SGEは、検索エンジンと生成AIを融合した検索を実現した、誰でも使えるGoogleの新機能です。
2023年5月に公開されて以降、日本でも大きな議論が巻き起こっており、SEOは「オワコン」になる、不要になるという意見も少なくありません。
これを踏まえ今回は、サイトの運営やWebマーケティングに携わるビジネスパーソン、ブロガーの方々などに向けて、SGEが及ぼす影響と今後の対策について徹底的に解説します。まずは概要を押さえ、SEOは本当に終わるのか?考察を深めていきましょう。
- SGEの概要
- SGEがSEOに与える影響
- SEOの今後と具体的な「SGE対策」
SGEとは?
SGE(Search Generative Experience)とは、Google検索と生成AIを組み合わせた、新たな検索体験を提供する機能です。“Search Generative Experience”は直訳すると「検索生成体験」です。
検索したテキストに対して、AIがその文脈を理解し、複数のサイトから情報を引用しながら、最適な強調スニペット(※)を自動生成してくれます。これにより関連性の高い情報を、より速く得られるようになるというのが強みの新機能です。
2023年5月11日のGoogle I/Oで発表、その後米国で公開され、2023年の8月から日本、インドで、個人アカウント向けに試用運転が開始されました(Google Workspace アカウントでは使用不可)。
※強調スニペット
強調スニペットとは、検索結果の画面に特定のキーワードやフレーズが目立つように表示される要約のこと。サイトを開かず、簡単に必要な情報を得るためのGoogleの機能の一つです。
SGEの始め方や詳しい使い方、メリットとデメリットについて詳しくは下記記事をご参照ください。類似するAIツールのBing AIチャット、Bardとの違いについても説明しています。
SGEの機能
Search LabsからSGEを有効にすると、Googleの検索結果に、AIが自動生成した概要が表示されるようになります。これにより、ユーザーは検索さえすれば、わざわざサイトを開かなくても、必要な情報が簡単に得られるようになります。
またSGEは、検索クエリ自体がプロンプト(AIを動かすための指示や質問のテキスト)として処理されるため、従来のいわゆる「検索ワード」ではなく、曖昧な長文を入力して検索できるようになります。
例えば、従来であれば「プロジェクター 写し方 コツ」というように、簡潔なキーワードを羅列して調べる方が良いとされてきました。一方でSGEでは「プロジェクターを綺麗に写すにはどうすればいい?」のように、話しかけるようなテキストを入力するだけで、目的に沿った情報を即座に得られるようになるということです。
さらに、AIの回答からそのままチャットに移動でき、会話形式で検索行動を続けられます。ここから追加の条件や関連する質問などを送ることで、目的に合わせて情報をさらに絞り込むことができます。
スマートフォンアプリ「Google」からであれば、iOS、Androidともに利用可能です。
SGEのメリット・デメリット
ユーザーがSGEを活用するメリットとデメリットは以下の通りです。
SGEのメリット
- 検索スキル不要で、会話するように質問を投げかけるだけで誰でも簡単に情報が得られる
- 長い文章で検索でき、文脈に即した、より独自のニーズに特化した詳細な回答を得られる
- チャット形式で質問や絞り込みの条件が追加でき、改めて検索する手間が省け、欲しい情報をすぐに見つけやすくなる
- 回答に出典元のサイトが表示されるため、該当のページに簡単にアクセスできる
SGEのデメリット
- インターネット上の情報を引用するため、誤った情報が含まれたり、AIによって作成された虚偽の情報が表示されたりする可能性がある
- オリジナルなコンテンツやアイデアを生み出すための用途には向いていない
- 対応言語が限定されている
- (サイト運営、ブロガー、Webマーケターにとって)サイトのトラフィック減少やコンテンツ価値の低下、広告収益の減少などの悪影響をもたらす可能性がある
SGEによるSEOへの影響
ここからは、Webサイトの運営やマーケティングに携わるビジネスパーソン向けに、SGEの利用の拡大によって生じると考えられるSEOへの影響予測をご紹介します。今回は以下について解説します。
- サイトの流入が激減する
- 検索ワードから口語的な表現へのシフト
- スマホアプリにおける表示の変化
現時点では、SGEの詳細やアルゴリズムの変更について、正式には発表されていません。そのためあくまで予測にはなりますが、将来的に発生しうる状況について早めに考察しておきましょう。
サイトの流入が激減する
