筆者が経理部に配属された初日に、当時の先輩から「ちょっと電卓打ってみて」と言われて、数字が書いてある紙を渡されました。
筆者はその時既に日商簿記検定2級を取得していたため、電卓には慣れていましたが、急に言われたことで緊張してしまった記憶があります。
そんなこともあり、「やはり電卓は経理業務にとって大事なんだ」と当時思いました。
その後、仕事で毎日電卓を使いながら、同時に電卓の効率的な使い方なども自分なりに勉強しました。
そういった筆者の経験からも、やはり電卓は経理業務にとって大事な「商売道具」だと改めて思います。
一方で、IT技術の進歩により経理業務のシステム化が進んでいて、電卓の使用頻度が減ったのは筆者の経験としても感じています。
電卓といっても手作業には違いなく、システム化によって電卓での作業が自動化されてきたのは自然な流れとも言えます。
ただ、それでも電卓が全く不要になったわけではありません。
例えば、請求書内容が正しいか検算したり、自分で作った資料の数字をチェックしたりするときには電卓が必要です。
そのほか、決算書や税務申告書の作成がシステム化されたとしても、やはり最終チェックは人間が電卓を使って行う必要があります。
それ以外にも、異なる資料間の数字をちょっと比較したい時や、打合せや会議においてその場で試算が必要な時など、電卓の存在価値はまだ残っています。
このように、経理業務においてもまだ必携である電卓について、経理経験者である筆者のおすすめを挙げてみました。
また、経理業務における電卓の必要性や電卓を選ぶポイントなども解説していますので、経理担当者はぜひ本記事を参考にしてください。
経理業務における電卓の必要性
デジタル化が急速に進んでいる昨今において、アナログな電卓はなぜいまだに必要とされているのでしょうか。
ここでは、電卓の特性から考える、経理業務における電卓の必要性を紹介していきます。
手軽に使用できる
デジタルツールで数値の計算を行う場合、Excelやスマートフォン・PCの電卓アプリを使用するのが一般的です。
しかし、こうしたデジタルツールを使用する場合、PCやスマートフォン、Excelを起動する手間が生じます。
また、PCの場合は会社の外に持ち出すことが厳しいというデメリットが存在します。
その一方で、電卓をいつも業務を行うデスク上に置いておけば、必要なときに電卓を操作するだけで計算をスピーディに行うことができます。
ボタン一つで即座に電卓を使用できるため、デジタルツールを使用するよりも立ち上がりが早いメリットがあります。
さらに、電卓は持ち歩きがしやすい軽さと小ささも魅力的で、外出の際にも携帯しやすいのです。
このように、電卓はデジタルツールよりも手軽かつ気軽に使用できることから、必要性が高いとされています。
ブラインドタッチがしやすい
経理業務においては、正確さはもちろんのこと、作業のスピーディさも求められます。
作業のスピードを高めるためには、手元を見ないで計算を行うブラインドタッチが効果的です。
そこで出てくるのが、直感的に操作を行いやすい電卓です。
スマートフォンやPCの電卓アプリと比較して、キーボードひとつで簡単に計算を行える電卓はブラインドタッチに向いています。
キーボード操作をできる電卓アプリを使用することで、より直感的に操作を行えて、作業スピードも高まるはずです。
このように、ブラインドタッチがしやすいという点で、電卓の必要性が高いと言えます。
検定試験や資格試験と相性が良い
経理業務を担当している人のなかには、簿記検定試験を受験したことがある、あるいはこれから受験する予定があるという人は少なくないでしょう。
こうした経理業務に関わる検定試験や資格試験では、試験中に電卓の操作を行うことがほとんどです。
日々の経理業務で電卓の操作を行っていれば、電卓の操作方法にも慣れて、試験が有利に進むメリットを期待できます。
反対に、試験や試験対策で電卓操作に慣れているからこそ、日々の業務でもスムーズに電卓を操作できると言えます。
自分が一番慣れているツールで計算を行うのが最も効率的ですので、経理業務でも電卓を使用する人が多いのかもしれません。
業務内容に適した電卓を選べる
実は、電卓と一口に言っても、製品によって搭載されている機能が大きく異なることをご存知でしょうか。
一般的に知られている電卓は、基本的な計算機能だけが搭載された「実用電卓」です。
そのほかにも、時間計算や粗利計算に適した「実務電卓」や、金融計算や関数機能が得意な「特殊電卓」が存在します。
普段行っている経理業務の内容に応じて、こうした電卓を柔軟に選べるのです。
そして、業務内容に適した電卓を選べば、わざわざExcelで特別な関数を用意する必要もなくなるはずです。
経理の電卓を選ぶポイント
それでは、電卓を選ぶ時のポイントをいくつか挙げてみます。
大きさ
経理業務で使う場合は、数字の表示桁数が12桁(千億)のもので、かつその数字が自分にとって見やすい大きさかという点でまず選ぶと良いと思います。
それらの条件で選ぶと、電卓本体の大きさもある程度の範囲内に絞り込まれます。
次に、電卓の打ちやすさを考えて、上記の中から自分の手のひらサイズに合ったものを選ぶと良いでしょう。
具体的には、中指を電卓のホームポジション(「5」のキー)に置いてみて、そこから最小限の動きだけで全てのキーがスムーズに押せそうかを確認してみることをおすすめします。
なお、見やすさを重視して大きなものを選ぶという考え方も他にありますが、あまり大きすぎるとデメリットもあるので注意が必要です。
