広告運用担当者の定型業務のひとつに広告効果を伝えるレポーティング業務がありますが、ほとんどの担当者は情報収集とレポート作成に多くの時間を費やしているのではないでしょうか。各広告媒体の管理画面からデータを取得したりレポート用フォーマットへの転記をしたり、一つひとつの作業は短時間で終わるものの、広告の出稿先が多ければそれだけ工程は増えていきます。また、社内外に向けて別々のフォーマットでレポートを用意する必要性がある場合、その手間は一気に大きくなり、レポーティング業務は人手による許容量を超えてしまうかもしれません。
今回は広告運用におけるレポーティングの課題と、その解決法を紹介していきます。
広告運用のレポーティング業務が複雑化する理由
広告運用のレポーティング業務は決して複雑な作業ではありません。むしろそれぞれの工程はとてもシンプルなものです。ただしそれらの作業も、広告の出稿先が増えると途端にやっかいな作業に変化してしまいがちです。まずはレポーティング業務にはどのような工程があるのかを確認しましょう。
- 各広告媒体の管理画面から、広告運用データを条件付けして抽出
例えばGoogle広告やYahoo!広告のような大手の広告媒体では、広告運用データを広告管理画面で条件設定し、抽出(表示)することができます。この画面で広告の種類や地域、期間、時間などの条件付けを行い、レポートに必要なデータだけを抽出します。
- 抽出したデータを、CSV形式などでダウンロード
この抽出したデータを、その後の加工に便利な形でダウンロードします。Googleの場合であればGoogleスプレッドシートとしてダウンロードできますが、エクスポートすることによって簡単にExcelのCSV形式に変換できます。
- CSVデータを別の集計用スプレッドシートへ転記、集計作業を行う
CSV形式に変換したデータを、使用目的に応じてほかのスプレッドシートに転記します。このようなデータの振り分け作業を行ったあとに結果を集計、レポート作成作業に入ります。
このようにひとつの広告媒体で行う集計作業はとてもシンプルですが、広告が複数の媒体にまたがると作業量が増え、作業そのものが複雑化してきます。また、レポーティング業務を提出先ごとに行うとなると、形式を変更したり、微秒に必要な情報が変わってきたりするため、作業は更に複雑になります。一般的なレポートには、どのようなものがあるのかを確認してみましょう。
社内向けレポート
広告の運用結果については、社内にレポートすることが一番多いのではないでしょうか。広告の効果やCV(商品購入や資料請求などの成果)の結果を知りたい営業向け、ROAS(広告投資の回収率)に関心のある経営陣向け、広告運用に影響されるKPI(業績評価指標)を設定している各部署へのモニタリングレポートなどです。事業に大きな影響を与える広告運用の結果は、社内で非常に重要視されているデータです。
他システムとのデータ連携
営業が展開するキャンペーンにおいて、広告運用がどの程度貢献したのか確認することは重要ですし、広告レポートを営業活動に役立てる必要性も高いです。そのため、SFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)などとの連携用にも広告運用データを準備しなくてはなりません。
顧客への広告運用レポート
インターネット広告代理店などの場合であれば、顧客への広告運用結果のレポートが必要になります。顧客ごとにパフォーマンスや進捗状況を逐次報告しなければなりませんし、顧客の要望に応じたフォーマットでのレポートを作成しなければならないことも多いです。顧客や運用媒体が増えるほどレポーティング業務の負担は倍増していきます。
このように、広告媒体の数が多い、報告するフォーマットに違いがある、確認したい項目・軸に合わせてデータ抽出をしなければならない、などの理由によりレポーティング業務は複雑なものとなりますが、ほかにも以下のような運用上の問題で作業が困難になる場合もあります。
人材不足
一般的には売り上げに直接影響を与える営業やWeb管理の業務に人が割かれる傾向にあるので、社内にレポーティング業務に関われる人材が少なくなりがちです。
レポーティング業務が属人化されている
人材不足の結果として、レポーティングに関わる作業を特定の社員のみが担うようになると業務の属人化が進み、ほかの人が手伝えなかったり引き継ぎができなかったりする状態になりがちです。このような場合には月末や繁忙期のレポーティング業務が多忙となり、結果としてレポート提出の遅れにつながります。
作業内容が整理されていない
レポーティング業務の人材不足や属人化は、慢性的な作業時間の不足を生み出します。それによってレポーティング作業の多くが標準化されず、ワークフローの整理もできない状態に陥ります。このように人材不足と属人化、ワークフローの未整理がレポーティング業務を、より困難なものにしてしまうのです。
複雑化するレポーティング作業の運用方法とは?
