AI台頭でなくなる仕事・なくならない仕事|将来人間が共存するための課題と対策、必要なスキルとは

AIの台頭は、私たちの仕事にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、AI普及の現状から、 AIによってなくなる仕事、なくならない仕事、そしてAIと共存するために必要なスキルや対策を、具体例を交えながら詳しく解説します。

AI(人工知能)とは

AI(人工知能)とは、簡単に言うとコンピューターに人間のような知能を持たせる技術のことです。AIには様々な種類があり、得意分野も異なります。例えば、

チェスや将棋のように、ルールが決まっているゲームで人間に勝つことができる問題解決AI​や、大量のデータから学習して、未来を予測したり、データを分類したりすることができる学習AI​、人間と自然な会話をすることができる対話型AIなどです。

人工知能技術は、応用範囲の広さから多岐にわたる分野で利用される人工知能技術ですが、その基盤は機械学習やディープラーニングなどの方法論です。

ここからはAIに関連する重要なキーワードについて簡単に確認していきます。

生成AIとは

生成AIとは、新しいコンテンツを生成することができるAIのことを指します。例えば、以下のようなコンテンツを生成することができます。

  • テキスト(小説、詩、記事、スクリプトなど)
  • 画像、イラストなど
  • 楽曲、効果音など
  • 動画(アニメーション、映画など)

生成AIは、深層学習などの技術を用いて学習し、新しいコンテンツを自動で生成します。生成AIは、創造的な分野での活用が期待されています。 

自然言語処理とは

自然言語処理(NLP)は、人間の言語を理解し生成するAIの一分野です。この技術を用いて、チャットボットや翻訳システム、情報抽出ツールなどが開発され、私たちの日常生活に深く浸透しています。

機械学習・ディープラーニングとは

機械学習​とは、コンピューターに大量のデータを読み込ませて、そこから法則やパターンを見つけ出す技術のことです。見つけた法則を使って、未来を予測したり、データを分類したりできます。

ディープラーニング​は、機械学習の中でも特に強力な技術です。人間の脳を真似した階層状の仕組みを使って、より複雑な法則やパターンを見つけ出すことができます。 

ディープラーニングは特に画像や音声認識の領域で顕著な成果を上げており、自動運転車の開発や医療診断の精度向上に寄与しています。

画像・音声認識とは

AIの進歩により、特に画像と音声の認識技術がビジネスと医療の分野で急速に発展しています。画像認識技術を使用すると、例えば顔認証システムのセキュリティが強化され、医療画像診断ではこれまで見過ごされがちだった疾患の早期発見が可能になります。これらの技術は、膨大なデータベースと照合し、高い精度を実現しています。

音声認識技術は、スマートスピーカーや音声対話システムといった日常製品に積極的に採用されており、ユーザーの生活をより便利でスマートなものに変えています。例えば、音声操作で家電をコントロールしたり、音声コマンドで情報を検索したりできます。

AI普及の現状

AI技術は近年急速に発展し、様々な分野で活用が進んでいます。しかし、その普及状況には地域や産業によって大きな差があります。

世界のAI導入率は年々上昇している

企業におけるAI導入率は増加傾向にあります。IBMによる調査(2022)によると、企業のAI導入率は前年2021年から4ポイント増の35%にまで達しています。加えて42%は導入を検討しています。

なお、企業規模別で見ると、大企業での導入率は中小企業の2倍であるのに対し、中小企業ではAIの導入を検討している/全く導入予定がないという回答が高い傾向にあります。

世界のAI導入率はなぜ増加しているのか

企業でのAI導入率は着々と増加しています。その背景には以下のような要因が挙げられます。

AI 導入の推進力となっている要因のトップ 10

  • 43%:AI の進歩により、AI がより身近になったこと
  • 42%:コスト削減と主要プロセスの自動化の必要性
  • 37%:既製の標準的なビジネス・アプリケーションに AI が組み込まれることが多くなったこと
  • 31%:競合のプレッシャー
  • 31%:新型コロナウイルス感染症パンデミックによる需要
  • 25%:消費者からのプレッシャー
  • 23%:リーダーシップからの指示
  • 22%:企業文化
  • 22%:人材またはスキル不足
  • 20%:環境面のプレッシャー
世界のAI導入状況 2022 年 (IBM Global AI Adoption Index 2022)

これらの要因から、AIは多くの企業にとって身近で、現実的な選択肢として認識され始めていることがわかります。特に、コスト削減と業務効率化は、多くの企業にとって喫緊の課題であり、AIがその解決策として期待されていることがうかがえます。

さらに、AI導入率の上昇にはAIを導入するメリットも関係しています。同調査では以下のようなメリットが挙げられています。

AI を使用して IT、ビジネス、またはネットワーク・プロセスを自動化することで組織が得られるメリットはどのようなものですか?

