経営企画部は会社の心臓と呼ばれることもある、会社経営を下支えする重要な部署です。
人気のある花形部署とされることが多いですが、その一方で求められることが多く、向き不向きが大きく分かれます。
念願の経営企画部に入ったにもかかわらず、「自分には向いていなかった」「現場の仕事に戻りたい…」と心が折れてしまう人もいるようです。
せっかくですから、どんな人が向いているのかを知ったうえで、経営企画部を目指したいですよね。
花形の部署なだけに優秀な人が多いとされますが、具体的にはどんな人に適性があるのでしょうか。
また、本記事では経営企画部の主な仕事も解説していきますので、経営企画部を狙った転職や人事異動を検討している人はぜひ参考にしてください。
経営企画部の主な仕事
経営企画部は、中長期的な経営計画の策定に携わったり、経営課題の解決に向けて尽力したりと、経営層に近い立場で経営をサポートする部署です。
経営企画部と名前が似た部署に、事業企画部が挙げられます。
事業企画部は数年単位で取り組む新規事業の企画を行い、それぞれの部署の事業計画に落とし込んでいく部署です。
一方、経営企画部はひとつの事業にとらわれることなく、会社全体での経営方針を考えていきます。
そして、経営企画部の業務は、年次単位で行うものと月次単位で取り組むもののふたつにわけられます。
それでは、経営企画部の業務について、詳しく見ていきます。
年間の予算を策定する
経営企画部の重要な業務のひとつに、年間の予算の策定が挙げられます。
特に上場企業の場合、その年の予算を判断基準として投資の判断が行われることがあるため、制度の高い予算計画が求められます。
予算の策定業務のなかでも大変なのが、各部署から売上や費用などの計画を収集する業務です。
この際、データの質が低いと、最終的に予算計画を取りまとめる経営企画部で大幅な修正を行わなければなりません。
そのため、各部門の担当者には基礎的な会計知識を身に付けてもらうことが欠かせません。
また、予算計画を取りまとめた後は、経営トップや株主総会で説明に使用するための資料を作成することになります。
1年間の業績を評価する
予算の計画を立てるだけではなく、決算が近づいた段階で「予算に対して業績はどのように評価できるのか」ということを精査することになります。
その際、各部門のトップや管理職と連携しながら、その年の業績評価を策定していきます。
各部門はそれぞれ自分の部署の評価をできるだけ上げたいという思いがありますが、業績評価においてはいかに情報の透明性を保てるかということが重要です。
各部門の話を聞きすぎるがあまり、各部門の主観や予算未達の言い訳が業績評価に取り入れられることは避けたいものです。
予算に達しなかった場合は、その原因が外部環境によるものなのか、それとも各部門の施策に問題があるのかを冷静に分析することが重要と言えます。
毎月行う経営会議で使用する資料作成
1年間の予算や経営方針、事業計画を策定した後は、実績や進捗状況を確認するため、毎月経営会議を開催する企業は少なくありません。
経営会議では、各部門ごとや企業全体の売上や費用の状況を共有したり、目標に対する実績の分析結果を報告したりします。
そして、この経営会議で使用する資料を作成する業務は、経営企画部スタッフの重要な仕事です。
資料作成業務では情報の正確性が重要であるとともに、必要な情報を簡潔に記載してあることもポイントです。
やたらページ数が多い資料では、経営会議で読み切ることができず、せっかく作成したのに無駄になってしまうかもしれません。
また、限られた時間のなかで行う会議では、必要な情報がわかりやすく記載してあることは重視されるものです。
さらに、資料作成業務だけではなく、経営会議の開催日時の調整や会議場所の予約、当日のセッティングなどの運営業務も経営企画部の仕事です。
予算に対する実績の分析業務
経営会議では、年次の予算計画に対して、これまでの実績はどの程度達成できているかを確認します。
そのために、経営企画部では予算に対する実績の分析業務を行います。
予算と実績の差異を明確にするだけではなく、その差異の要因分析を実施します。
なお、企業によっては差異の把握だけは経理部が担当し、要因分析のみを経営企画部が担当することもあります。
コーポレートガバナンスの取り組み立案・実行
コーポレートガバナンスとは、株主や顧客、従業員などのステークホルダーから見たときに、透明性があり公正な経営上の意思決定を行うための仕組みです。
コーポレートガバナンスの取り組みを実行することで、企業経営の透明性が保てるようになるほか、地域社会や顧客からの信頼も厚くなるメリットが期待できます。
そして、その役割を経営企画部が担うことも少なくありません。
特に最近では、企業経営においてSDGsの重要性が高まりつつあります。
ただし、時代や社会情勢の変化によって、企業経営に求められる概念は異なってきます。
そのため、ステークホルダーのニーズを敏感に読み取り、コーポレートガバナンスの施策に落とし込んでいくことが重要です。
経営企画部での業務に役立つ資格
経営企画部での業務に必須とされる資格は一般的にはありませんが、会社経営に関わる資格を持っていると有利です。
例えば、中小企業診断士やMBA、公認会計士などが会社経営に関わる資格の一例です。
経営企画部への転職を検討している人は、こうした資格を持っていると転職活動で有利です。
また、過去の経験としては、マーケティング職やコンサルタントといった業務経験があると、経営企画部で重宝されやすいかもしれません。
経営企画部に向いている人
ここからは、経営企画部の業務に向いている人の特徴を紹介していきます。
