属人化とは、とある特定の業務が個人に依存しており「その人しかこの業務をできる人がいない」という状況に陥っていることを指します。
重要な業務を長年同じ人が担当し続けている、業務の手順が明文化されておらず個人の経験と勘に頼っているなどといったよくあるケースから属人化は起こりやすく、思い当たる人も多いのではないでしょうか。
しかし属人化は、担当者が退職や異動した際に業務が停滞する、ノウハウが蓄積されず業務効率が悪くなるなど様々なリスクを抱えています。
今回の記事では、属人化とは、属人化のデメリットや原因などの基本から、スペシャリストとの違い、属人化の解消方法まで徹底解説します。
目次
属人化とは
属人化とは先ほども述べたとおり、特定の業務が個人に依存しており業務の手順やノウハウが社内に蓄積されていない状態のことを指します。属人化には例えばこのようなケースがあります。
- とある営業担当者が長年にわたり特定の顧客をひとりで担当していた結果、その担当者が退職した際に顧客情報が社内に残らず消えてしまった。
- 工場内の特殊な設備の操作方法について、ベテラン作業員の長年の経験によるノウハウにのみ依存していた。マニュアルが整備されておらず、新人教育も不十分だった。そのベテラン作業員が退職した後、後任者が設備を適切に運転できず、生産ラインに支障が出た。
- 長年にわたりシステム開発を手がけてきたとあるプログラマーだけが、複雑なプログラミングコードの中身を把握していた。そのプログラマーが転職した際に他のメンバーには十分な引き継ぎがなされていなかったため、保守運用が困難になった。
スペシャリストとの違い
スペシャリストは、担当する業務がその人の専門知識や経験に大きく依存することが多いためしばしば属人化と混同されます。
しかし属人化とスペシャリストには以下のような明確な違いがあります。
スペシャリスト
- 特定の分野やスキルにおいて高度な専門知識や経験を持つ人を指す
- チームや組織において、その専門知識を活かして他のメンバーをサポートしたり、教育したりする役割を果たす
属人化
- 特定の業務やプロジェクトが、特定の個人に依存している状態を指す
- その個人がいないと業務が進まなかったり、知識やノウハウが社内に共有されていないなど、組織のリスクとして捉えられることが多い
まとめると、スペシャリストは特定の分野での専門家であり、属人化は特定の業務が特定の個人に依存してしまっている状態のことをいいます。
属人化のデメリット
業務の遅延
属人化のデメリットはいくつかありますが、なかでも深刻なのが業務の遅延です。
業務が特定の個人に依存しているため、その人の不在や退職によって進まなくなることがあります。その結果、業務の遅延が発生し組織全体に大きな悪影響を及ぼす恐れがあります。
従業員のスキルレベルの低下
属人化が進むと、他のメンバーがその業務に関する知識やスキルを習得する機会が減少します。これにより、組織全体で業務のノウハウを習得する機会が失われ従業員のスキルレベルが低下します。
過労
特定の個人に業務が集中することで、その人が過労になりやすくなります。
過労による長時間労働は近年特に問題視されており、企業のコンプライアンスにも関わる問題です。
業務の非効率化
属人化が進むと、新しいアイデアや改善策が出にくくなります。特定の個人に依存することで、多様な視点や意見が取り入れられにくくなり業務の改善が進まず非効率化に陥る恐れがあります。
なぜ属人化に陥ってしまうのか?
これまで属人化には様々なデメリットがあることを見てきました。しかしなぜ企業は属人化に陥ってしまいがちなのでしょうか?
属人化に陥ってしまった事例をあげて分かりやすく説明します。
属人化に陥ってしまった事例:とあるIT企業の場合
株式会社XXXテクノロジーは中小企業向けのITソリューションを提供する会社です。社員数は50名で、主にシステム開発とサポート業務を行っています。
XXXテクノロジーでは、特に高度な技術を持つエンジニアのAさんがいました。Aさんは、会社の中でも特に難易度の高いプロジェクトを担当しており、その専門知識とスキルは他の社員にはないものでした。
そのためAさんに多くの業務が集中し、他の社員はそのプロジェクトに関与することができませんでした。Aさんは忙しさのあまり、他の社員に知識を共有する時間がなく、ドキュメントも不十分でした。
しかし長時間労働が続いた結果Aさんは体調を崩し、長期休暇を取ることになりました。Aさんが不在の間、彼が担当していたプロジェクトは進行が止まり、クライアントからの問い合わせにも対応できない状態になりました。
結果としてプロジェクトの納期が遅れ、クライアントからの信頼を失い会社の信用問題にまで発展してしまいました。
このような結果になってしまったのは、どうしてでしょうか?