  • 54%:コストの削減と効率化
  • 53%:IT またはネットワーク・パフォーマンスの向上
  • 48%:カスタマー・エクスペリエンスの改善
  • 46%:より高価値の作業に従事するための、従業員の解放
  • 41%:新しいサービスのより迅速なデリバリーとスケーリング
  • 39%:人材およびスキル不足の軽減
  • 33%:障害の削減
  • 28%:データセンターの排出量削減
世界のAI導入状況 2022 年 (IBM Global AI Adoption Index 2022)

AI導入によって、企業はコスト削減や業務効率化だけでなく、顧客満足度の向上や従業員の働きがい向上といった様々なメリットを享受できていることがわかります。

AI導入の妨げになっている要因とは

世界的にAIの導入率が高まっている一方で、特に中小企業や、日本企業では導入に踏み込めていない現状があります。その背景には以下のような要因が挙げられます。

AIに関する限定的なスキル、専門知識、ナレッジ

AI導入には、AI技術そのものへの理解だけでなく、データ分析、モデル構築、システム統合など、幅広い専門知識とスキルが必要です。しかし、これらのスキルを持つ人材は不足しており、特に中小企業では人材獲得が難しい状況です。

AIの導入費用・利用料金が高すぎる

AIシステムの構築には、高性能なコンピューターやソフトウェア、そして専門性の高い人材が必要となるため、導入費用が高額になる傾向があります。企業にとってAI導入に関わる初期投資やランニングコストは大きな負担となります。

AIモデル開発のツール/プラットフォームの不足

AIモデル開発には、高度なツールやプラットフォームが必要となります。しかし、これらのツールは高価であったり、専門知識が必要であったりすることが多く、導入のハードルとなっています。

AIプロジェクトの複雑さ・統合や拡張の難しさ

AIプロジェクトは、既存のシステムとの統合や、将来的な拡張などを考慮する必要があるため、複雑になりがちです。プロジェクトの複雑さは、導入期間の長期化やコスト増加、そして失敗のリスクを高める要因となります。

AIに関するデータの複雑さ

AIの学習には、大量のデータが必要となります。しかし、データの質や形式が適切でなければ、AIの精度が低下したり、誤った結果を導き出したりする可能性があります。データの収集、整理、加工、そして品質管理は、AI導入における大きな課題です。

AI導入のためのクラウドやデータインフラクチャーが整っていない

AIプロジェクトを効率的に実行するためには、クラウドコンピューティングやデータストレージなどのインフラストラクチャが不可欠です。しかし、特に中小企業ではこれらのインフラストラクチャが整っていない場合が多く、AI導入の妨げとなっています。

参考:世界のAI導入状況 2022 年 (IBM Global AI Adoption Index 2022)

日本のAI導入率は低い

世界中でAIが急速に発展し、その存在感を強めている中、日本でのAIの導入率は依然低迷し続けています。2024年1月に公開されたNRIによる調査によると、日本、アメリカ、オーストラリアの3カ国の生成AIサービス導入率は、アメリカ・オーストラリアの7割に対し、日本は2割以下と圧倒的な低さが結果として示されています。

同調査において、日本の生成AIサービスの導入率の低さに関して、以下のような要因が挙げられています。

  • 「利用禁止のため未導入」と回答した企業の割合は、アメリカ0.9%、オーストラリア2.0%に対し、日本では従業員規模を問わずおよそ10%
  • 特に従業員数が1,000人未満の企業では、「不要のため未導入」という回答が半数近くを占めた

以上のことから、日本企業においては、先ほどの段落で挙げたAI導入を妨げる主な要因に加え、生成AIサービスの導入に対する慎重な姿勢や、そもそも生成AIサービスの必要性を感じていない企業が多く存在する傾向が、AI導入をさらに遅らせていると考えられます。

AIが人間の仕事を奪うと言われている理由

AI技術が急速に進化することにより、人々はAIに仕事を奪われることを危惧しています。ここからは、AIが人間の仕事に取って代わる可能性が指摘される理由をご紹介します。

