エッジAIとは?クラウドAIとの違いを解説&実際の事例を紹介

最近、「エッジAI」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これまでAIといえば、クラウド上で処理する「クラウドAI」が一般的でしたが、近年では「エッジAI」の活用が進んでいます。では、エッジAIとは何なのでしょうか?
この記事では、クラウドAIとの違いや、エッジAIの活用事例をわかりやすく解説します。

エッジAIとは?

エッジAIとは、 データが発生する現場近く(エッジ)でAI処理を行う技術です。
従来のAIは、クラウド上で大量のデータを処理するのが一般的でした。しかし、エッジAIでは、データセンターに送ることなく、デバイス側でAI処理を行います。

例えば、皆さんのスマートフォンで顔認証を行う際、撮影した顔のデータはクラウドに送られることなく、スマートフォンの中で処理されます。これがエッジAIの代表的な例です。
また、工場の生産ラインでは、カメラで撮影した製品の画像をAIが瞬時に解析し、不良品を見つけ出すシステムが導入されています。これもエッジAIの活用事例の一つです。クラウドにデータを送る時間がないため、リアルタイムでの判断が求められる現場で役立っています。

エッジAIの特徴

では、エッジAIにはどのような特徴があるのでしょうか?

閉域環境での利用が可能

エッジAIは、ネットワーク接続がない、または制限された閉域環境でも利用できるという特徴があります。これにより、クラウドへの接続が難しい場所でもAIの活用が可能となります。

例えば、インターネット接続が制限されている製造工場や医療機関、軍事施設などでは、外部ネットワークに依存せずにデータ処理を行うことが求められます。エッジAIは、ローカルでデータを処理できるため、これらの環境でもAIを活用したリアルタイム分析や自動化が実現できます。

リアルタイム性の高さ

エッジAIは、データをデバイス上で処理するため、クラウドへ送信する時間が不要です。そのため、即座にデータ分析が可能になり、工場の異常検知や自動運転、医療モニタリングなどの分野で活用されています。例えば、製造業では、機械の異常を瞬時に検知し、トラブルを未然に防ぐことができます。

通信コストの削減

クラウドAIの場合、大量のデータをクラウドサーバーへ送信するため、通信コストがかかります。しかし、エッジAIはデータをデバイス上で処理するため、ネットワーク負荷を抑え、通信コストを削減できます。特に、遠隔地や通信環境が整っていない場所での利用に適しています。

セキュリティとプライバシー保護

エッジAIは、データをクラウドに送信せず、デバイス上で処理を完結できるため、情報漏えいやハッキングのリスクを低減できます。個人情報や機密データを扱う医療や金融業界では、高いセキュリティが求められるため、エッジAIの活用が進んでいます。

エッジAIと従来のクラウドAIの違い

では、エッジAIと現在主流のクラウドAIにはどのような違いがあるのでしょうか?
一番の大きな違いは、データ処理を行う場所です。エッジAIはデバイス上でデータを処理するのに対し、クラウドAIはインターネット経由でクラウドサーバーにデータを送信し、そこで処理を行います。この違いにより、エッジAIはクラウドAIと比べて、処理速度が速く、通信環境に左右されにくいという特徴があります。これにより、リアルタイム性が求められる用途や、インターネットに接続できない環境でもAIを活用できるようになるのが特徴です。

以下に、主な違いを表にまとめましたので、ぜひご確認ください。

エッジAIクラウドAI
処理場所デバイス上クラウドサーバー(データセンター)
処理速度高速低速(通信環境に依存)
通信コスト低い(データ送信不要)高い(大容量データ送信が発生)
セキュリティ高い(ローカル処理)クラウドのセキュリティ対策必須
オフライン稼働可能不可能
AIモデルの更新デバイスごとに対応が必要一括更新可能

このように、リアルタイム性やセキュリティ、通信コストなどに影響が出るため、利用シーンに応じた適切な選択が重要になります。
どのようなポイントで選択するべきなのか、一部を下記にまとめました。

エッジAIが向いているケース

リアルタイム処理が必要な場面

エッジAIは、リアルタイムでデータを処理できるため、迅速な対応が求められる場面に適しています。例えば、工場の異常検知では、機械のセンサーが異常を検知した際に即座にアラートを発し、設備の故障を未然に防ぐことができます。また、医療分野では、患者のバイタルデータをリアルタイムで監視し、異常が発生した際に即座に医師へ通知するシステムとして活用されています。