リソース不足
まず属人化に陥ってしまった要因として、会社のリソースが限られておりAさんに多くの業務が集中してしまったことが挙げられます。
専門的な知識をもつ人材を社内で育成していなかったことで、Aさんの代わりに業務を遂行できる人がいなかったのです。
コミュニケーション不足
忙しさのあまり、Aさんは他の従業員と十分なコミュニケーションが取れていませんでした。そのためプロジェクトの内容や進行度合いがAさん以外に分からず、Aさんがいなくなるとプロジェクトの進行が止まってしまったのです。
ノウハウの共有不足
プロジェクトに関するドキュメントやマニュアルも不十分だったことで、Aさん以外にノウハウを持っている人がおらずクライアントからの問い合わせにも対応できませんでした。
役割を明確化していなかった
そもそもプロジェクトを進める前に役割分担を明確にしておらず、全ての負担がAさんにのしかかってしまったのも原因です。役割分担を明確にしていれば、Aさんの負担を分担でき体調を崩すこともなかったかもしれません。
属人化を解消するには
それでは属人化を解消するには、どうすれば良いのでしょうか。分かりやすくSTEPに分けて解説します。
STEP1:属人化している業務を特定する
まずはどの業務が属人化しているのか特定することから始めましょう。特定できたら、その業務が属人化している原因はなにか分析します。
上記の事例ではAさんが請け負っているプロジェクトが属人化しており、Aさん以外に高度なスキルを持つ人がいなかったため属人化してしまっていました。
STEP2:業務整理をする
属人化している業務が特定できたら、次はその業務整理や棚卸しを実施します。
具体的には業務の工程などをリストアップし、無駄な工程や改善点などを探します。各工程ごとに優先順位付けなども実施すると、業務の役割分担がしやすくなるでしょう。
上記の事例でいうと、Aさんの行っているプロジェクトの工程をリストアップし、優先順位付けを行います。
STEP3:役割分担をする
業務整理を実施したら、次は各工程ごとにどのメンバーが業務を実施するか担当を割り振りましょう。役割を持って複数人で業務を回すことで属人化がしにくくなります。
上記の事例では、専門的で高度な知識が必要な業務はAさんが担当し、それ以外の業務を他のチームメンバーに任せることで属人化や長時間労働を防ぐことができます。
STEP4:マニュアルを作成する
次にマニュアルや手順書などのドキュメントを作成すると良いでしょう。記録を残しておくことで、新規メンバーや後任の社員が業務をスムーズに進めやすくなります。
その際は共有がしやすいGoogleドキュメントやNotionなどのクラウドサービスを使うのがオススメです。
STEP5:ツールを活用する
脱属人化にはRPAやチャットツールなどのツールを活用するのもオススメです。
RPAはパソコン上の単純作業やルーティンワークを自動化できるツールで、整理した業務の中にそういった作業があればRPAで効率化するのも良いでしょう。
RPAを導入することで人的ミスが減らせるので、業務の品質向上にも繋がります。RPAを導入するための詳しい手順は下記の記事でご紹介しています。
またslackやteamsなどのチャットツールを活用することで、社内でのコミュニケーションを円滑に進めやすくなります。Aさんの事例では属人化が進んでいってしまった原因は、コミュニケーションが不足していたこともありました。
ZoomやGoogle meetなどのWeb会議ツールの活用もコミュニケーションを促進する方法としてオススメです。毎朝定例ミーティングを開いて、リストアップした業務の進捗確認などを実施すれば属人化が起きにくくなります。
STEP6:従業員のスキルレベルを上げる
STEP1〜5と並行して実施すると良いのが、従業員のスキルレベル向上です。
社員教育にはオンライン講座や研修の受講などが一般的ですが、プロジェクトのノウハウ共有や振り返りのミーティングを実施するのも良いでしょう。
まとめ
属人化とは、特定の業務が個人に依存し、その人しか遂行できない状態を指します。
属人化のデメリットは様々で、業務の遅延や従業員のスキル低下、過労、業務の非効率化などがあります。特に業務の遅延などは企業の信用問題に発展する可能性があり、属人化は企業にとってすぐに解消するべき重大な課題といえます。
属人化を解消するには、業務整理や役割分担の明確化、マニュアル作成をはじめ、RPAなどのツールを有効に活用するのもオススメです。
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