働き方改革やDXの推進の一環として、RPAの導入を進める企業はますます増えてきています。しかし、AIなどの新しい技術が日々台頭する中で、「RPAはもはや時代遅れ?」という意見も一部で聞かれることがあります。
今回の記事では、「RPAはもうオワコンなのか」「AI時代におけるこれからのRPAの在り方」について詳しく解説していきます。
【結論】今までの単純作業だけをこなすRPAは時代遅れになる
RPAとは、データ入力や情報収集などの単純作業を人間の代わりにロボットが行うテクノロジーです。
RPAの市場は年々拡大しており、年商が50億以上の規模が大きい企業ではRPAの導入率がほぼ半分になるなどRPAを導入する会社は確実に増加しています。
RPA市場の広がりを見れば、RPAはまだオワコンとは言えないのかもしれません。
しかしここ数年のコロナ禍やAI技術の凄まじい発展により、従来の単純作業だけを行うRPAはもはや時代遅れだと言われることも少なくありません。
これからは、AIとRPAを組み合わせることで単純作業よりもより高度な作業を行えるようになったRPA、すなわちインテリジェントオートメーション(IA)の技術が注目されるようになってきています。
AI時代の新たなRPA「インテリジェントオートメーション」とは
インテリジェントオートメーション(IA)とは、AIとRPAのテクノロジーを組み合わせて、ビジネスプロセスを自動化するアプローチです。これにより単純作業の自動化だけでなく、複雑なタスクが絡んだ作業の自動化も可能になることが期待されています。
従来のRPAでは単純作業を自動化して効率を上げると言っても、自動化できるのはビジネスプロセスの中の一部分(例えばデータ入力や書類作成、情報収集など)であり、包括的にビジネスそのものを自動化して効率化を図るには難しい問題がありました。
しかしIAは、AIが持つ学習能力により、データの高度な分析やそれをもとにした将来的な予測が可能となっています。
その結果ビジネス全体の意思決定をサポートできるため、会社全体の効率化の底上げが可能です。
インテリジェントオートメーションでなにができる?
それではインテリジェントオートメーション(IA)を活用すれば具体的にどんなことが出来るようになるのでしょうか?具体例をいくつか挙げて説明します。
顧客対応の自動化
IAの活用で、適切な応答ができる高度なチャットボットを導入できます。人間のオペレーターと違い、AIを搭載したチャットボットは24時間365日対応が可能で多言語対応もできるため、顧客満足度の向上に繋がります。
データ入力の自動化
AI-OCR(AIを用いて紙の文字などを読み取る機能)とRPAを組み合わせて、データ入力を自動化することができます。例えば製造業では、AI-OCRで紙の伝票などのデータを読み取り、その読み取ったデータをRPAで自動入力することで、データ入力のミスを減らし業務効率を向上させることができます。
生産計画の立案
機械学習やデータ分析などの技術を活用して、IAで意思決定を支援することもできます。例えば、製造業では、過去のデータから予測モデルを構築して、生産計画の立案をサポートできます。
複雑な保険料の計算の自動化
IAを活用することで、保険業界では手作業で行っていた保険料率の計算や保険料の支払いを自動化し、請求や査定などの事務処理を簡素化しています。
参考:
https://www.ibm.com/jp-ja/topics/intelligent-automation
インテリジェントオートメーションの活用事例
活用事例1:インテリジェントオートメーションが新型コロナワクチンの生産に貢献
新型コロナワクチンを製造しているファイザー社では、IAを活用することで新型コロナワクチンの迅速な提供を実現することができました。
具体的にはIAを使うことで、
- 臨床試験のデータ処理の時間を最大88%短縮
- 手作業で製品表示の検証作業を行っており大きな負担になっていたところを自動化
- コロナワクチン関連の症例の報告書の処理を効率化
などの成果を実現しました。
これによってファイザーは年間500,000時間を節約し、これらの時間でより薬の開発などの本来の業務に注力できるようになりました。
活用事例2:AI OCR × RPA のインテリジェントオートメーションで申請書のデータ入力を自動化
AI OCRとはOCR(紙の書類やPDF、画像データの文字を読み取ってデジタルデータに変換する仕組み)とAIを組み合わせた技術です。従来のOCRでは手書きの文字は読み取れないという欠点がありましたが、AIにおける機械学習やディープラーニングの技術と組み合わせることで、AI OCRでは手書きの文字を読み取ることが可能になりました。
東京都港区ではこのAI OCRとRPAを掛け合わせることで、コミュニティバスの無料乗車券の申請業務において、利用者から提出された手書きの申請書を読み取り、システムに入力する一連の作業を自動化しています。港区はこの自動化で、年間900時間程度の業務量削減が見込まれているとしています。
参考:https://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/kuse/koho/houdouhappyou/documents/20180831-11ai.pdf
活用事例3:インテリジェントオートメーションが自動車の生産を効率化
IAの活用により、自動車メーカーは需要の変動に合わせた生産計画を立てて、エラーを減らしつつ作業効率も上げることができます。
またロボットとの組み合わせで、手作業を減らし品質を向上させ、より良い製品を低コストで提供することも可能です。
例えば、Volkswagen社は「協働ロボット」を用いてエンジンの組み立ての作業スピードの向上、精度の確保、従業員の負担軽減を実現しています。
参考:
https://www.ibm.com/jp-ja/topics/intelligent-automation
インテリジェントオートメーションのこれから
AI技術が発展を遂げる中、それに伴ってIAもどんどん発展していくことになるでしょう。しかし以下のような課題も指摘されています。
既存システムとの連携
IAを活用し社内全体の業務を効率化するには、社内ですでに導入されている既存のシステムとの連携が非常に重要になってきます。
しかしこれには高度な専門知識と多くの時間が必要になってきます。多大なリソースを投入するだけの価値があるのか、十分な検討が必要です。
データの品質
IAが真価を発揮するには十分な学習をするための高品質なデータが必要です。不完全かつ不正確なデータしか用意できない場合は、IAを活用することは難しいでしょう。
セキュリティ
IAに限った話ではありませんが、新たな技術を導入することで思わぬセキュリティリスクを招く危険性があります。導入するIAのセキュリティ対策は万全なのか、ベンダー側に必ず確認しましょう。
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