では、このように複雑化するレポーティング業務を、実際にはどのように運用すればよいのでしょうか。その手法と注意点を説明します。
1 人材の確保
月末や繁忙期のレポーティング時に対応できるように、担当者を増やすか新たに人材を採用します。ただしこの方法は、人件費が増えてしまうことがデメリットかもしれません。実際には、従来の広告運用担当者が残業などで対応することも多いでしょう。しかし残業では、その場をしのぐことができたとしても根本的な解決には至りません。むしろ労働環境の悪化を招きます。事業が拡大し残業が慢性化すると、従業員の疲弊を招き、人材の流出にもつながりかねません。
2 外部に委託
月末や繁忙期には外部企業に作業を委託する「外注」も、複雑化に対応する手段のひとつです。ただし、こちらは「仕様をまとめる」「業務プロセスの定義」「納品スケジュールの管理」など通常の作業とは違った手間がかかります。また、業務が煩雑で仕様や業務プロセスの構築ができない場合、外注自体が困難になります。
外注が増えればその分、外注費というコストが増える点にも注意が必要です。さらに、社内にノウハウが蓄積されなくなるリスク、情報流出のリスクも生じます。
3 ツールの活用
ツールの導入・活用も、作業の複雑化に対する対処法のひとつです。広告運用のレポーティング業務の負担を軽減するツールはリリースされていますが、ツールによっては対応していない広告媒体があることや、他システム(SFAやMA)との連携が難しい場合もあって、結果として効率化につながらないこともあり得ます。また、自社用や顧客用にレポートをカスタマイズするのにも限界があるので、あくまで汎用的なツールであることを覚えておきましょう。
4 作業の自動化
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用し、定型作業を自動化してしまう方法です。前出のような汎用的なツールを使うのではなく、社内で実際に行っている作業をそのまま自動化するのがRPAの特徴です。RPAであれば自動化したい部分から優先的に進めることができ、レポートのカスタマイズなども比較的容易です。
次章では、このRPAのメリットについて詳しく説明していきます。
RPAによる自動化のメリット
RPAによる自動化には、以下のようなメリットがあります。
作業効率の平準化
RPAには、人間が作業する時に発生する「ムラ」のようなものがありませんし、勤務時間の管理や休憩も不要です。人の手で定型作業を行う場合、「業務量過多により焦りが出る」「疲労がたまる」などの状態になるとどうしても効率が落ちてしまいます。RPAであれば、繁忙期でもデータの量にほぼ関係なく作業を進められ、作業効率の平準化が可能です。
24時間稼働可能
原則として、一度プログラムを実行すれば、24時間365日、停止することなく稼働します。
コスト削減
RPAの導入には一定の費用(投資)がかかりますが、残業代の削減、効率的な人員配置による人件費の削減、ミスによる手戻り工数の削減など、投資以上の効果が見込める可能性があります。
カスタマイズしたフォーマットにも対応可能
汎用的なツールと違い、RPAなら異なったレポートのフォーマットにも対応可能です。例えば、複数のデータを統合して違ったフォーマットに転記する、といった場面においても、一度フォーマットを設定してしまえば、自動的、かつ正確にデータを転記していきます。
人材の最適配置が可能
RPAに任せる定型的な仕事と、人間にしかできない仕事を分けることが可能になるので、人間は創造的な作業に注力することができます。今まで単純作業に従事していた人材なども、ほかの作業や他部署で活用することができ、人材の最適配置にも貢献します。
人によるチェックの省力化
人の手でレポーティングを行う場合、基本的にはすべての項目について入力・転記ミスの目視チェックが必要です。しかし、RPAは一度プログラムされた作業を正確に繰り返すので、完成したレポートを最終確認すればすみます。またこのような正確性は、ミスによる手戻り(修正)作業の解消にも役立ちます。
ROAS計測にも最適
経営陣への報告やKPIの達成度などに求められるROASの計測も簡単に行えます。RPAであればデータ量に関係なくスピーディーにレポートを作成できるので、迅速な経営判断に役立ちます。
詳しくは、「ROASを計測する際の課題と自動化する方法」をご覧ください。
広告レポート以外の定型業務にも活用できる
今回は広告のレポーティング業務に関する自動化についてご紹介していますが、RPAはそれ以外の定型業務や反復作業の自動化にも効果を発揮します。他部署に展開すれば、会社全体の効率化に貢献できるでしょう。スモールスタートで始め、順次適用範囲を拡大できるのもRPAの強みです。
※広告レポートだけでなく、マーケティングにおけるデータ収集・分析についてもRPAによる自動化が可能です。詳しくは「散在するデータはRPAで自動処理 データドリブンマーケティングを実現する!」をご覧ください。
単純作業や反復作業は自動化で負担を軽減
それぞれがシンプルな作業であっても、レポートの数が重なったり種類が多くなったりすれば、結果として大きな負荷になります。また、単純な作業の繰り返しでは、モチベーションの低下やチームメンバーの疲弊も生じてしまいがちです。単純作業や反復作業は極力自動化し、人間がクリエイティブな仕事に専念することで、社員の生産性向上も実現できるのではないでしょうか。自社の競争力を高めるためにもRPAをうまく活用していきましょう。
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