シンギュラリティ到来の予見

シンギュラリティとは、人間の知能を超えるレベルまで人工知能(AI)が進化する時点を指す概念で、技術的特異点とも呼ばれます。多くの専門家が2045年頃にこの節目を迎えると予測しており、この時点でAIは自己学習と自己改善のサイクルを加速させ、人間の介入なしに画期的な技術やアイディアを生み出す能力を持つようになるとされています。これが現実のものとなった場合、AIが今ある人間の仕事を奪う可能性が高いと考えられています。

AIの進化は単なる自動化にとどまらない

近年、単純な自動化だけでなく、複雑で高度な問題解決能力を持つAIが登場しています。

具体的には、自然言語処理を駆使して広範囲のテキストデータから有益な情報を抽出したり、画像や音声のパターンを認識して、これまで人の手が必要とされていた分野での作業効率化を実現しています。また、AIは経済、医療、法律といった専門知識を必要とする職業にも進出し始めており、その影響は大きいと考えられます。

AIは学習によって新たなコンテンツを生成できる

AIは大量のデータを学習し、それに基づいて新しいコンテンツを生成できます。例えば、報道記事の執筆、音楽の作成、画像やビデオ編集など、クリエイティブな分野でのAIの通用性は高まっていくと考えられます。この進化は、これまで人間特有とされてきた職種にも大きな影響を与えるでしょう。

AIが労働力としての強みを発揮

AIが人間の仕事を奪うと言われている背景には、その性能が関係しています。ここからは、AIの労働力としての強みを解説します。

単純作業の自動化

AIは多量のデータを迅速に処理し、煩雑なタスクを自動化する能力を持っています。例えば、データ入力、分析、レポート作成などの時間を要する単純作業や、在庫管理、顧客応対といった業務の自動化が可能になります。

正確な作業の実現

AI技術はプログラムされた通りに処理を行うため、ヒューマンエラーを根本的に削減します。これが、作業の正確性を極めて高めることにつながります。さらに、AIは学習を通じて情報を更新し続けることで、常に最新の情報をもとに最適な判断を下すことができます。

スケールアップの容易さ

AIを導入することで、企業は業務のスケールを容易に拡大することができます。AIシステムは、追加のリソースを必要とせず、データ量や複雑性が増すにつれて性能を維持または向上させることが可能です。これにより、企業は市場の変動や成長段階に応じて柔軟に対応できます。

AI普及によりなくなる仕事とは

AIの普及により、従来の手作業で行われていた様々な職業が大きな変革を迎える可能性があります。その中でも、特にAIに代替される可能性が高いとされる職業について、特徴と具体例を詳しく見ていきましょう。

AI普及によりなくなる仕事の特徴

AIの進化により、自動化される可能性が高い仕事には、以下のような特徴があります。

定型的なタスク​

AIは、ルールに基づいて反復的な作業を行うことが得意です。データ入力、書類作成、単純な計算など、定型的なタスクはAIに置き換えられる可能性が高いです。

データ処理​

AIは、大量のデータを高速に処理し、分析することができます。データ分析、市場調査、統計処理など、データ処理を伴う仕事はAIに置き換えられる可能性があります。

予測可能性​

AIは、過去のデータからパターンを学習し、未来を予測することができます。需要予測、在庫管理、リスク評価など、予測可能性が重要な仕事はAIに置き換えられる可能性があります。

​物理的な作業​

ロボットや自動化技術の進歩により、単純な物理的な作業はAIに置き換えられる可能性があります。工場での組み立て作業、商品の運搬、清掃作業などが該当します。

AI普及によりなくなる仕事

AI普及によりなくなる可能性の高い仕事として、今回は以下の職業を取り上げます。

  • 一般事務員
  • 銀行員
  • 警備員
  • 建設作業員
  • スーパー・コンビニ店員
  • タクシー運転手
  • 電車運転士
  • 会計監査
  • 通関士
  • ライター
  • コールセンター業務
  • ホテル客室係・フロントマン
  • 工場勤務者

それぞれ確認していきましょう。

一般事務員

AIはデータ入力や書類作成などの定型業務を効率的に処理できるため、一般事務員の業務の一部は自動化される可能性があります。例えば、契約書の作成や請求書の発行など、ルーチンワークにおけるAIの活用が進むことが考えられます。

銀行員

金融業界でもAIの導入が進みつつあり、ATMやオンラインバンキングの普及により窓口業務の需要が減少しています。また、融資審査やリスク管理などの業務においても、AIがデータ解析や予測を行うことで、従来の銀行員の役割が変化する可能性があります。

