働き方改革が推進されている昨今、自治体でもRPAの導入推進がされていることはご存知でしょうか?現在、様々な自治体がRPAを導入し、業務効率化に取り組もうとしています。
この記事では、自治体におけるRPA活用について、RPAを導入することによりどのような効果をもたらすのかを解説していきます。
目次
自治体へのRPA推進における背景と導入状況
2018年に総務省が自治体へRPAの導入支援を予算化しましたが、そこから現在まで多くの自治体が導入を推進しています。
この章ではどういった理由で導入が進められているのか、導入状況はどのように進行しているのかを解説します。
国全体で進んでいる労働人口の減少
日本では、世界的にみても類を見ないスピードで、少子高齢化と人口減少が進行しています。これらが進行していくことにより、当然ながら労働力人口も共に減少していきます。
参考:経済産業省 第6回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会「人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性に関する基礎資料」
また、少子高齢化が進むにあたって日本の生産年齢人口は減少し、出生率も低く推移しています。これにより労働市場への新しい労働力の供給が不足しており、将来的にも労働力の減少は進行していくと懸念されています。
現在、多くの自治体は人口減少や都市部への人口流出などにより税収の低下がある一方で、高齢化による福祉ニーズの増加や社会インフラの維持などが求められる状態となっています。限られた資源の中で持続可能で質の高い公共サービスを提供することが喫緊の課題と言えるでしょう。
労働力不足の一方で、多様化する市民ニーズへ対応すべく、RPAなどの革新的技術の活用が求められています。
自治体におけるRPAの導入状況
では、自治体におけるRPAの導入状況と推移はどのようになっているのでしょうか。
参考:総務省「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」
上記の図の通り、令和2年度と比べ、令和4年度における都道府県でのRPA導入率は74%から94%へと大幅に増加しました。同様に、指定都市においても導入率は令和2年度の65%から令和4年度には100%にまで向上しました。
一方、その他の市区町村においては、導入率は36%と都道府県や指定都市に比べて低いものの、近年の伸び率としては非常に高くなっていると言えます。特に導入予定や導入検討中を含めると、市区町村全体の67%がRPAに関する実証実験や導入の検討をしていることが示されています。
これらのことから、自治体におけるRPAの浸透度は高まっており、導入の動きは活発化していることがわかります。
自治体におけるRPA導入によるメリット
このように、様々な要因からRPAの導入を推進している自治体ですが、実際にRPAがどのような効果をもたらすのか、あまりイメージができない人もいるかもしれません。
業務効率化に高い効果を生み出すRPAですが、どのようなものでどのような効果が見込めるのか、いくつかをご紹介します。
RPAとは
そもそもRPAとはどういったものなのか、簡単に紹介します。
RPA(Robotic Process Automation / ロボティックプロセスオートメーション)とは、コンピューター上のソフトウェアロボットを使って人間の手作業を自動化する技術を指します。日々のルーティンワークや単純作業を効率化し、仕事の生産性を向上させることができます。
RPAが得意とする業務は、①繰り返しのタスク、②ルールベースのタスクです。これらに当てはまるものであれば基本的にどんな業務でも自動化できると考えて良いと思われます。
例えば、特定のイベントが発生した時に自動的にタスクを割り当てることや、タスクの進捗状況を監視してリマインダーを送ることなど、ある程度複雑な条件下でもRPAは機能します。
逆に、判断を伴う業務や創造性や発想力を必要とする業務、柔軟な対応が求められる業務についてはRPA化が難しいと言われています。
では、自治体での業務においては、RPAはどのように効果を出せるのでしょうか。
コストの削減・人手不足の改善
RPAはパソコン上の事務作業を自動化することができるので、定型的で単純な作業やルーチン業務はRPAを活用して自動化ワークフローを作成することにより、人間の介入なしに処理ができるようになります。