通信環境が不安定な場面

自動運転車や農業IoTなどの分野では、通信環境が常に安定しているとは限りません。クラウドAIに依存すると、通信が途切れた際に処理が遅れたり、動作が停止するリスクがあります。しかし、エッジAIを活用すれば、デバイス内でデータ処理が完結するため、通信環境に左右されずに安定した動作を実現できます。

セキュリティやプライバシーを重視する場面

医療や金融などの分野では、個人情報や機密データを扱うため、高いセキュリティが求められます。クラウドAIの場合、データをクラウドに送信する際の漏えいリスクがありますが、エッジAIであればデータをデバイス内で処理できるため、外部への情報流出を防ぐことができます。特に、病院の電子カルテシステムや金融機関の不正検知システムでは、エッジAIの導入が進んでいます。

クラウドAIが向いているケース

大量のデータを分析する場面

クラウドAIは、大規模なデータを処理するのに適しています。例えば、マーケティング分析や、医療研究における膨大なデータ解析などが挙げられます。ビッグデータを活用した機械学習モデルのトレーニングには、クラウドの強力な計算リソースが必要です。

リソースの制約が少ない場面

クラウドAIは、処理能力が高いサーバーを利用できるため、エッジデバイスのようなハードウェアの制約がありません。企業がAIを活用した大規模なサービスを提供する際には、クラウドAIの柔軟性が重要になります。例えば、SaaS型のAIサービスやオンライン翻訳ツールなどが該当します。

継続的なモデル改善が求められる場面

クラウドAIは、常に最新のデータを取り入れながらAIモデルをアップデートできるため、継続的な改善が必要なシステムに向いています。例えば、検索エンジンのアルゴリズムや、ECサイトのレコメンドシステムなどがその代表例です。

エッジAIの実用化事例

エッジAIは多様な産業分野で実用化が進んでおり、その導入事例も年々増えています。
ここでは、様々な分野別に実際の実用化事例をご紹介します。

自動運転

自動運転車は、エッジAIの代表的な活用例の一つです。車両に搭載されたセンサーが収集する膨大なデータを、クラウドに依存せず、車内のコンピュータ(エッジデバイス)でリアルタイムに処理します。
例えば、自動運転技術を手がけるMotionalは、ロボタクシーに30以上のセンサーとオンボードAIコンピューティングを搭載。これにより、360度の周囲認識を実現し、安全な自律走行を可能にしています​​。また、リアルタイムのデータ処理により、乗客や歩行者の安全確保を迅速に行い、既存のライドシェアネットワークとの統合も進められています​​。

さらに、自動車業界ではADAS(先進運転支援システム)にもエッジAIが組み込まれています。カメラ映像を活用した物体検知やドライバーの異常検知をリアルタイムで実施し、安全性の向上に貢献しています。

監視・防犯(スマートシティ)

スマートシティ分野では、監視カメラ映像の分析や都市インフラの管理にエッジAIが広く活用されています。従来のクラウドベース処理に比べ、現場でリアルタイムにデータを処理できるため、迅速な対応とプライバシー保護の両立が可能です。

例えば、米国のNoTraffic社は信号機にカメラやレーダーを搭載し、エッジAIによる車両や歩行者の検知・追跡を行う交通管理システムを提供しています。このシステムはその場で信号サイクルを動的に最適化し、ある都市では交通待ち時間を最大50%削減する効果が報告されています​​。これにより、渋滞緩和や排気ガス削減といった環境負荷の低減にも貢献しています。

また、防犯分野ではエッジAIを組み込んだ監視カメラが普及しています。人物や不審行動をリアルタイムに検知し、必要時のみ映像をクラウドに送信することで、プライバシーへの配慮を保ちながら異常検知の即時対応を実現しています。このようなスマート監視技術は、都市の安全性向上に大きく寄与しています。

農業・ロボティクス

エッジAIは農業分野にも活用されており、ロボット技術との組み合わせにより、作業の自動化と生産性向上が進んでいます。

例えば、イスラエルのスタートアップBloomXは、作物の受粉を自動化するロボット「Robee(ロビー)」を開発しました。Robeeは、ブルーベリーやアボカドの花をマルハナバチの羽ばたきに似た振動で揺らし、効率的に花粉を飛散させることで受粉を行います​​。さらに、環境センサーやGPSを搭載し、エッジAIを活用して適切なタイミングで作業を最適化。導入した農園では、収量が最大30%向上した例も報告されています​​。

