近年、反社会的勢力との関わりが企業にとって大きなリスクとなり、大きな影響を及ぼす事例が増えています。反社チェックを行って対策を行うのはもちろん重要ですが、反社会的勢力と関わりのある「個人名」まで特定できるのでしょうか?今回は、「反社会的勢力との関わりのある個人」を調べる方法をご紹介します。
- 個人に対して反社チェックが必要か気になっている方
- 反社会的勢力と関わりのある個人とは何かを知りたい方
- 反社チェックにはどんなやり方があるのか確かめたい方
目次
反社チェックとは?
反社チェックとは、企業が反社会的勢力と取引をしないために、相手先の企業が反社会的勢力に該当するかどうかを確認するプロセスです。企業が不当な要求、暴力や脅迫による被害などのリスク回避に加え、企業の社会的責任の観点からも重要であるため、関係者が反社会的勢力ではないかを慎重に確かめなければなりません。
そもそも反社チェックとは?反社チェックが必要な理由は?という方は、下記記事で詳しく解説していますので、こちらをご参照ください。
今すぐできる簡単な反社チェックは、下記記事の「反社チェック診断」がおすすめです。
反社会的勢力と関わりのある個人の調べ方は?
残念ながら、反社会的勢力と関わりのある個人の実名リストは存在しません。そのため、反社会的勢力と関わりのある個人は自分で調べる必要があります。
ちなみに、指定暴力団のリストは存在しますが、こちらを調べてもわかるのは暴力団の代表者の名前のみで、構成員の名前まではわかりません。
また、近年は暴力団は衰退しているものの、新たな犯罪集団(半グレ)が登場しています。このような半グレの、実態が明らかになっていないことや、一般人との境目がなくなっていることなどを考えると、個人が反社の関係者なのか見分けるのは、より難しくなってきているといえます。
参考:https://www.boutsui-aichi.or.jp/guidance/list/
どこからが「反社会的勢力と関わりのある個人」なのか?
反社会的勢力の定義はあいまいで、調べようにも明確な基準がありません。一体どこからが「反社会的勢力と関わりがある」と言えるのでしょうか?
警察署で提示されている、東京都暴力団排除条例 Q&Aより、条例における「暴力団関係者」及び、第2条第4号における「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」の例を引用すると、
- 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
- 暴力団員を雇用している者
- 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
- 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
- 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者
などが挙げられ、さらには、
- 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、その主催するゴルフ・コンペに参加している場合
- 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、頻繁に飲食を共にしている場合
- 誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合
- 暴力団員が関与する賭博等に参加している場合
なども関係者とみなされ、都や暴力団排除活動に取り組んでいる事業者と締結する各種契約において、排除の対象となる場合があるとしています。
ただし、以下のような場合はそれだけをもって、「暴力団関係者」とみなされることはありません。
- 暴力団員と交際していると噂されている
- 暴力団員と一緒に写真に写ったことがある
- 暴力団員と幼なじみの間柄という関係のみで交際している
- 暴力団員と結婚を前提に交際している
- 親族・血縁関係者に暴力団員がいる
反社会的勢力と関わりがある個人の調べ方5つ
ここからは、反社会的勢力と関わりのある個人を、自分で調べる方法を5つご紹介します。
- インターネットで検索する
- 新聞記事データベースで検索する
- 警察・暴力団追放運動推進センターに情報提供を依頼する
- 反社チェックツールを使う
- 調査会社を使う
それぞれの方法について詳しく解説していきます。
1. インターネットで検索する
Googleなどの検索エンジンで検索して調べる方法は、最も手軽で、無料でできます。インターネット上の記事や、SNS、ブログなどからあらゆる情報を詳細に調べることができ、最新情報にも対応しています。
しかし、逆に言えば古い情報が埋もれてしまうことも多く、全ての情報を網羅するのは非常に困難です。検索結果の少なくとも10ページ分は確認することが推奨されており、一つ調べるためにも膨大な時間を要します。
さらに、詳細に調べることができる分、噂レベルの信憑性に乏しい情報や、本当に調査対象について書かれているのかという同一性の検証など、必要となる作業も多いといえます。
Googleの検索を活用した反社チェックについては、具体的な検索ワードや手順を解説した関連記事をご参照ください。
ポイント
- 最も手軽で無料
- 最新情報や噂程度の情報まで網羅できる
- 古い情報が埋もれる可能性がある
- 情報の信憑性や同一性の検証に時間がかかる
2. 新聞記事データベースで検索する
新聞記事データベースの検索は、インターネットでの検索の、古い情報が埋もれる、情報の信憑性や同一性の確認に手間かかるなどの弱点を補える方法です。日経テレコン、G-searchなどを活用し、過去数十年分の新聞記事データベースから必要な情報を検索できます。
