あなたの職場では、どのくらい業務標準化が進められているでしょうか。「顧客や取引先が増え、それに伴い業務の種類や商品の生産量も増えた。」「組織の拡大に伴い、従業員によるアウトプットのばらつきが気になる。」など企業が成長していく中ででてくるのが、最適な業務手順に統一する業務標準化の課題です。業務標準化をすることで、生産性や業務効率の向上、働きやすい環境づくりにつながり、企業の収益向上や従業員のモチベーションアップに貢献します。
本記事では、業務標準化とはどのようなものか、業務標準化を行ったほうがいい理由や行うことによるメリット・デメリット、具体的に実施する場合の方法や定着のためのポイントについて解説していきます。
目次
業務標準化とは
一般的に、標準化とは「作り方や規格、評価方法などを統一し、認識を共有すること」であり、業務標準化とは、業務のタスクやフローについて、「職場のメンバー誰もがいつでも同じアウトプットの品質で、同じ流れで作業できるように業務を最適に回せる状態を設定し、そのルールに沿った業務を実施すること」を指します。
業務の標準化が必要な理由
業務標準化を行うと、仕事の進め方や判断基準が会社のルールとして統一され、作業者ごとの手順にばらつきがなくなるため、「特定の従業員しかできない業務がある」「作業者によって仕事の成果にばらつきが出る」といった悩みが解消されます。
また、業務標準化ができると、誰が業務を遂行しても同じ手順で成果物を生産できるため、品質が安定します。そのため、従業員みんなで標準的なやり方を共有し、もしより良いやり方があれば提案する職場風土ができれば、さらなる業務効率化や生産性向上につながります。
作業者により能力や知識、ノウハウが異なるため
会社の組織では、複数の人が同時に業務をおこなうため、人によって能力や得意・不得意なことが当たり前です。また、複雑な業務をおこなう組織ほど、分業化する傾向になります。分業化が進めば、各従業員に蓄積される知識や能力にもばらつきがでるでしょう。
そのため、従業員による業務品質のばらつきや無駄のある手順を改善し、均一化するためにはなんらかの工夫が必要です。
人事異動や休職に対応するため
ある業務において、担当者がその仕事の詳しい手順やノウハウ、進捗状況などを抱え込んで他の従業員に知らせず、一人で推進するような状態となってしまうと、その従業員が不在の場合に業務が滞り、誰も対応出来なくなってしまいます。
もし万が一、その担当者が退職してしまったり、休職や長期休暇を取得する可能性はもちろん、キャリアアップために異動を願い出た場合の対応も標準化されていない業務では、手順やノウハウ、進捗状況を共有する体制が整っていないため、サポートや引き継ぎがスムーズにいかない場合があります。
管理者が業務の状況を把握するため
期日のある業務では、完了までにたえず進捗管理をしておくことが重要です。しかし、同じ作業でも従業員によって進め方に違いがあると、業務全体の中でその作業がどのプロセスであるのかや、順調に進んでいるのかどうかの判断が難しくなってしまいます。
もし、業務が遅れていて他の人がサポートに入る必要がある場合、その判断が遅れる、業務の引継ぎミスや対応漏れが発生するといったミスを防ぐことができます。
業務標準化のメリット
業務の属人化や作業量の偏りが解消される
ある業務を特定の従業員しかできないという状態を業務の属人化といいます。属人化している業務が多くあると、必然的にその従業員に負担が集中します。また、対応できる人が限られた状況だと、業務がブラックボックス化してしまい、生産性が落ちたりトラブルへの対応が遅れたりといった観点でもネガティブな影響が予測されます。
業務の標準化をすることで、属人化による負担やリスクを分散することができます。
成果目標が明確になり、人事評価がしやすくなる
業務標準化ができていないと、作業成果の見える化もできていないことが多いでしょう。そのため、業務標準化をすることで、作業の内容や結果、いつまでにどのような成果を出せばよいのか明確になり、成果を得るためにどれだけの時間がかかったのかや成果の質を客観的な指標で比較することができます。
このことは、評価される従業員としても納得感のある公正な評価を受けることにつながり、従業員のモチベーションを維持することにも役立つでしょう。
社内のナレッジが蓄積できる
業務標準化をすることで業務手順やマニュアルの整備が必要になります。それらを共有することで、会社としてはナレッジの蓄積ができるようになり、従業員は、該当業務の効率化が実現でき、より重要な業務へと時間が使えるようになるでしょう。
業務の部署間連携やアウトソーシングがしやすくなる
業務のルールやフローが明確になれば、誰がいつどんな業務を行っているのかといった業務状況の把握がしやすくなります。例えば、複雑な業務でも進捗を見える化することで部署間連携や業務自体のアウトソーシングする場合の引き継ぎがスムーズになりますし、もし万が一トラブルが発生した場合も即座に対応することができます。
より創造的な業務に時間を費やせる
業務標準化により今までよりも業務にかける時間が短縮され、空いた時間を創造的な業務に費やせるようになるのも業務標準化のメリットです。
