「実施した広告の効果を測りたい」、「CPA(顧客獲得単価)だけでは経営陣を納得させられない」、こんな悩みから広告の費用対効果を集計している広告運用担当者の方は多いと思います。ただし、複数の媒体にまたがる広告の効果を集計するのはとても手間がかかるものです。投資した広告コストの回収率をROASと言いますが、今回はROASの計測でお悩みの広告運用担当者に向けて、ROAS計測における課題からRPAを用いて自動化する方法までをこちらでご紹介していきます。
ROAS計測における課題
ROASとはReturn On Advertising Spendの略で、投資した広告コストの回収率を表します。計算式はとてもシンプルで「広告による売り上げ/広告費用=ROAS」となりますが、ROASは広告のROI(Return on Investment:投資利益率)とも言えるものなので、経営陣の関心が高く定期的に正確な報告が必要になるでしょう。これだけでも広告運用担当者の方にとっては頭の痛い問題ですが、ROASは集計が複雑になりがちで手間がかかるという課題も抱えています。ROASの計測(集計)でよくある課題は、以下のようなものです。
作業コストがかかる
前述のようにROASの計算式は単純なものですが、問題は計算しやすいようにデータをそろえることです。仮に1種類の商品やサービスであっても、広告を出稿する場合には1媒体のみに出稿するケースはまれで、多くは複数媒体に出稿されています。その場合は作業の手間が一気に煩雑になります。
例えばGoogle等の大手広告媒体では、管理画面からROASの情報をおおよそ以下のようなステップで取得することができます。
- 広告媒体の管理画面から、条件を指定してレポートを抽出
- 抽出したレポートを、CSV形式でダウンロード
- CSVの内容を、別のレポート用スプレッドシートなどへ転記
※媒体によって管理画面の設定は異なる
この作業自体はシンプルで、特別なものではありません。ところが複数媒体に出稿していると、それぞれ別に集計する必要が生じます。また複数の媒体にまたがっているだけでなく、出稿期間や頻度がバラバラな場合はもっと集計方法が複雑になってしまうのです。
これらのデータはフォーマットが微妙に異なっているので、体系立てて整理しながらつなぎ合わせ、転記が終われば最終的に人の目で慎重にチェックする必要があります。多くの広告運用担当者は、ROASのレポートをまとめるために人海戦術で対応しているようです。指標や前提が異なるデータを集めて集計するには、相当な手間と作業コストがかかることでしょう。
本来、ROASの計測は広告効果を見極めるためのものですが、集計作業の負担が大きいと計測結果を見極めたり活用したりする部分まで手が回らなくなる懸念があります。
広告費の把握が難しい
ROASの計測ではデータの取得やつなぎ合わせが難しいだけでなく、広告費の把握自体が難しいという問題があります。例えば、購買プロセスが複雑な経路をたどって商談に至る商材の場合などです。この場合は、どの媒体に出稿した広告の効果が出ているのか、判別しにくいことがあります。また、購買に至るまでに長い期間が必要な商材の場合すぐに効果が出ないので、いくら広告費をかけたのか把握するのが難しくなります。SaaSのようなサブスクリプションの場合にも長期的な計測が必要で、これらは売り上げに対する広告費の把握が難しいものの代表例と言えるでしょう。
もちろんこれらも、ある一定の規則を設けて慎重に集計すればROASの計測は可能です。ただしすべてを人手でやっていては、データの見逃しや転記ミスが起こる可能性もあり、複雑な工程ゆえに作業自体が属人的になってしまう懸念もあります。ROASを正確にレポートするためには、状況に合わせて計測方法を常に見直し、問題点を継続して改善する必要があるのです。
ROAS計測の改善方法
では、ROAS計測の改善方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
管理方法の見直しを行う
例えばリピート販売が主力となるECサイトなどでは、ある程度長期間に計測した売り上げからROASを導き出すことが重要です。長期間の計測に耐えるためには、データをいつでも見られるように「集計できる仕組み」をあらかじめ構築しておくことが必須になります。
つまり管理方法をルーチン化し、経過データを観測しながら一番適切なタイミングでレポート用のROASデータを収集できるようにするのです。前述のような、広告効果が出ていないタイミングでのデータ集計は、たとえ定期的なレポートのタイミングであっても意味を持ちません。管理方法の見直しを行い、適時にデータを収集できる仕組みの構築が必要となります。
ツール連携で広告費を可視化
社内でSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)、MA(マーケティング自動化ツール)などのツールを使っている場合は、ツール間の連携によりROASを計測することができます。
例えばある企業では、Salesforce(SFA)からのデータとGoogleデータポータル(管理画面)から取得したデータをマージして、社内独自の目標値(KPI)と比較できるROASのレポートを作成しています。ただしGoogleデータポータルからのデータは「広告による売り上げ/広告費用」の集計値であり、そのままでは社内の目標値と比較することができません。
そこでこの企業では「全社」、「顧客別」、「部署別」、「グループ別」という分類の軸を設定したSalesforceからのデータと、Googleデータポータルからのデータを結合して、独自の軸による広告費の可視化を実現しました。完成したデータは「全社KPI進捗」、「顧客別KPI進捗」、「部署別KPI進捗」等のレポートに利用し、月次や週次の報告で活用しています。
本事例の場合、以前からこのような仕組みは途中までできていたものの、最終的なレポート完成までは自動化されておらず、工程の後半は人の手で作業を行っていました。しかし、より柔軟性の高いRPAを使うことにより、完全な自動化を実現することができました。
本事例について詳しくは「SalesforceとGoogleデータポータルのデータを結合した、広告レポート作成を自動化」をご覧ください。
ROAS計測はRPAで自動化するのがおすすめ
複数媒体にわたるデータの収集や、複雑なつなぎ合わせを効率よく行うのであれば、RPAの利用がおすすめです。その理由を最後に紹介します。
RPAはさまざまな業務を自動化できる
基本的にコンピューター上で、なおかつ人手でできている作業ならば、ほぼRPAで自動化することができます。RPAであれば「データをシステムに登録する」「ツール間でデータを転記する」といった業務の自動化は問題なく行えるからです。また、広告媒体の管理画面から繰り返し行うデータ収集や分析作業も自動化が可能です。24時間稼働ができるので、設定したタイミングで確実にデータ収集、分析が行えます。
さらにRPAの導入で生まれる大きな効果は、自動化と作業効率化によるコスト削減です。人海戦術でデータを収集したり、つなぎ合わせのために費やしたりするコストは、RPAでは必要ありません。また、ほかの誰かが行った作業や入力ミスなどをチェックするには、多くの工数を必要とします。RPAなら最終データ確認のためのコスト、作業ミスなどによる手戻りや修正のコストも削減され、加えて経営陣へのレポート作成時間も軽減することができます。
ROASの計測にはRPAがおすすめ
複数媒体での広告運用は、ROASの計測を非常に複雑なものにしてしまいます。RPAであれば、ROAS計測のためのデータをCRMやEC管理画面などから自動で収集、ほかの広告媒体や各媒体、ツールとの連携を効率的に行えます。インターネット上の広告媒体だけでなく、展示会やペーパー広告など、異なるチャネルの比較をしたい場合にもRPAなら必要な情報を自動取得し、Excelのようなスプレッドシートに一覧表としてまとめることができます。ROAS計測のような、定型的でありながら複雑な工程の作業は、RPAの最も得意とするところなのです。
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