警備員

AI技術を活用した監視システムやセンサー技術の進化により、警備員の業務も変化しています。監視カメラやセンサーによって異常を検知し、自動的に警報を発するシステムが導入されることで、警備員の配置や業務内容が変わる可能性があります。

建設作業員

建設業界でもAIを活用したロボットやドローンによる自動化が進んでいます。例えば、建設現場での土地の測量や運搬作業、建設機械の操作など、危険な作業や労力のかかる作業をAIが代替することで、建設作業員の業務が変化する可能性があります。

スーパー・コンビニ店員

既にセルフレジや無人店舗の導入により、スーパーやコンビニの店員の業務は変化しつつあります。さらにAIが加わることで、従来のレジや在庫管理をはじめとする業務が自動化され、店舗の無人化が進行する可能性があります。

また、以前は荷物の発送や請求書の支払いなど、幅広いサービス提供の必要性から、スーパーやコンビニの店員が完全にAIに代替されるとは考えにくいとされてきました。しかし、荷物の発送・受取用の宅配便ロッカー、請求書支払い用の自動精算機や、スマホで完結できるシステムの導入などが進んでいることから、広範囲での代替の可能性が高まっていると考えられます。

タクシー運転手

自動運転車が普及すると、運転業務がAIによって代行されることで、運転手の仕事が減少するかもしれません。ただし、まだまだ法律や技術の課題が残っていることから完全な自動運転が実現するまでには時間がかかると考えられます。

電車運転士

同様に、自動運転技術の進化により、電車運転士の仕事も減少する可能性があります。ただし、安全性や信頼性などの問題がクリアされるまでには時間がかかると予想されます。

会計監査

AIによるデータ分析技術の進化により、会計監査業務も変化しています。大量のデータを効率的に分析し、異常を検知するAIシステムが導入されることで、従来の監査業務の一部が自動化される可能性があります。

通関士

AIによる書類審査や貨物検査の技術が進化するにつれて、通関士の仕事も変化しています。AIが関税の計算や書類のチェックを行うことで、通関業務の効率化や、人的ミスや手作業による遅延回避が図られる可能性があります。

ライター

AIは大量のデータを分析し、自然な文章を生成することができるため、簡単な記事やレポートの作成はAIが行うことが可能になっています。しかし、クリエイティブな要素や感情表現など、人間の特性に関わる部分ではまだAIが完全に対応できていないため、高度な文章作成やコンテンツ開発では人間のライターが必要とされるでしょう。

コールセンター業務

AIによる自動応答システムの普及により、コールセンター業務も変化しています。AIが電話やチャットで顧客の問い合わせに応答し、簡単なトラブルシューティングや情報提供を行うことができます。しかし、複雑な問題や感情的な対応が必要な場合には、人間のオペレーターが引き続き必要とされます。

ホテル客室係・フロントマン

自動チェックイン機や清掃ロボットの導入により、ホテル客室係やフロントマンの業務も変化しています。顧客が自己チェックインを行い、清掃ロボットが客室の清掃を担当することで、従来の業務量が減少する可能性があります。

工場勤務者

自動化された生産ラインやロボットによって、工場勤務者の単純な作業や重労働がロボットに置き換えられる可能性があります。

AIが普及してもなくならない仕事/AIではなく人間に求められる仕事とは

AI技術が日常のさまざまな分野に浸透する中で、完全に取って代わることはできない職業もあります。なくならない仕事はどのような特徴を持っているのでしょうか。ここではAIの進歩に伴ってもなお重要性を保ち続ける理由を持つ仕事の特徴と具体例を見ていきましょう。

AI技術の開発には現時点では人間の力が必要

現時点では、AI技術は人間の力なしに発展し続けることは難しいと考えられます。例えば、AIのアルゴリズムを開発したり、AIを学習させるためのデータを集めたり、AIの倫理的な問題を解決したりするためには、人間の知恵と創造性が必要です。

しかし近い将来、AIが自ら学習をし、人間の介入なしで能力を高めていくことができるようになる可能性があります。詳しくは下記記事、人間と同等の能力を持つ人工知能「AGI」についての解説をご参照ください。

AGI(汎用人工知能)とは?従来のAI、ASIとの違いや社会的課題

AIが普及してもなくならない仕事/AIではなく人間に求められる仕事の特徴

AIが普及しても存続し続けると考えられる仕事には共通する特徴があります。

人間特有の能力への依存

AIが得意とする論理的思考やデータ処理とは対照的に、創造性、共感力、社会性、複雑な問題解決能力など、人間特有の能力を必要とする仕事はAIに代替されにくいと考えられます。