特に現代は、VUCAの時代と言われ、社会の先行きが不透明で将来の予測が困難な時代だと言われています。そのため、既存の業務や事業を遂行するだけでなく、会社として新しい価値を生み出すためにも従業員が新たな仕事に従事する余地が生まれるのは非常に有益なことだと言えるでしょう。
業務標準化のデメリット
業務標準化に向いていない業務もある
高度な専門性を有する業務は、標準化に向いていない場合があります。
専門的な知識・スキルが必要で難易度が高い作業は、誰もができるようにするまで標準化するのが難しいためです。また、標準化を検討している業務の影響範囲が局所的であったり、業務内容が変化するスピードが早かったりする作業にも適していません。
そのため、優先的に業務標準化すべき内容の見極めも業務標準化を行う上で重要なポイントとなります。
従業員のモチベーション低下につながる場合がある
業務標準化を行い、マニュアル化や業務フローの統一によって業務の均一化や効率化が期待されます。しかし、業務がルーティン化してマンネリ状態になって仕事へのモチベーションが下がることも心配されます。その場合は、より創造的な業務へと意識が向くような環境づくりが大切となるでしょう。
業務標準化の具体的なやり方
ここでは、業務標準化を進めるための具体的なやり方をご紹介します。
業務標準化とは、簡単に言うと「ある業務の手順を決め、職場内で共有すること」ですから、準備段階として現状把握と業務の洗い出しを行い、その後標準的な業務手順を決定し、職場内で共有するというのが流れとなってきます。さらに、その体制を維持していくためには、運用と改善も大切な工程です。
では、それぞれの具体的なやり方を見ていきましょう。
1.現状把握と業務洗い出し
最初のステップは、業務の現状把握と洗い出しです。部署内で標準化したい業務について、その目的や社内での位置づけ、他部署との関係性、顧客や取引先への影響など、業務を取り巻く全体像を把握します。そして、業務の流れや手順、顧客や他部署に提供する成果物などを具体的に洗い出します。
このステップでのポイントは、標準的な手順や成果の品質を検討するために必要となる業務にまつわるすべての事柄を洗い出し、「見える化」することです。
業務マニュアルや手順書、チェックリスト、業務フロー図などがあれば、それらを活用しながら、洗い出しを行いましょう。また、業務内容だけではなく、業務品質のばらつきや工程に無理がある部分など、今見えている課題や問題意識、今後の不安材料なども洗い出しましょう。
2.標準化すべき業務の優先順位付け
最終的には、標準化できる業務はすべて標準化することが理想ですが、通常の業務を行いながら標準化を行うには、優先順位をつけて取り組むのが現実的です。
現状把握ができたら、次のような材料から業務の優先順位付けを行っていきましょう。
- 業務の所要時間や担当者数
- 組織の目標や達成率、担当者の実績
- 顧客リスト、取引先リスト
- 取扱商品やサービス一覧
- 関係省庁や企業への報告書などの提出物
その中でも、基幹となる業務や組織の目標とかかわり今後周辺業務が増えていく業務、既に課題が見えている業務から優先的に標準化を進めると良いでしょう。特定の人しかできないもの、担当者によって品質のばらつきが発生している状態になっているもの、納期が遅れがちで工程に無理が発生しているものは、優先的に標準化すべき業務と言えます。
3.業務フロー作成
いよいよ、業務の標準的なフローを作成するステップです。
標準化の優先度が高い業務について、業務の工数や頻度、作業の順番、必要な担当者数、難易度、成果物、成果物の求められる質について数値で見えるようにしていきます。
数値で表しにくい要素も可能な限り数値で表し、誰から見てもわかりやすく表現することがポイントです。
難易度であれば、「1か月の期日でミスなく1人で完了できるレベル」、成果の質であれば、「報告書を業務完了から3営業日で提出する」といった形になります。
4.マニュアル作成
ここは、標準化した手順を職場のメンバーで共有するステップになります。定めた手順や数値化した要素も漏らさずに伝えるため、きちんとした構成のマニュアルを作成することが求められます。そして、業務にかかわる人がすぐに確認することができ、今後も作業手順の見直しを続けていける体制を整えましょう。
すでにマニュアルがある場合は、それをベースに新たな標準化した手順や数値化した要素を加えていきます。
もし、マニュアルがない場合は、概要、目的や背景、業務工程の全体像を示したフローチャート、具体的な手順、注意事項、トラブル発生時の対処についてといった項目を入れて作成すると良いでしょう。
5.運用と改善
最後に、作成したマニュアルの運用方法を決めていきます。
新しく業務にかかわるメンバー(新入社員や転入者)へは、いつ・誰が・どのように共有するのかを明確にしておきましょう。
さらに、標準化した業務の効果をより上げるために、マニュアルの更新についてもいつ・誰が・どのように行うのか、メンバーで改善点を検討する時期や方法なども予め決めておくと良いでしょう。
業務標準化ツール5選
Stock(株式会社Stock)
非IT企業などITリテラシーの低いメンバーでも使えるシンプルな情報共有ツール。直感的な方法で管理ができ、誰でも簡単にマニュアル共有といった「情報ストック」と蓄積された情報へのアクセス、「タスク管理」による成果の見える化といったことが行えるため、ITツールに抵抗がある場合でも比較的とりいれやすいです。