一度作成したワークフローは、業務内容やシステムに変更がない限り、長期間にわたり使い続けることができます。そのため、その業務に従事する専任の担当者を配置する必要がなくなりますので、人員コストを削減し、業務効率を向上させることも可能となります。
また、RPAは24時間365日稼働することができるので、例えば複数人で回していた業務や、休日に対応が必要だった業務も一つのワークフローで完結できるようになります。これにより、人手不足の解消も期待できるでしょう。
ヒューマンエラーの防止
RPAの導入により、ヒューマンエラーを防止することができます。
データ入力などの単純作業では、人の手で行うことによりどうしても入力ミスが発生してしまう可能性がありますが、RPAはあらかじめ決められた通りの処理をロボットが処理してくれるため、ヒューマンエラーの回避へ繋がります。
特に自治体での業務となれば個人情報を扱うケースが多いため、そういったミスが大きな問題に発展する可能性もあります。量が増えれば増えるほどミスが起きる確率やリスクも増えるため、RPAを活用しミスを防止することは非常に大きなメリットといえるでしょう。
RPA導入で具体的に何ができるか
ここまでRPAで得られる効果を解説してきましたが、実際に起きている自治体での業務において、どのような形でRPAを活用することができるのでしょうか。
今回はいくつか想定できるうちの一例をご紹介していきたいと思います。
住民登録情報の更新などのデータ入力作業
住民登録情報の変更(転入、転出、転居先の変更など)を受け付け、データベースを更新する作業が発生するケースがありますが、このような人の判断が不要な定型的な作業はRPAで自動化できる業務です。
単純な作業であっても手動で行うことになると時間や労力がかかる上、ヒューマンエラーも発生する可能性が高まります。これをRPAで実行することにより従業員の負担軽減にも、エラー削減にも繋がります。
予約管理および受付プロセスの自動化
RPAは、住民からの公民館や体育館などの公共施設への予約情報を受け取り、施設へのスケジュールを自動的に更新し管理することも可能です。この自動化を行うことで、忙しい時間帯や確認できない状況でも予約状況がリアルタイムに更新され、急な変更やキャンセルへ迅速に対応することができます。
手作業での業務時間を大幅に短縮できることにより、従業員がよりクリエイティブな業務へあたることができます。
その他の活用業務例
下記の表は、総務省が発表した「自治体におけるRPA導入ガイドブック」に掲載されている、実際にRPA導入された業務です。
本記事内では一部のみの記載となっているので、さらに確認したい場合はぜひ直接資料をご確認ください。
導入分野 | 導入業務 |
住民基本台帳 | ・個人番号カード交付管理 ・ご遺族手続支援コーナー資料作成業務 |
個人住民税 | ・当初課税準備:住民税申告書の入力、所得税確定申告書の入力、 給与支払報告書の入力、法定調書の入力 ・当初課税:エラー解消業務 ・更正:年金資料の入力、 給与所得者異動届出書の入力、退職所得分納入 申告書の入力、 納税通知書の作成 ・照会:公用照会による課税証明書の発行 |
法人住民税 | ・基本情報登録:法人設立届出書の入力 ・申告書受付:法人住民税申告書の入力、電子申告データの取込み ・更正・決定:法人税額更正データとの照合 |
軽自動車税 | ・当初課税準備:新規車両登録、車両変更登録、廃車登録 |
固定資産税 | ・課税客体把握:償却資産申告書の入力、登記異動情報の入力 ・評価:評価情報の入力 ・更正:納税通知書の作成 |
収滞納管理 | ・収納:口座情報の登録・廃止、入金消込 ・還付・充当:還付入力、還付充当 ・滞納整理:納付書・催告書・明細書等の作成、預貯金調査 |
国民健康保険 | ・資格管理:国民健康保険異動届の入力、資格証明書情報の管理 ・賦課管理:簡易申告書の入力、転入者の所得情報の入力 ・給付管理:レセプト点検結果の入力、高額療養費申請書の入力、 限度額 適用認定証の年度更新 ・統計・報告:月報の作成 |
後期高齢者医療 | ・資格管理:年齢到達による保険証交付 ・給付管理:高額療養費申請書の入力、高額介護合算療養費申請書の入 力、 限度額適用認定申請書の入力 |
健康管理 | ・成人検診(健診):予約入力、結果入力、通知書作成、 受診勧奨者の情報抽 出、減免申請に係る課税状況等の調査 ・母子保健管理:訪問先地図の作成 |