また、エッジAIを搭載したロボットは、農業だけでなく産業分野でも導入が進んでいます。例えば、倉庫内での在庫管理やピッキングを自動化する自律走行ロボット建設現場での重機の自動運転化といった事例もあり、現場での即時判断と制御を可能にすることで、作業効率の向上と人手不足の解消に貢献しています。

エッジAIのビジネスにおける活用事例

では、身近なビジネス面においてはどのような活用事例があるのでしょうか。
各分野別にいくつかご紹介していきます。

製造業

製造業では、製品の品質検査や設備の異常検知などにエッジAIが活用されています。これにより、メンテナンスコストの削減や生産性向上が実現されています。

具体例

  • 工場のラインで不良品を検知:カメラで撮影した製品画像をエッジAIで解析し、不良品をリアルタイムで検知。人による目視検査に比べて、検査精度が向上し、人材不足の解消にも貢献します。
  • 設備の故障予知:センサーデータなどをエッジAIで分析し、設備の異常を事前に検知。ダウンタイムを削減し、生産性向上に繋がります。

物流分野

物流分野では、配送の最適化や倉庫管理の効率化などにエッジAIが活用されています。これにより、配送時間の短縮やコスト削減が実現されています。

具体例

  • 配送ルートの最適化:交通状況、天候、配送先などを考慮し、エッジAIで最適な配送ルートを算出。配送時間の短縮、燃料費の削減に貢献します。
  • 倉庫内の自動搬送:エッジAIを搭載したロボットが、倉庫内を自動で移動し、荷物の搬送作業を効率化。人手不足の解消、作業ミスの削減に繋がります。

小売業

小売業では、顧客体験の向上や店舗運営の効率化などにエッジAIが活用されています。
これにより、売上向上やコスト削減が実現されています。

具体例

  • 顧客の行動分析によるパーソナライズされた商品提案:店舗に設置したカメラの映像をエッジAIで分析し、顧客の行動を把握。顧客一人ひとりに最適な商品を提案することで、購買意欲を高めます。
  • 在庫管理の自動化:棚に設置したセンサーとエッジAIを連携させ、在庫状況をリアルタイムに把握。自動で発注を行うことで、在庫切れや過剰在庫を防ぎます。

医療分野

医療分野では、診断の支援や患者の見守りなどにエッジAIが活用されています。これにより、診断精度の向上や患者の安全性が向上されています。

具体例

  • 医療画像診断の支援:エッジAIを搭載した医療機器で、CTやMRIなどの画像を解析し、医師の診断を支援。診断精度の向上、診断時間の短縮に貢献します。
  • 患者のバイタルデータのリアルタイム分析:ウェアラブルデバイスで取得した患者のバイタルデータをエッジAIで分析し、異常を検知。迅速な対応が可能となり、患者の安全確保に繋がります。

主要企業のエッジAIへの取り組み

上記のようにすでに様々な分野で活躍しているエッジAIですが、エッジAI分野にはNVIDIA、Google、Apple、Microsoftなどの主要テック企業がこぞって参入しており、それぞれ独自のチップ、フレームワーク、サービスを展開しています。

NVIDIA

NVIDIAは、エッジAI向けプラットフォームの分野で先駆的な役割を果たしているGPUメーカーです。特に、組み込み向けのJetsonシリーズ(Nano、Xavier、Orinなど)は、高性能GPUとARMベースのCPUを統合したコンパクトなモジュールで、ロボット、ドローン、産業機器のAIエンジンとして幅広く活用されています。

最新世代のJetson Orinは、275 TOPSという高いAI推論性能を実現し、前世代のJetson Xavier(32 TOPS)と比較して大幅に性能が向上しました​​。
また、NVIDIAはハードウェアだけでなく、エッジAIの開発・運用を支援するソフトウェアエコシステムも提供しています。

  • TensorRT:エッジデバイス上でのディープラーニング推論を最適化
  • NVIDIA Metropolis:産業向け映像分析プラットフォーム
  • Isaac SDK:ロボット向けAI開発ツール

さらに、自動運転分野では車載AIコンピュータ「NVIDIA Driveシリーズ」を展開し、エッジAIを活用した高度な運転支援や自律走行技術を支えています。ハード・ソフト両面の強力なエコシステムにより、NVIDIAはエッジAI市場をリードし続けています。