Dojoウェブマニュアル(株式会社テンダ)
スマホで簡単にマニュアル作成、デジタル化・ペーパーレス化できるプラットフォーム。作業を実際に行いながら、その様子をスマートフォンで撮影し、音声認識機能で説明文も自動入力できるため、主に現場での作業マニュアルや機械操作の手順書などの作成・管理に適しています。
Questetra BPM Suite(株式会社クエステトラ)
クラウド型の業務プロセス管理システム。クラウドサービスとして提供されているため、インターネットに繋がってさえいればどこにいても簡単にオフィスと同じシステムにアクセスして作業をすることができます。また、作成済みのテンプレートをインポートして活用することが可能で、マニュアル作成を一からつくる手間を省略することができます。
Ranabase(株式会社ユニリタ)
業務改善コンサルティングのノウハウから生まれたツール。仕事の流れを簡単に「見える化」をすることで、業務改善を促すことができます。また、業務上の課題や疑問に気づきやすく、継続的なPDCAが回せる業務改善のツールとしての機能も充実しています。
Qast(any株式会社)
マニュアルを作成・共有するだけでなく、個人の持つ知識やノウハウを一元化して、マニュアルの運用や改善のしやすさにも力を入れたい場合は、社内情報を一元管理できるナレッジ経営クラウドQast。ナレッジ経営とは、個人が持つ知識やノウハウを組織のナレッジとして一箇所に蓄積し、企業全体の生産性を高める経営手法で情報共有の促進によって業務効率アップや生産性向上につながります。
RPAを使う場合の業務標準化の進め方
RPAとはなにか
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、簡単に言うと「業務プロセスを自動化するロボット」という意味です。ロボットというと人型ロボットなどを思い浮かべる人もいるかと思いますが、RPAはPCやクラウド上で動くソフトウェアです。
RPAを導入することで業務を自動化して、数人分の仕事をロボットが行うため、少ない労働力で生産性を維持することが可能になります。また、従業員の普段の業務内容を見直す機会になり、反復作業を減らすことができるため、より創造的な業務に時間を費やすことができ、生産性の向上につながるといった面でも注目を集めています。
AUTOROとはなにか
Web Auto Robot「AUTORO」は、安価・手軽に導入可能なクラウド型のRPAです。
WEB上に自分自身でロボットを作り、画面上で実際の操作を記録させるだけで日々の定型業務をロボットが実施してくれるため、誰でもかんたんに業務効率化のシステムを構築することができます。
業務標準化に対するAUTOROの活用法
RPAは、導入しただけで業務を自動化するような「魔法のツール」ではないため、まずは業務そのものを標準化することが必要となります。
しかし、Web Auto Robot「AUTORO」では、作業者個人がルールや手順をロボットに覚えこませることで業務を自動化することができます。そのため、ある人しか作業ができていなかった繰り返しの業務や作業者によって業務効率に差があるような複雑な業務に対して、マニュアルとして明文化する前にシステム化することも可能になります。
導入事例
株式会社フルスピード様は、広告レポート作成・社内資料作成の自動化を実現しました。
日々のルーティンワークは抜け漏れがないように実行し、広告運用の質を担保することがWeb Auto Robot「AUTORO」導入前の課題でした。業務を自動化したことで小さな作業は決まった時間に漏れなく必ず確実に実施してくれるため、運用担当者は創造的な業務に時間を費やすことができるようになりました。
導入事例:https://autoro.io/case/fullspeed/
業務標準化の先にあるのは、生産性の向上
業務標準化とは、誰が、いつ行っても業務の品質が均一に保たれている状態になっており、誰でも業務を回せる状態になっていることです。業務標準化の体制が整うと、業務の属人化や業務品質のばらつきの防止、作業効率の改善といったことをすることができます。
業務標準化を進めるステップとしては、業務の手順や課題を洗い出し、どの業務から標準化していくか優先順位を決めます。そして優先度の高いものから標準的な手順を策定し、マニュアルに記載して職場のメンバーで共有する、という流れになります。
業務標準化をすることで業務プロセスが明確になり、単純化された作業をRPAに任せることで従業員の空いた作業時間をより生産性向上のために費やすことができます。
自社の課題を業務標準化や業務自動化で解決していきたい企業にとって、少しでも本記事が参考になればと思います。
以下ドキュサインのブログも参考になりますので、ぜひご覧ください!
参考:電子署名の基礎知識から業務効率化のアイデア、DXトレンドまで幅広いトピックを紹介|ドキュサイン公式ブログ
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製品の特徴や導入のメリット、ご活用事例などをご紹介しています。