コミュニケーションの重要性

AIが苦手とするコミュニケーションや感情の理解が求められる仕事は、人間が担い続けます。顧客との信頼関係構築やチームワーク、リーダーシップなど、対人関係が重要な役割を果たします。

高度な専門知識や技術

専門的な知識や技術を必要とする仕事は、AIによる代替が困難です。また、医師、看護師、教師、保育士、介護職などにおいては、高度な専門性に加えて人間的な温かみが求められるため、AI時代においても重要な役割を果たすと考えられます。

倫理的判断と責任

AIは学習データに基づいて判断を下しますが、倫理的な観点からの判断はできません。AIの開発や運用において、倫理的な問題を考慮し、責任ある意思決定を行うためには、人間の力が不可欠です。

AIが普及してもなくならない仕事/AIではなく人間に求められる仕事

AIが普及してもなくならないと考えられる仕事として、今回取り上げる職業は以下の通りです。

  • データサイエンティスト
  • ITエンジニア
  • 営業職
  • カウンセラー
  • 医師・看護師
  • 教師
  • 保育士
  • 介護職

順番に解説していきます。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、AIモデルの構築やデータ分析、アルゴリズムの改善などを行います。彼らは、膨大なデータから洞察を導き出し、ビジネス上の意思決定や問題解決に役立てます。AI開発の中核を担うデータサイエンティストは、AIが普及すればするほど需要が高まると予想されます。

AIが複雑なデータを自動で処理し、予測モデルを提供する一方で、その解釈には人間の直感や専門知識が不可欠です。複雑なデータセットにおいて、AIは特定のパターンや傾向を迅速に識別できますが、そのデータが実際のビジネス環境や市場動向にどう作用するかを理解するには、データサイエンティストの専門的評価が必要です。

ITエンジニア

ITエンジニアは、ソフトウェア開発、システム保守、機能向上のための改善作業に従事しています。特にAIシステムでは、定期的なアップデートと丁寧なメンテナンスが欠かせませんが、これらの重要なタスクを担うのはITエンジニアです。

ITエンジニアの仕事は、技術を使いこなすだけでなく、その技術がビジネスや社会にどのように貢献しているかを理解し、継続的な価値を提供するものへと変化しています。

営業職

営業職では高度な対人スキルが必要不可欠で、顧客の感情を読み取り信頼関係を築くことはAIでは困難です。顧客の微妙なニーズを察知し、それに応えるためには営業スタッフの豊富な経験と感情が重要な役割を果たします。

また、AIはデータベースから情報を引き出し提示することは得意ですが、顧客の反応を適切に解釈し、各顧客に最適な提案をカスタマイズするのは人間特有の能力が必要です。

現代のビジネス環境ではAI技術を活用し効率化を図る一方、人間特有の感情的接触を通じて顧客の深層心理に対応する営業職の重要性が再認識されています

カウンセラー

カウンセラーは心理的な苦手を持つ人々を支え、彼らの心の問題や生活の困難に対してきめ細かいサポートを提供します。AI技術が発展しても、感情の機微を理解し、適切かつ具体的なアドバイスを提供する能力は依然として人間特有です。この能力はAIが真似できないカウンセラー独自の価値です。

医師・看護師

AIの診断支援ツールは、医師の診断精度を高め、効率的な治療方法の選択を可能にしています。しかし、医師や看護師の役割は、AIでは代えられない重要な側面があります。

医師や看護師は、診断や治療だけでなく、患者一人ひとりの感情に寄り添い、心の支えとなることが求められます。患者の不安や疑問に耳を傾け、信頼関係を築きながら総合的なケアを提供することは、AIでは実現できない専門スキルです。

AIの導入は医療現場に革新をもたらしますが、患者の真のニーズに応えるためには、医師や看護師の温かい手が必要です。

教師

教師は生徒の学習の指導と育成に重要な役割を果たしています。AI技術の進展により教育分野でAIを活用したソフトウェアが普及し始めました。これらのAI教育ツールは生徒ごとの学習進捗を追跡し、パーソナライズされた学習計画を提供できます。

しかし、AIが提供するデータに基づく知識やスキルの伝達は、生徒一人ひとりの個性や感情に対する理解にはまだ限界があります。生徒の社会的な成長や情緒的サポート、モチベーションの構築などで、教師の役割は非常に大きいです。