Google

GoogleはクラウドAIに加え、エッジAIにも注力し、ハードとソフトの両面で技術開発を進めています。

ハードウェアでは、専用ASIC「Edge TPU」を搭載した「Coral」シリーズを提供。小型・低消費電力ながら高速な推論が可能で、USB接続のCoral Acceleratorを活用すれば、Raspberry Piなどのデバイスでも高性能なAI処理が実現できます。
ソフトウェア面では、TensorFlow Liteを中心に、エッジデバイス向けのモデル最適化が進められています。量子化による軽量化や、AndroidのNNAPICoral Edge TPUとの統合にも対応。Google Pixel 4では、画像分類推論を1.3ミリ秒で実行できる低レイテンシを実現しました。

さらに、GoogleはFederated Learning(連合学習)を推進し、プライバシーを保護しながらローカルデバイスで学習を行う技術も開発。クラウドとエッジを連携させるエコシステム構築を進めています。

Apple

Appleは、プライバシー保護を重視し、オンデバイスAIの活用を推進しています。iPhoneやiPadに搭載されるAシリーズMシリーズチップには、機械学習専用のNeural Engineが統合され、高度なAI処理を端末内で実行可能です。

M2チップのNeural Engineは毎秒15.8兆回の演算が可能で、前世代のM1チップ比で40%以上高速化。これにより、Face ID、写真の被写体認識、キーボード入力予測、翻訳、Siriなどの機能をクラウドに頼らずに処理できます。
また、開発者向けにはCore MLを提供し、AIモデルをiOSアプリに簡単に組み込める環境を整備。iOS 15以降ではSiriの音声認識が完全オフライン化され、プライバシー保護と応答速度の向上を実現しました。Appleはデバイス内処理による安全で高速なAIの活用をさらに進めています。

Microsoft

Microsoftは、クラウド(Azure)とエッジを統合するAIソリューションを提供しています。その中心となるAzure IoT Edgeは、クラウドのAIモデルやロジックをエッジデバイス上で実行できるプラットフォームで、ネットワーク帯域を節約しつつローカルでデータ処理や推論を可能にします。Azure IoT Hubと連携し、大規模なデバイス管理も支援します。

さらに、オンプレミス向けのAzure Stack Edgeや、エッジAI開発キットAzure Perceptを提供し、カメラや音声デバイスを活用したプロトタイピングを容易にしています。
ソフトウェア面では、ONNXモデルフォーマットを推進し、異なるデバイス間でのAIモデルの展開を支援。WindowsではDirectMLを活用し、GPUやNPUによるAI推論を可能にしています。
Microsoftは、クラウドとエッジを融合させた安全で柔軟なAI環境を構築しています。

エッジAIの活躍が今後期待される業界・分野

エッジAIの今後の普及が特に期待される分野として、いくつかのトレンドとユースケースが予測されています。特に即時性が要求される応用(リアルタイム制御)やプライバシー・セキュリティ重視の分野でその重要性が高まるでしょう。

いくつかの事例をご紹介します。

産業インフラ・社会基盤

エッジAIは、今後エネルギーや公共インフラなどの重要分野での需要が高まると予測されています。例えば、電力、ガス、水道などのユーティリティ業界では、分散配置されたセンサーや設備からのデータを現場で解析し、リアルタイムで設備の最適運用や予知保全を行うニーズが拡大しています。

具体的には、電力網では再生可能エネルギーの変動をエッジAIで調整する取り組みが進んでおり、水処理施設では安全基準を満たすためのリアルタイム監視が行われています​​。こうしたインダストリー4.0 * の分野では、クラウドに頼らず現場で迅速な意思決定が可能なエッジAIがデジタル変革の要となると考えられています。

さらに、アナリスト予測によると、2024年時点で20%だったエンタープライズ企業のエッジコンピューティング採用率は、2029年には50%に達すると見込まれています​​。この流れに伴い、多くの企業が本格的なエッジインフラの導入を進めると予想されます。

参考:エッジコンピューティング市場の成長予測

ロボティクス・自律システム

エッジAIの発展により、スマートロボットや自律型機械の普及が加速すると予測されています。ガートナーの調査によると、「2030年までに世界人口の80%が日常的にスマートロボットと関わるようになる」とされており​​、物流倉庫のピッキングロボットや、小売店の案内ロボット、オフィスの清掃ロボットなどが社会に溶け込む未来が描かれています。

この実現には、人とロボットの協調や安全性の確保が鍵となります。エッジAIの活用により、ロボットが低遅延・高信頼の判断を現場で即座に行えるようになり、人間とのスムーズな意思疎通が可能になります。