SGEによって、記事を開いて読むことなく、直感的に関連性の高い情報にアクセスできるようになると、多くのユーザーがAIの回答のみで満足するようになります。これにより、サイトへの流入が急減する可能性があります。
これまでにも課題とされていた、検索して、検索結果のタイトルや概要・強調スニペットのみで必要な情報を発見し、サイトを一つも開かずに終了するという「ゼロクリックサーチ(ゼロクリック検索)」が加速する恐れも懸念されます。
明確な目的に即したニッチな記事は影響が少なくて済むかもしれませんが、広範囲の情報を扱っている記事に関しては、特に改善が必要になりそうです。
一方で、Google検索の統括に関わるCathy Edwards氏が、2023年5月10日のGoogle I/Oで、SGEの位置付けをWeb検索への「出発点」としていたことを踏まえても、完全にサイトへの流入がなくなるということは起こりづらいと考えられます。
また、クエリ(検索キーワード)によっても、今後の変化の仕方は異なると考えられます。例えば、答えが1つに限定されるような、普遍的なコンテンツ、辞書的に調べられる情報に関しては競争が激しくなり、流入の低下が予想されます。
普遍的なコンテンツ | 普遍的ではないコンテンツ | |
特徴 | 答えが一つに限定される、事実、定義、一般論 | 洞察や専門知識、個人の経験、レビュー・意見 |
具体例 | ・公開されている過去のデータ (例:日本の人口推移) ・特定の製品 (例:iPhone 14) ・基本定理 (例:ピタゴラスの定理) ・歴史的な出来事 (例:フランス革命) | ・日本の人口が減少している理由の考察、今後の予測 ・実際にiPhone 14を使ってみての感想やレビュー ・専門家による科学的根拠に基づく解説 ・旅行記、成功体験談など実体験に基づくストーリーやアドバイス |
このような普遍的な情報の獲得は、SGEによって生成される概要を見るだけで完結するため、ユーザーをサイトまで誘導させるのが難しくなると考えられます。
検索ワードから口語的な表現へのシフト
SGEを利用するユーザーは、よりカジュアルで人に尋ねるかのような言葉遣いで検索するようになると考えられます。これにより、従来の「検索しやすいキーワード」(検索結果の上位表示を狙えるキーワード)や検索結果上位のサイトの種類にも、大規模な変動が起こる可能性があります。
例えば、「観光地 ランキング」とで検索する代わりに、「家族4人で車で行ける自然豊かな観光地は?」といった具体的な質問・検索スタイルが一般的になったと仮定しましょう。
この場合、「人気の観光地ランキング」という従来の一般的なランキング記事よりも、「家族4人向けで車で行ける自然豊かな観光地特集」といったような、詳細な条件に特化した記事の方が、よりユーザーのニーズに合致しており、満足度が高いと判断されます。
その結果、そもそも「ランキング」というキーワードを使って検索すること自体が減るかもしれませんし、それにより「観光地 ランキング」という検索ワードで圧倒的に上位表示されていた記事へのアクセス数も、激減する可能性が高いと考えられます。
従来のSEOキーワード例 | SGEキーワード例 |
観光地 ランキング | 家族4人で東京から車で行ける自然豊かな観光地 |
一眼レフカメラ 比較 | 1万円以内で買える初心者でも使いやすい、持ち運びやすい一眼カメラ |
プレゼント 30代男性 | 同僚の35歳男性への誕生日プレゼントを、予算5000円以内で選びたい |
新宿駅 レストラン | 新宿駅徒歩5分圏内で、4人で女子会、にぎやかな雰囲気で内装が綺麗な、個室があるレストラン |
このため、SGEが一般的になることを想定すると、SEOキーワードの大規模な見直し及び「SGEキーワード」の分析が必要になるかもしれないということです。
スマホアプリにおける表示の変化
Googleのスマートフォンアプリでは、上記画像のように、1画面全体にSGEの回答が表示され、加えてリスティング広告のスペースもあります。ユーザーが検索結果の1位の記事に到達するまでにも通常1〜2回スクロールする手間がかかるため、わざわざサイトを開いて記事を読むこと自体を、避けるようになるかもしれません。
日本では気軽に情報を検索する際、多くの人がスマートフォンを使用するため、これによる影響は非常に大きいと考えられます。
SEO対策のこれから、“SGE対策”
先に述べたSEOへの影響を考慮すると、将来的には通常の上位表示よりもSGE内の表示に注力する方が効果的になるかもしれません。
そこで、今回は今すぐできる対策や重視すべきポイントを以下の10個、一気にご紹介します。
- 「実体験」を重視
- 他のプラットフォームでの集客強化
- 情報発信の独占化・分散化・クローズド化
- 権威性の向上
