などの問題を解決するために、自社独自の管理ツールを利用することで、組織内で共有し、効率化と一元管理に成功しています。
環境では2021年に全面リニューアルし、フリーアドレスを導入。
自由に仕事をするだけではなく、オンライン会議専用スペースなどの目的に応じたスペースを設けています。
ハイブリッドワークは企業によって取り入れ方はさまざまです。
取り入れる際は、社員の声を聞きながら、何度も改善に努めています。
そうすることにより、自社に合った働き方を見つけられます。
まとめ:ハイブリッドワークを検討してみよう!
従来の出社に加え、テレワークなどを取り入れた、「ハイブリッドワーク」が新しい働き方として導入され始めています。
導入するメリットは「生産性の向上」「新たな人材確保」「経費削減」。
課題としては「勤怠管理が複雑になる」「社員同士のコミュニケーション不足」「社員の評価が不公平」があります。
こういった課題をクリアにするために管理システムの導入やフリーアドレスを取り入れたスペースづくりなどをするとともに、ITC環境を整え、コミュニケーションを密にしたり、セキュリティ対策を行うことが大切です。
そのためにも、成功事例を参考にしながら、自分の会社にどう取り入れるべきかを話し合いましょう。