保育士

保育士は子どもたちの成長と発達を支える重要な職業です。特に、感情のサポートや社会性の育成を通じて、子どもたちの心の成長を促進します。

しかし、AI技術の発展により、保育士の業務にも変革が求められています。例えば、行動パターンの分析や健康管理のサポートが可能になります。これにより、保育士はより効果的に子どもたちの個別のニーズに対応でき、教育の質を向上させることが期待されます。

介護職

介護職員は高齢者や障がい者の日常生活を支援し、その業務は広範囲です。特に、利用者の感情に寄り添った配慮とケアは、人間にしかできない価値とされています。

また、AI技術を用いた記録管理自動化システムや、センサーやカメラを使ったモニタリングシステムなどにより、介護職員は人との関わりに集中できる時間が増え、質の高いケアが提供可能になると考えられます。

さらに介護ロボットの導入による重労働の軽減、AIによるビッグデータの解析により、利用者一人ひとりのニーズに合ったパーソナライズされたケアプランの策定などが期待できます。

AI普及により新たに生まれる仕事とは

AIに置き換わると警戒される仕事に対して、同時に新たな需要が生まれる職種に注目が集まっています。AI技術の急速な発展は新たにどのような仕事を生み出すか、特徴と具体例を見ていきましょう。

AI普及により新たに生まれる仕事の特徴

AIの普及は、新たな雇用機会を創出すると考えられます。これらの新しい仕事には、以下のような特徴があります。

​​AIとの協働​​

多くの新しい仕事は、AIツールやシステムと連携して行われます。人間はAIの能力を理解し、それを最大限に活用する方法を学ぶ必要があります。

データ中心​​

AIは大量のデータを処理して学習するため、データの収集、分析、管理に関するスキルが重要になります。

​​創造性と問題解決​​

AIは定型的なタスクを自動化できますが、創造性や複雑な問題解決能力は人間にしかできません。新しい仕事は、これらのスキルを必要とします。

​​適応性と学習能力​​

AI技術は急速に進化しているため、新しい仕事に就く人は常に学び、新しいスキルを身につける必要があります。

倫理的配慮​​

AIの開発と使用には倫理的な問題が伴います。新しい仕事には、AIを責任を持って使用するための倫理的配慮が求められます。 

AI普及により新たに生まれる仕事

今回取り上げる、AI普及により新たに生まれる仕事は以下の通りです。

  • データ探偵
  • ゲノム・ポートフォリオ・ディレクター
  • AIエンジニア
  • アノテーター
  • 散歩・会話の相手
  • 倫理的な調達(ES)責任者
  • サイバー都市アナリスト
  • 人間と機械の協働責任者
  • 人工知能(AI)事業開発責任者
  • BYO(個人所有機器活用)ITファシリテーター
  • フィットネス・コミットメント・カウンセラー
  • デジタル仕立屋
  • 財務健全性コーチ
  • 量子機械学習アナリスト
  • AI支援医療技師
  • エッジコンピューティング専門家

順番に詳しく解説していきます。

データ探偵

データ探偵とは、データの背後に隠れる不整合や異常を発見し、その原因を解明する専門職です。データの量が爆発的に増える中、データの中から価値ある情報を発見するスキルが求められると考えられます。

データ探偵の仕事は単なるデータ分析とは異なります。彼らはデータのパターンを読み解くだけでなく、その背後にある論理や矛盾を詳しく洞察し、問題の根本原因を明らかにする必要があります。

ゲノム・ポートフォリオ・ディレクター

ゲノム・ポートフォリオ・ディレクターは、AIを活用したゲノム研究に基づいた新薬の開発・販売戦略を立案・実行する専門職です。個々の患者のゲノムデータを個人の遺伝情報を分析し、病気のリスクや体質を予測。個々に最適な医療や健康管理プランを設計・提供する重要な役割を担います。遺伝子レベルでのカスタマイズされた治療は、患者一人ひとりに最適な治療方法を提供を実現します。

AIエンジニア

AIエンジニアの役割は、どのようにAI技術がビジネスや社会に役立つかを具体化することです。具体的には、人工知能モデルの設計、開発、実装を担当します。この過程で、AIエンジニアはプログラミング技術だけでなく、機械学習などの専門知識が求められます。

またこの職種では、技術的な側面だけでなく、プロジェクトの要件を理解し、それを技術的な解決策に落とし込む能力が不可欠です。

アノテーター

アノテーターは主にアノテーション業務を担います。アノテーションとは、画像やテキストなどの大量のデータにラベルを付与することです。例えば、自動運転技術の開発では、カメラが捉えた画像に「車」「歩行者」「信号」などのラベルを付けることで、AIが周囲の状況を認識できるようにしています。