- 狭いニーズに焦点を絞った記事
- シェアを促進
- 質問形式のコンテンツを重視
- ECサイトの対策
- AIの回答に満足できないユーザー
- 独自の価値提供
現在は、SGE内で特定の記事が表示される理由やアルゴリズムは公開されていないため、まずは「SGEにどのような記事が表示されやすいのか」を分析する必要があります。
逆に言えば、アルゴリズムが明確でないことは、早期に新たな対策を講じるチャンスとも言えます。新しいアプローチを模索し、独自の戦略を展開することで、将来的に他のサイトと差別化でき、競争力を高める絶好の機会となるかもしれません。
それでは一つ一つ見ていきましょう。
「実体験」を重視
AIは、客観的事実や第三者の発信を扱うことはできても、「体験」した上での「感想」は書けません。これによりユーザーが今後、さらに重要視すると考えられる、信頼性の高い一次情報や、実体験に基づいたコンテンツを重点的に提供することを意識しましょう。
他のプラットフォームでの集客強化
サイトのアクセスを増やすことに執着せず、目的を再度明確にし、SNSやYouTubeなどの他のプラットフォームでも積極的な集客を行いましょう。
情報発信の独占化・分散化・クローズド化
メルマガや、公式LINE、Discordなど、特定の専用チャンネルを通じて情報を発信することで、フォロワーとの密なコミュニケーションが築かれ、その上でサイトのアクセスを促せるようになるでしょう。逆に言えば、単に記事を更新し続けているだけでは、望む結果が得られなくなるかもしれません。
権威性の向上
今後、記事を多くの人に読んでもらうためには、権威性がますます重要になると考えられます。SGEに表示される自動生成された情報の真偽を確かめたい時に、読む記事を選ぶ基準の一つとして、それを「誰が」書いているのかを確認する傾向が一層強まると予想されるためです。
そのため、例えば筆者の実名やSNSを記載したり、専門家の意見やユーザーのレビュー、アンケート結果などを積極的にコンテンツに組み込んだりして、サイトの信頼性を高めましょう。
狭いニーズに焦点を絞った記事
より詳細で具体的なユーザーの目的に、ダイレクトに応えられるような、情報の範囲を絞った記事を作成しましょう。
例えばターゲットにするキーワードを、「新宿 レストラン」ではなく「新宿 徒歩5分圏内 女子会 4人 にぎやかな雰囲気 綺麗 個室がある レストラン」など細かく絞っていくなどの方法が考えられます。
シェアを促進
検索結果の上位表示は、ほとんど意味がなくなるかもしれません。それよりも、コンテンツ自体をユーザーにSNS等でシェアしてもらうこと(被リンク)を重視し、口コミのような形でサイトへの流入を増やしていきましょう。
質問形式のコンテンツを重視
「ノートパソコン おすすめ」のような従来の検索ワードよりも、「大学生でも買える、軽量のノートパソコン、動画を編集しやすい」というような、ユーザーの会話の形式に合ったクエリを分析し、コンテンツの作成に反映する必要性が生じるかもしれません。
ECサイトの対策
出典:Google I/O ’23 in under 10 minutes
SGEの画面には、検索した条件に即して、価格や概要、レビュー、デザイン、機能など、商品情報が詳細に表示されるようになります。日本語版では未対応なので、ECサイトではこれに対応する策を早期に検討すると良いでしょう。
AIの回答に満足できないユーザー
SGEの「AIによる回答だけでは満足できないユーザー」を対象に、より詳細な情報や解説を発信しましょう。そういったユーザーは何を求めているのか、潜在的な目的を細かく考察する必要があります。
独自の価値提供
サイト独自の価値をさらに強調し、他のサイトでは得られないオリジナルな情報や体験を提供しましょう。
SGEの利用が広がると、今後は「本当に価値のある記事」以外は淘汰されていくことが予想されます。そのため、これに対抗し、ユーザーにとって「価値のある」記事や発信とは何かを、模索し続けるということが非常に重要になります。
まとめ
今回はGoogleの生成AI検索「SGE」がSEOに与えうる影響と、その対策についてご紹介しました。結論として、近い将来にSEOが「終わる」というのは今のところ考えにくいでしょう。しかしその代わり、SEOが「変わる」可能性は非常に高いと思われます。
SGEは、ユーザーにとっては非常に便利な機能ですが、SEO的には大きな衝撃を受ける機能かもしれません。特にサイトの運営やWebマーケティングに携わっている方は、Googleの新たな展開に注目するとともに、今からできる対策を早めに講じることを心がけましょう。
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