自治体へRPAを導入する際のポイント
このように、非常に多くの効果が期待できるRPAですが、RPAは「導入したら終わり」というツールではありません。その効果を得るためには、導入に際して様々なポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、4つのポイントをピックアップしてご紹介いたします。
状況にあった種類を選択する
RPAツールには、デスクトップ型、クラウド型、サーバー型の3つの種類があります。
1つずつ、簡単に解説していきます。
デスクトップ型のRPAツールは、パソコンにソフトウェアをインストールして使用します。主な特徴として、比較的安価で小規模な業務の自動化に向いており、オフラインでの利用が可能です。
ただし、大規模な自動化や他の作業との同時実行には不向きで、ユーザーがアップデートを管理する必要があります。
クラウド型のRPAツールは、クラウド上で提供され、インターネットに接続して利用します。クラウドサービスやインターネット上の作業を効果的に自動化でき、スケーラビリティにすぐれているため、幅広い業務自動化が可能です。また、クラウド上で動作するため作業中や休日・夜間でも動作してくれる点や、ベンダー側でアップデートを行うため、常に最新の状態で使用できる点も特徴です。
一方で、オフライン環境では利用できず、一部のローカル作業が自動化できない場合があります。
サーバー型のRPAは、自社でサーバーを用意して導入します。大規模な業務の自動化に向いていますが、初期コストが高く、サーバーの運用と増設に伴うコストが発生します。スケーラビリティは低く、リソースを増やすにはサーバーの増設が必要です。
RPAツールの選択時には、こういったメリットやデメリットを踏まえ、状況に合わせたツールを選択する必要があります。
運用ルールや運用体制を整備する
RPAは基本的に、作成されたワークフローに沿って業務を行うツールです。そのため、期待する効果を得るためには適切なルールでのワークフロー作成が必要となっています。
誰がどのような意図でワークフローを作成したのか、誰が運用しているのかなどを不透明にしないためにも、運用ルールや運用体制の構築は必須だといえます。
また、トラブルが発生した際や新たに業務自動化を行いたい場合など、導入したRPAツールについて、ある程度全体像が把握できている人材は必要です。
そのためにも、ツール導入の段階で担当者を配置することは重要なポイントとなっています。
自動化したい業務について整理する
様々な業務がある中で、自動化したい業務はどの業務なのか、自動化することによって効果を得られる業務はどの業務なのか、事前に洗い出ししておくことが重要です。ルーチンワークや繰り返し作業が多い業務や、高頻度で実行が必要な業務、入力ミスが起こりやすい業務がRPAでの自動化に向いています。こういった業務の洗い出しをしておくことで、ゴールを見失うことなくRPAの導入を行うことができます。
また、合わせて業務プロセスを整理しておくことも大切です。事前に業務プロセスを明確化しておくことで業務の標準化にもつながりますし、ワークフロー設定の際にもどの部分を自動化するべきなのか、どういった形で設定を行うべきなのか、スムーズに設計することができるでしょう。
サポート体制が充実しているかを確認する
サポート体制を確認しておくことで、RPA導入後の不安は大きく減らすことができます。有償なのか無償なのか、プランによって変動があるのか、トラブル発生時の返答のスピードなど、RPAツールを提供する企業によって提供体系は様々なので、なるべく詳細に確認しておくことが必要です。
サポート体制が充実しているRPAツールを選択することで、より安定した長期運用と自動化業務の拡大が期待できます。
まとめ
自治体におけるRPA導入について解説してきました。すでに効率化は進んできているようですが、まだまだ自動化できる業務もあるのではないでしょうか?今回の記事を参考に、さらに自治体の業務効率化が進んでいってくれると嬉しいです。
自治体運営の効率化を図ることにより、住民の満足度向上やサービス向上も期待できるかもしれませんね。導入するポイントに気をつけて、効果的なRPA運用をしていきましょう。
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