アノテーション作業は、AIの学習に欠かせない教師データ(Teaching data)の作成において重要な役割を果たします。AIモデルは、アノテーションされたデータ(教師データ)をもとに学習し、パターンを認識することで、新たなデータに対して正確な予測を行うことができるようになります。つまりアノテーション作業の質がAIの性能に直結すると言っても過言ではありません。

散歩・会話の相手

AIが普及することで、AIによる自動化で余暇時間が増え、人との繋がりや心のケアの需要が高まると予想されます。そこで高齢者や一人暮らしの人々の話し相手となり、散歩に同行するなど、精神的なサポートの需要が高まると考えられます。

倫理的な調達(ES)責任者

倫理的な調達(ES)とは、環境(Environmental)や社会(Social)の側面に焦点を当てた持続可能なビジネス実践の一つです。倫理的な調達(ES)責任者の役割は、AI開発に必要なデータや資源が、人権や環境に配慮した方法で調達されているかを管理・監督することです。AIの開発や運用には、データや資源の倫理的な調達が求められるためです。

サイバー都市アナリスト

サイバー都市アナリストは、都市におけるサイバーセキュリティの脅威を分析し、対策を講じます。スマートシティの普及により、都市の運営には膨大なデータの分析が必要となります。

人間と機械の協働責任者

人間と機械の協働責任者として、ロボットやAIと効果的に共存するためには、技術理解だけでなく、人間側のマネジメントスキルも非常に重要です。この役割で求められるのは、両者がシームレスに連携し、互いの能力を最大限に活用する環境の設計と実装です。人間とAIの協働は、技術を使いこなすこと以上に、それを統括する人間の資質やスキルに大きく依存する分野です。

人工知能(AI)事業開発責任者

人工知能事業開発責任者は、AI技術の急速な進展の中で、商業化を推進し、新たな市場機会を創出する役割を担っています。AI技術を活用した新規事業の開発が活発化した際に、AI技術を活用した新規事業の企画・開発・推進をリードします。

BYO(個人所有機器活用)ITファシリテーター

BYO(Bring Your Own Device/個人所有機器活用)ポリシーの導入により、従業員は自分のスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの個人所有のデバイスを職場で使用できるようになります。BYO ITファシリテーターは、これら個人デバイスの使用を適切に管理し、企業の生産性向上を目指すとともに、高度なセキュリティ維持を保証する責任を担います。

フィットネス・コミットメント・カウンセラー

フィットネスコミットメントカウンセラーは、AIを活用して個々の体質や生活習慣に合わせたカスタマイズされた、モチベーションの維持方法や健康的な食生活の選択肢について具体的な指導を行い、長期的な健康とウェルネスを実現するためのパートナーとなります。

デジタル仕立屋

デジタル仕立屋は、AI技術を活用して、個々の体型や好みにぴったりフィットするサイズやデザインの、カスタムメイドの衣服を作成します。3Dスキャン技術やAIによるデザイン生成技術の進歩により、個人の体型に合わせたオーダーメイドの服が手軽に作れるようになると考えられます。

財務健全性コーチ

財務健全性コーチは、個人及び企業の経済的安定と成長を目指し、専門的なアドバイスを提供します。AIによる資産運用アドバイスの普及により、特に個人の財務管理の需要が高まると予想されます。

量子機械学習アナリスト

量子機械学習アナリストは、量子コンピューターを活用した機械学習モデルの開発・分析を行います。量子コンピューターの技術進歩により、従来の機械学習アプローチに比べて、計算速度と効率性の飛躍的な向上、さらに従来の機械学習では扱えなかった複雑な問題の解決が可能になると考えられます。

AI支援医療技師

AI支援医療技師は、AIを活用した医療診断や治療計画の立案をサポートします。特に、画像診断の精度を高めるAIツールや、病歴データに基づいて最適な治療計画を提案するシステムによる支援が進むと予想されます。

エッジコンピューティング専門家

エッジコンピューティング専門家は、エッジコンピューティングシステムの設計・構築・運用を行います。エッジコンピューティングとは、デバイス自身やその近くでデータ処理を行う技術です。クラウドコンピューティングは中央集権的なデータセンターに依存しますが、エッジコンピューティングはデバイスに近いアプローチで遅延を最小限に抑えます。これにより、自動運転車、IoTデバイス、スマートファクトリーなどの普及に伴い、データ処理を端末側で行うエッジコンピューティングの需要が高まると予想されます。