物事を論理的に考えることができる人
経営企画部では、自社の経営状況はもちろん、競合他社や業界全体にまつわる数字を集めて分析するという仕事が数多くあります。
データとなる数字を集め、その推移の意味を読み解き、論理的に分析することができるという人は、経営企画部に向いていると言えるでしょう。
ここでポイントとなるのは、数字の意味を理解できるというだけではスキルとしては不十分であるということです。問題点を明確に捉え、解決策を導き出すところまでを論理的に考えることが求められます。
また、経営企画部は経営者や他部門の責任者を巻き込んで業務にあたることが多くあります。トップに立つ人は物事をロジカルに捉える傾向があるため、企画書や報告書を作成する際には、ロジカルシンキングを用いて説得力を持たせることが必要になります。
物事を論理的に考える能力は、社内の業務を改革する際にも役に立ちます。
業務改革には、これまでのやり方にとらわれない冷静な判断が必要になります。
情に流されず事実関係を整理して客観的に提案できる人も、経営企画部への適性があると言えます。
実行能力が高く行動力がある人
スピード感を持って業務に取り組める人は経営企画部に向いています。
経営者がどんなに素晴らしい計画を立てたとしても、実行にうつされなければ意味がありません。
経営企画部は経営者の右腕となり、ビジョンを実現するために、迅速に物事を進めていく必要があります。
高いリーダーシップを持ち、何があっても目標を達成するという強い責任感を持って業務を遂行できる人が適任です。
これは、経営者からの指示をただ忠実に実行するということではありません。
思考停止したイエスマンになるのではなく、時には経営者に提言することも求められます。
そのためには、社内で起こるさまざまな出来事を自分の事として捉え、経営者と同じ目線に立って、会社全体を俯瞰して見ることが大切です。
状況を把握し、関連部署に的確な指示を出し、細部を修正するという小さなサイクルを日々回しながら、方向性が合っているか、目標に近づいているかを常に考え続けるということです。
コミュニケーション能力が高い人
経営企画部は一般的に花形の部署と言われることも多いですが、その業務の多くは、経営者の黒子となって行う地道で膨大な裏方作業です。
その中でも、特に向き不向きが分かれる難しい役割が、他部署との調整役です。
具体的には、経営者の指示により難題を依頼したり、部署と部署の間に立ってプロジェクトをまとめあげたりすることを指します。
社内にはいろいろな性格の人がいる上、部署や立場によって考え方が異なります。
単に能力が高く優秀なだけでは、こういった多様な人々を巻き込み、まとめあげることは難しいでしょう。
必要となるのは、協力したくなるような人間的な魅力や誠実な人柄です。
相手は人間なので、コミュニケーションをとりながら少しずつ信頼関係を構築していかなければ、物事は円滑に回りません。
顔の広さや協力してくれる人の存在が重要になってくるでしょう。
また、他部署だけでなく、経営層と円滑にコミュニケーションをとれることも大切な資質の一つです。
経営者の中には、思っていることをうまく言葉にできなかったり、言っていることがコロコロ変わる人もいます。
そういった経営陣の閃きをくみ取り、具体的で実現可能な戦略へ落とし込んでいかなければなりません。
コミュニケーション能力というと「話す」力のようにとらえられることも多いですが、「聴く」ことも同じように重要です。
好奇心旺盛な人
経営企画部の業務は会社全体の経営に関わるので、幅広い分野への理解が求められます。
一方で実務を行うわけではないので、そこまで詳細な知識は必要とされません。
判断をしたり、専門職の人たちと同じ目線で議論するための、必要最低限の知識があれば十分であるということです。
したがって、経理や人事、エンジニアのような、特定の分野について詳しく理解している「スペシャリスト」の職種とは根本的に性質が異なります。
経営企画部のメンバーは、自社にまつわるさまざまな知識を広く知る「究極のゼネラリスト」と言い換えることができるのかもしれません。
必要最低限の知識とはいっても、求められるレベルは高いものになるので、日々学ぶ姿勢が大切です。
向上心のない人や、業務時間外に仕事のことを考えたくないという人には向いていないでしょう。
逆に言うと、その範囲の広さから、一見業務に関係ないことでもアイデアの発想に役立つことがあるため、何事にも関心があり積極的に吸収していける人は適性があると言えます。
また、情報収集が得意な人も経営企画部に向いています。
市場の変化やトレンドを掴むのがうまいということだけではなく、自社の取り組みや人間関係などの情報網を持っている、いわゆる社内の情報通のような人も重宝されるでしょう。
さまざまなジャンルの仕事を経験していたり、色々な部署で仕事をしていた経験は、経営企画部で活かすことが可能です。
まとめ:特徴がマッチするなら、経営企画部で働いてみるのもアリ!
いかがでしたでしょうか。経営企画部に向いている人の特徴を解説してきました。
冒頭でも申し上げた通り、経営企画部は向いている人と向いていない人の差がはっきりと出る職種です。
その理由として、専門的なスキルのみならずそれらをまとめあげる総合的な能力が必要とされることが挙げられます。
一つのスキルを身につけて満足するのではなく、常に向上心を持って取り組まなければ業務についていくことは難しいでしょう。
自ら考えて企画する機会も多いので、負担が大きく大変ですが、その分やりがいもある仕事です。
ぜひキャリアパスの一つとして、検討されてはいかがでしょうか。