例えば、デスクの上に置くと邪魔になるとか、自分の手のひらサイズより大きすぎるとキーを打つ時に手を大きく動かさないといけないので疲れます。適切な大きさを見極めることが重要です。
重さ
重さについても、大きさと同様に実際に自分で持ってみて負担が少ないものを選ぶと良いと思います。
自分のデスクの上で使うだけでなく、打合せや会議、出張などにも持っていくものなので、なるべく軽いものが良いでしょう。
仮にデスクの上でしか使わないという場合であっても、書類をデスクの上に広げながら計算する時は電卓の位置も色々と変えるため、日々使うことを考えると、取り扱いやすい重さであることが大切です。
機能
機能については、筆者の経験上、最低限の機能が備わっていれば問題ないと考えています。
標準キー(四則演算キーやリセットキー等)の他は、例えばメモリー機能やグランドトータル機能などがあれば通常の経理業務においてはまず困ることはないと思います。
敢えて言えば、税率設定をあらかじめしておくことで税抜き計算または税込み計算をしてくれるキーがあると便利かなというくらいです。
もちろん銀行など金融関係などの仕事では、もっと他にあった方がよい機能はあるかもしれませんが、それ以外の一般的な経理業務においては、それほど専門的な機能は必要ないと考えています。
なぜなら、そういった複雑な計算をする場合は表計算ソフトや他のシステムを使う方が正確かつ効率的だからです。
もし電卓で複雑な計算をする必要があるとしたら、むしろその業務自体を見直す必要があるかもしれません。
前述したように、電卓は現在、最終チェックなど本当に必要な時だけ限定的に使用されるものになってきており、それ以外の場合は極力システム化するのが合理的です。
したがって、必要最低限の機能だけが備わっている電卓をおすすめします。
メーカー
メーカーについては、実際に筆者が使っているカシオや、その他シャープやキャノンなど、長く定評のある国内メーカーのものであれば大きな問題はないと思います。
メーカーによって多少違う部分もありますが、大きな差はありません。
ちなみに、日本の電卓シェアは、カシオ計算機株式会社とシャープ株式会社、キャノングループが大半を占めていると言われています。
国内メーカーの電卓を購入する際には、これら3つのメーカーから選ぶのがおすすめです。
価格
価格については、安価なものだと数百円のものから、ハイスペックなものだと1万円近くするものもあります。
ただ、電卓というのは毎日使っていても余程乱暴な使い方をしない限り長く使えるものなので、それほど価格を気にする必要はないと思います。
つまり、価格差があるといってもせいぜい数千円程度なので、長い使用期間から考えると大した差ではありません。
あまり価格を気にしすぎず、長く使うことを前提に、価格以外の面だけで選んでも大きな問題はありません。むしろ価格の安さに惑わされないようにすることの方が大事です。
操作性
電卓の魅力は、直感的な操作が可能なことと、ブラインドタッチを行いやすいことです。
そのため、電卓を選ぶ際にはなるべく自分が操作しやすいものを選ぶようにしましょう。
電卓における操作性は、タイピングしたときの感触やキーの配列によって左右されます。
キーがゴム製の場合は感触が柔らかめで、操作音は静かです。
一方、キーがプラスチック製の場合、感触が硬めで打鍵音が少々大き目です。
どちらが操作しやすいかは人それぞれですので、一度操作してみて選ぶのがおすすめです。
また、キーの配列も、メーカーによって異なります。
なかには、タイプミスを減らすために、0のキーの隣にC(クリア)が配置されている電卓を避ける人も存在します。
経理におすすめの電卓【厳選2つ】
最後に、筆者がおすすめする電卓を2つ挙げます。
カシオ計算機 DF-120VG-N
引用:amazon
こちらは、筆者が現在使用している電卓と同じモデルです。
既に長く使っている電卓なので最新モデルではありませんが、1つの目安として考えていただければと思います。
主な仕様は以下の通りです。
〇大きさ 縦17.5cm×幅12.6cm
〇重さ 195g
〇表示桁数 12桁
〇税計算キーあり(税抜き計算、税込み計算)
〇ディスプレイの傾斜あり&スタンド付き
〇グリーン購入法適合商品
〇参考税込み価格 1,628円
シャープ EL-VN82-NX
引用:amazon
こちらも定評がある電卓です。上記で挙げたポイントも満たしています。
主な仕様は以下の通りです。
〇大きさ 縦18.0cm×幅10.9cm
〇重さ 181g
〇表示桁数 12桁
〇税計算キーあり(税抜き計算、税込み計算)
〇角度が調整できるチルトディスプレイ
〇参考税込み価格 3,252円(参考サイト:ASKUL、2022年6月17日現在)
まとめ:良い電卓を使い、経理業務を効率化!
ExcelやPC・スマートフォンの電卓アプリなど、経理業務ではデジタルツールを使用することが多くなってきました。
しかし、直感的な操作が可能で手軽に使用できる電卓は、まだまだ経理の現場で必要性が高いと言えます。
電卓を使用する際には、自分が操作しやすいと感じるタイピングの感触や、サイズ感を一度考えてみてください。
繰り返しになりますが、電卓は日々使う商売道具です。
自分に最適のものを選び、大切に長く使っていくことが大事だと思います。
値段が安いからと妥協せずに、自分にとって一番の電卓をこだわり抜いて探してみてはいかがでしょうか。