今後、サービスロボット、医療用ロボット、ドローン群制御など、多様な分野でエッジAIを搭載したロボットが活躍すると期待されており、人手不足の解消や作業の危険軽減といった社会課題の解決に寄与するでしょう。

参考:2023 年に注目すべきエッジAIの5つのトレンド

スマートデバイス(AR/VR・ウェアラブル)

消費者向けデバイスの分野では、エッジAIが新たな製品カテゴリを生み出しつつあります。特に、スマートグラスやARヘッドセット、VRデバイスの登場により、リアルタイムでの画像認識や音声対話処理がデバイス上で行われる必要性が増しています。エッジAIの進化により、これらのウェアラブル機器はクラウドに依存せず、高度な処理が可能となっています。

「AIの進歩はウェアラブルの普及を加速させ、追加ハードウェアなしで高度なインサイトを提供する」という分析もあります。例えば、スマートグラスが視界のテキストを即座に翻訳したり、イヤホン内で音声アシスタントがオフラインで動作する未来が現実味を帯びています。

市場予測によれば、スマートグラスの年間販売台数は2029年に5,500万台に達し、2035年には14億台に達すると予測されています。
さらに、家庭用スマート家電や自動車のインフォテインメントシステムなど、身の回りの電子機器もエッジAIを内蔵し、ユーザーの行動を学習して自律的に動作を最適化する方向へ進んでいくと予測されています。

参考:スマートグラス市場の最新動向

エッジAI導入のポイントと注意点

とても活躍が期待できるエッジAIですが、導入する際には適切なハードウェアの選定、AIモデルの最適化、セキュリティ対策の強化といった点を考慮することが重要です。
これらの要素を適切に整えることで、エッジAIの効果を最大限に引き出すことができるでしょう。

ハードウェアの選定

エッジAIの処理はデバイス上で行われるため、適切な計算能力を持つハードウェアを選定することが重要です。処理能力が不足すると、リアルタイム性が損なわれ、期待したパフォーマンスを得られません。

また、消費電力にも注意が必要です。特に、バッテリー駆動のIoT機器などでは、消費電力の大きいハードウェアを使用すると、稼働時間が短くなり、実用性が低下します。そのため、エッジデバイスの用途に応じた適切なCPUやGPU、さらには専用のAIチップ(TPUやNPU)を選定することが求められます。

AIモデルの最適化

エッジAIでは、計算リソースが限られているため、クラウドAIと同じモデルをそのまま使用することは難しいケースが多いです。そのため、モデルの最適化が不可欠です。
具体的には、以下のような手法が活用されます。

  • モデルの圧縮:不要なパラメータを削減し、計算量を減らす。
  • 量子化:数値精度を低減することで、計算負荷を軽減。
  • 知識蒸留:高性能なモデルの知識を、小型のモデルに転移。

これらの最適化技術を活用することで、エッジデバイス上でも十分な精度を維持しながら、軽量かつ高速に動作するAIモデルを実現できます。

セキュリティ対策の強化

エッジAIはローカルでデータを処理するため、クラウドに比べてデータの外部流出リスクが低いという利点があります。しかし、それでも完全に安全とは言えず、特に以下のようなセキュリティ対策が求められます。

  • ファームウェアの定期的な更新:最新のセキュリティパッチを適用し、脆弱性を防ぐ。
  • アクセス制御の強化:デバイスごとに適切な認証機能を設け、不正アクセスを防止。
  • 暗号化の実施:エッジデバイス内のデータや通信経路を暗号化し、盗聴リスクを軽減。

これらの対策を講じることで、エッジAIの安全性を確保し、安心して業務に活用することができます。

まとめ

この記事では、エッジAIとは何か、クラウドAIとの違い、そして様々な分野における活用事例を紹介してきました。

エッジAIは、データ処理を現場近くで行うことで、高速処理、低遅延、セキュリティ強化、プライバシー保護などを実現する技術です。製造業、物流、小売、医療など、幅広い分野で業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上に貢献しています。
また、AI導入を検討する際には、クラウドAIとエッジAI、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自社の課題やニーズに最適な選択をすることが重要です。

エッジAIは、スマートファクトリー、自動運転、パーソナライズ医療など、未来社会の実現に不可欠な技術です。この記事を通じて、皆様がエッジAIの可能性を感じ、未来のビジネスを構想するきっかけとなれば幸いです。

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この記事を書いた人

Yuri Yamamoto
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