ただし、噂レベルの情報は網羅できないことや、さらに新聞では個人名が伏せられている場合もあるなど、掲載されている情報には限界があります。また、データベースの検索には基本的に利用料金が発生します。
ポイント
- 過去数十年分の新聞記事データベースで、確かな情報源から検索できる
- 噂レベルの情報や個人名などは網羅できない
- 基本的には有料
3. 警察・暴力団追放運動推進センターに情報提供を依頼する
警察・暴力団追放運動推進センターに情報提供を依頼でき、対象者が暴力団関係者かどうか、確実な情報を得られます。ただし、個人情報保護の観点から、簡単には情報を開示してくれません。
暴力団排除の特約を定めた契約関係資料、契約相手が暴力団関係者の疑いがあると判断した資料(理由)などを準備すれば対応してくれる場合もあります(東京都暴力団排除条例 Q&A 、Q2の2参照)。相手の氏名、生年月日、住所、携帯電話番号などを用意すると照会がスムーズに行えます。
ポイント
- 警察・暴力団追放運動推進センターから信憑性の高い情報が得られる
- 簡単には情報を提供してもらえず、時間や手間がかかる
参考:東京都暴力団排除条例 Q&A 警視庁、暴追都民センター
4. 反社チェックツールを使う
反社チェックツールとは、反社チェックをする際の検索などによる調査自体を自動化できるツールです。必要となる作業は、最終的に得られた結果の目視確認のみです。これにより、手作業で検索したり、外部に反社チェックを依頼したりするときに場合に発生する、膨大な時間や手間がかかるという課題を克服します。
また、情報は日々更新されるため、反社チェックは一度では終わらせずに定期的な調査の実施が非常に重要です。例えば、新規取引先との契約、既存取引先との契約継続のタイミングで再度必要になります。
これを考慮すると、反社チェックツールの導入は時間と労力の削減に非常に効果的であるといえます。
導入や運用には料金が発生しますが、同じくコストを要する調査会社の利用と比較すると、結果が出るのが早く安価です。
ポイント
- 作業を自動化し、反社チェックにかかる時間や手間をカットする
- 長期的・定期的な調査に効果的
- 基本的に導入や運用にコストが発生する
5. 調査会社を使う
調査会社への依頼では、独自のデータベースの構築や調査方法の確立などによって、より専門的で詳細な調査が可能な上、自社で反社チェックをする手間が省けます。
しかし、他の方法と比べてコストが高いことや、調査結果を得るまでに一定の時間がかかることが懸念されます。反社チェックは定期的な調査が重要となるため、その都度これらについて検討する必要があります。
ポイント
- 自社で調査する手間が省ける
- 専門的で詳細な調査ができる
- コストが高く、調査結果が出るまでに時間がかかる
- インターネット検索は、最も手軽で無料、最新情報や噂程度の情報まで網羅できるが、古い情報が埋もれる可能性があり、情報の信憑性や同一性の検証に時間がかかる。
- 新聞記事データベースでの検索は、過去数十年分の新聞記事データベースで、確かな情報源から検索できるが、噂レベルの情報や個人名などは網羅できない上に基本的には有料。
- 警察・暴力団追放運動推進センターの情報提供は、信憑性の高い情報が得られるが、簡単には提供してもらえず、時間や手間がかかる。
- 反社チェックツールは、作業を自動化し、反社チェックにかかる時間や手間をカットでき、長期的・定期的な調査に効果的だが、導入や運用のコストが発生する。
- 調査会社の利用は、自社で調査する手間が省け、専門的で詳細な調査ができるが、コストが高く、調査結果が出るまでに時間がかかる。
反社チェックの注意点
対象者に反社会的勢力との関わりがあるか確かめる場合には、以下に注意しましょう。
必ず証拠を残しておく
調査の結果、反社会的勢力との関わりが認められる、もしくは疑われる情報を発見したら、必ず証拠として記録し残しましょう。
調査の日時や方法、証拠となる情報などを詳細に記録しておくことで、トラブルが起きた際の信頼の担保や、警察等に相談する際に提出する資料に困らず対応できます。
また、反社チェックツールの中には、情報収集から記録まで全て自動化できるものもあるので、その点も注目してみると良いかもしれません。
定期的に調査を行う
反社チェックは1回で終わるものではありません。契約前・契約更新前、さらには契約の最中などの適切なタイミングで、定期的に、そして継続して行うことが、リスク回避や社会的信頼の確保のために重要となります。
反社チェックの適切な頻度はどれくらいなのか、下記記事で詳しく解説しています。
もし反社会的勢力との関わりが判明したら?
調査の結果、対象者が反社会的勢力との関わりがあることが判明した場合には、トラブルを避けるために、必ず担当者や担当部署だけで対応せず、組織全体で情報共有をし、警察・弁護士・暴力追放運動推進センターへの相談を経て、適切な対応を取らなければなりません。
また契約締結前ではなく、契約締結後に問題が判明した場合には、事実確認や正当な理由に基づいて契約を解消する必要があるため、弁護士等の専門家と協力して対応しましょう。
また、もしもの場合に備えて、契約書に反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)を契約書に記載し、取引相手の反社会的勢力との関わりが判明した際、速やかに契約解除ができるよう対策しておくのも効果的です。対策には、大阪府警本部による暴力団排除条項の記載例などをご活用ください。
まとめ
反社会的勢力と関わりのある個人の調べ方をご紹介しました。また今回ご紹介した注意点も考慮しながら、反社チェックの実施について、前向きに検討することをおすすめします。反社チェックを適切に行って、社会的責任の遂行とトラブル回避に努めていきましょう。
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