AIに仕事を代替させるメリット

AIに仕事を代替させることには、様々なメリットがあります。

生産性の向上

AIは人間よりも速く、正確に作業を行うことができます。これにより、生産性が向上し、コスト削減につながります。

24時間365日の稼働

AIは人間のように休憩や睡眠を必要としないため、24時間365日稼働させることができます。これにより、生産性が向上し、サービスの提供時間を拡大することができます。

危険な作業の代替

AIは人間にとって危険な作業を代替することができます。これにより、労働災害を減らすことができます。

人材不足の解消

AIは人材不足の解消に役立ちます。特に、単純作業や危険な作業に従事する人材の確保が難しい場合に有効です。

​新しい価値の創造

AIは人間にはできないような新しい価値を創造することができます。例えば、AIによるデータ分析は、新しいビジネスチャンスの発見や、製品・サービスの改善につながります。

AIに仕事を代替させるデメリット

AIに仕事を代替させることには、メリットだけでなくデメリットも存在します。以下はその代表的な例です。

失業の増加

AIが人間の仕事を代替することで、失業者が増加する可能性があります。特に、単純作業や定型的な業務に従事する人々は、AIに仕事を奪われるリスクが高まります。

格差の拡大

AI技術を導入できる組織/個人とそうでない組織/個人との間で、生産性や収益性に格差が生じ、経済格差が拡大する可能性があります。また、AI技術を使いこなせる人材とそうでない人材との間でも、所得格差が拡大する可能性があります。

AIの暴走

AIが人間の制御を超えて暴走するリスクがあります。AIが誤った判断を下したり、悪意のある目的で使用されたりした場合、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

倫理的な問題

AIの開発や運用には、倫理的な問題が伴います。例えば、AIが差別的な判断を下したり、人間の尊厳を傷つけたりする可能性があります。

AIに仕事を奪われないための対策とは

AIの進化により、将来多くの仕事が自動化される可能性があります。AIに仕事を奪われないためには、以下の対策が有効的であると考えられます。

AIを使いこなすスキルを身につける

AIの知識を学び、AIツールを使いこなすスキルを身につけることで、AIを自分の仕事に活用することができます。プログラミング、データ分析、機械学習などのスキルが求められます。

​創造性や問題解決能力を磨く

AIは定型的なタスクをこなすことは得意ですが、創造性や問題解決能力は人間に及びません。これらの能力を磨くことで、AIにはできない仕事で活躍することができます。

コミュニケーション能力や共感力を高める

AIはコミュニケーションや共感力が苦手です。これらの能力を高めることで、人と人との関わりが重要な仕事で活躍することができます。

自分の強みを生かせる仕事を選ぶ

AIに代替されにくい仕事を選ぶことも重要です。人間ならではの能力やスキルが求められる仕事を選ぶことで、AI時代でも活躍することができます。

AIと共存していくために必要な心構え

AIの進化は目覚ましく、私たちの生活や仕事に大きな影響を与えています。AIと共存していくためには、以下の心構えが重要です。

AIに関する知識を身に付ける

AIの仕組みや能力、限界などを理解することで、AIに対する過度な期待や不安を解消することができます。AIに関する基礎知識を学ぶことで、AIを適切に活用し、AI時代を生き抜く力を身に付けることができます。

AIにはできないことを考える・生み出す

AIは多くのことができるようになってきましたが、それでも人間にしかできないことがたくさんあります。創造性、共感力、倫理的判断力など、人間ならではの能力を活かせる分野で活躍することが重要です。AIにはできないことを考え、生み出すことで、AIと協働しながら新たな価値を創造することができます。

​常に学び続ける

AI技術は急速に進化しています。常に新しい知識やスキルを学び続けることで、AI時代に対応することができます。

まとめ:生成AI活用のご相談受付中

AIの普及は、私たちの生活や仕事に大きな変化をもたらしています。AIに仕事を奪われることを恐れるのではなく、AIと共存していくための準備が必要です。AIに関する知識を身に付け、AIにはできないことを考え、生み出すことで、AI時代を生き抜く力を身に付けることができます。

オートロは、ChatGPTなどの生成AI活用や開発に関するご相談を受け付けております。AI導入による業務効率化などをご検討の際は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

Ayuka Fujii
Ayuka Fujii

2023年3月〜オートロに従事し、現在は主にAI系の記事制作と公式X(@autoro_io)の運用を担当。初心者目線で親しみやすい記事作りを心がけています。趣味は日本全国のグルメマップを作ることで、行ってみたいお店の数が全国3000を突破しました。新潟生まれ新潟育ち。