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法務でテレワークは可能なのか?現役法務が解説。

法務でテレワークは可能なのか?現役法務が解説。

新型コロナウイルスの流行が始まり、未曾有の感染症により人の動きが制限され、生活の様々な部分で変化がありました。

仕事上においては、会社へ出勤せず、家で仕事をする「テレワーク」が提案され、現在、色々な企業がテレワークを導入しています。

ただ、全ての職業でテレワークができるわけではなく、医療従事者や福祉司などのエッセンシャルワーカー、建設や外食など現場作業が多い職種はテレワークの導入が遅れている、または、そもそも職種の性質的に難しいと言われています。

私たちのような高度な個人情報を扱う法務関係の仕事もなかなかテレワークが進んでいないのが現状です。

ただ、幸い、私や私の同級生の職場はテレワークが進んでおります。

そこで、今回は「法務でもテレワークを進めることは可能か」というのをテーマにし、テレワークで法務業務をしている私が体験談を交えて、話をしておきます。

 

法務業務ごとにみるテレワーク可能?不可能?

各法務業務について、テレワークの可否を見ていきましょう。

1.書類作成業務

法務の仕事で主要な業務は契約書の作成です。

契約書を作成するには、お客様と何度かミーティングをして、権利義務を明確にし、法令の下調べをした上で、想定されるトラブルに対応できる条項を入れて、作成していきます。

ただ、契約書作成業務は慣れてくると、雛形が出来上がるので、トラブルを想定して、備えることに時間を割くことが多くなります。

そうすると、契約書作成の主な業務は

①雛形から契約書の大枠を作る

②トラブルを想定して備える

の2つになります。

①雛形から契約書の大枠を作るに関しては、これまで作ってきた契約書を参考にしたり、自宅にある契約書の雛形集と契約書関連の書籍で業務をこなすことは可能です。

確かに、作成経験が少ない契約書や世間的に珍しい契約書は雛形がなかったりするので、大枠を作成することは難しいです。

ただ、これらの契約書を作成する際には大体弁護士の先生と相談することになるので、自宅でZOOMやSlack、チャットワークなどを利用すれば、自宅でも対応することは可能です。

②トラブルを想定して備えることに関しては、静かな場所で、1人でゆったりと考えた方がいい案が出てくることが多いです。

というのも、私の個人的な見解が入ってしまいますが、トラブルの発生は損害賠償や契約不適合などを除き、多種多様なので、重箱の角を突くように想像していく必要があるのです。

契約書を木の幹のように見て、枝割れしていくようにトラブルを想像する。

いろんな人の声が聞こえる社内で、この視点を持つことは難しいので、トラブルを想定する際には在宅でリモートワークをする方が考えやすいと思っています。

2.ミーティング

上記のところでもお伝えしましたが、法務の業務はコミュケーションが不可欠です。

特に、取引先とミーティングをして、社内の他部署とミーティングをするなど、ミーティングの頻度は社内でも一番かと思います。

ただ、ミーティングをすると結構な時間を持っていかれてしまいます。

というのも、取引先とのミーティングに法務部が同席するときは、大概、契約書の作成の打ち合わせ等の契約交渉だけでなく、別の目的、例えば、商談などが多いです。

法務部としての必要な部分が15分から20分ぐらいにも関わらず、商談や移動時間などを合わせると2時間弱も拘束されるのは珍しくないのです。

1日2時間を時間を取られてしまうと、業務に支障が出てしまいます。

ここだけの話、ミーティングがある日は残業になってしまうことも多いです。

仕事できない私のせいですけども。

しかし、自宅でリモートワークで参加することができれば、ミーティングの単位を細かく設定できるので、例えば、法務としての必要な連絡・調整が終われば、そこで退席してしまうことも可能です。

自分の時間を自分でコントロールできるのは、法務にとっては死活問題です。

法務の担当者が抱えている契約書の案件は多く、周りの友人などを見てみると数百件はあります。

時間を生み出すために、ミーティングをリモートですることは法務の重要な戦略なのです。

個人的には営業部の商談テクニックを見たい気持ちもあるんですけどね。

 

テレワークでの法務業務で良いコト

テレワークで法務をしている私ですが、良かったコトについていくつか紹介します。

1.生産性の向上

法務部としてリモートワークになってよかったことは、色々あります。

例えば、夏場の炎天下の中、最寄り駅や会社、取引先の事務所に行かなくて済むようになりました。

私の場合、家から職場まで大体往復で2時間30分ぐらいかかるのですが、この時間を自分の時間に使えるのは非常に有意義です。

しかも、外に出るための髪のセットや重い荷物を持って歩かなくて済むので、精神的な負担が減ります。

また、昼休みに自炊できたり、昼寝をすることでリフレッシュもできます。

このように色んな私の体験談を挙げましたが、リモートワークで出来ること・やらなくてもいいことが生産性の向上に繋がっていると私は思っています。

上記でも述べたように、法務の業務は「トラブルを想定する」ことです。

トラブルを想定し、防いだり、対応することが法務としての生産性を上げることだと考えています。

ただ、トラブルを想定するには想像力が不可欠であり、想像力を使うにはある程度の身体的かつ精神的な体力が必要です。

毎日2時間半も通勤や化粧などで奪われ、昼食後に目を擦りながら仕事をするのは身体的にも精神的にも大変です。

リモートワークなら、想像力に不可欠な体力を奪われずに、仕事に向き合うことができます。

特に法務を職務にしている人であれば、想像力を一日中維持できるので、リモートワークによる恩恵を強く受け取ることができると思います。

2.技術の更新・変化

法務部の性質として踏襲主義的なところがあります。

その1つとして、契約書の作成はパソコンで作成するものの、契約を締結する業務そのものは紙で行っている会社もあります。

これには重要文書には押印をしなければならない事情や保管資料としてお互いに手元に置いておく必要があるために、紙で作成していると考えられます。

また、法務部では高度な機密情報を扱っているので、情報漏洩を防ぐために、情報の持ち出しを禁止しているところが多いです。

紙の契約書やハンコはコンプライアンス的に社外に持ち出すことを厳禁にしている会社も聞くところにはあります。

印鑑の必要性、保管の重要性や情報漏洩の予防のために紙の契約書を採用せざるを得ない会社は少なくないです。

ただ、政府も印鑑の省力を進めているように、電子署名も可能になってきているので、電子上で契約を結ぶことは可能です。

また、高度な機密情報を扱っているなら、尚更、電子上で保管や管理をした方がいいです。

ブロックチェーンやNFTなどの発達により、情報の広がり具合を可視化することが出来るようになったので、機密情報の流れがどこまで広がっているか確認することができます。

これまでは法務部の特殊性から、あえて紙を使用してきましたが、インターネットの発展に伴い、さらにリモートワークで法務の職務を遂行することが可能になったと考えております。

また、リモートワークが進んだことにより、踏襲していた業務を変えていくような動きも活発になってきたのも嬉しいです。

 

まとめ:環境や制度を整えれば法務のテレワークは可能

今回は「法務でもテレワークを進めることは可能か」というテーマを検討していきました。

まとめると、法務部の性質的に、今までもリモートワークの方が効率よくできる業務も多かったものの、その特殊性故にリモートワークが推奨されることは中々ありませんでした。

ただ、コロナウイルスの影響やインターネットの発展に伴い、「特殊だからリモートは難しい・・」という固定概念が解消されつつあるので、「法務でもテレワークを進めることは可能である」と結論づけることができます。

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