【徹底解説】反社チェックはどこまで行うべきか|調査範囲と方法、緊急時の対処法

近年、反社会勢力の排除を目指した政府指針や、各都道府県による暴力団排除条例の施行により、「反社チェック」の重要性はますます高まっています。本記事では、反社チェックの取り組み方に迷っている方へ、チェックはどこまで行うべきかを具体的にご紹介します。また反社チェックの必要性から、チェックすべき範囲やタイミング、万が一反社との関わりが判明した場合(可能性が高い場合)の対処方法まで詳しく解説します。

反社チェックとは

反社チェックとは、反社会的勢力(反社)との関わりを防ぐために行う調査や確認作業のことを指します。反社会的勢力とは、暴力団やその関係者、その他の犯罪組織を含む、社会秩序を乱す存在を指します。

暴力団などの特定の集団に所属しておらず、表面上関わりがないように見えても、実際には関係している場合もあります。このような関係者も「反社」として見なされるため、関わりを持たないよう警戒が必要です。

反社(反社会的勢力)とはどんな存在なのか、もっとよく知りたい方は下記記事をご参照ください。

【弁護士監修】反社会的勢力とは?定義や見分け方をわかりやすく紹介します。

反社チェックとは?重要性、具体的なやり方、チェック対象、判明時の対処方法まで詳しく解説

参考:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針反社会的勢力の定義に関する質問主意書

なぜ反社チェックが必要なのか

反社チェックが必要な理由は多岐にわたりますが、主に以下の3つの観点から説明できます。

政府指針・都道府県の条例で定められているから

日本では、反社会的勢力との関わりを防ぐための法律や条例が整備されています。企業はこれらの法令を遵守し、反社会的勢力への資金力を遮断する義務があります。このため、反社チェックを怠り、反社との関わりが明らかになった場合、法的な制裁を受ける可能性があります。

例えば暴力団排除条例(※)においては、反社会的勢力への利益供与(金品その他財産上の利益を与えること)は、条例第24条に禁止行為として定められており、これに違反すると、1年以下の懲役・50万円以下の罰金、及び調査・勧告・公表が課せられます。

さらに、反社チェックをせずに、契約した相手が反社会的勢力であることが判明した場合には、取締役の善管注意義務(会社法330条、民法644条)違反として、会社や第三者から損害賠償責任を問われる可能性があります。

暴力団排除条例:日本の地方自治体が施行する組織犯罪対策条例。暴力団やその他の犯罪組織の活動を制限し、排除することを目的としている。

社会的信用の失墜による経営難、倒産のリスクがあるから

反社との関わりが明るみに出ると、企業の社会的信用は一気に失墜します。顧客や取引先からの信頼を失うだけでなく、メディアによる報道やSNSでの拡散により、企業のイメージが大きく損なわれます。結果として、売上の減少や取引停止、最悪の場合は倒産に至ることもあります。

また、IPO(※)申請時に、反社会的勢力との関係がないことを示す確認書を提出する必要があり、東京証券取引所(東証)は、上場申請企業と反社会的勢力のつながりを調査し、リストに挙げられた企業についてもチェックを行います。

そのため企業は、反社チェックの基本方針を設定し、社内規則を整備し、取引先との契約においても反社会的勢力排除を実施することが求められます。さらに、反社チェックを、一度だけでなく定期的に実施し、既存の顧客や社員、株主との関係を継続的に監視する必要があります。

※IPO:”Initial Public Offering” の略語で、日本語では「新規公開株式」とも呼ばれる。企業が初めて株式を一般に公開し、株式市場に上場する際のプロセスのこと。これにより企業は一般の投資家に株式を販売し、株式市場での取引が可能になる。

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実際に反社との関わりが判明して2週間で倒産した事例

管工事や電気工事を手がける大手設備工事業者で、毎期50億円程度の売上高を持っていた企業が、反社会的勢力との関連が明らかになったことで、わずか2週間で倒産に追い込まれました。

倒産までの流れとしてはまず、2月に警察が暴力団組織関係者を逮捕し、同企業と組織との繋がりが発覚。3月に警察に取り調べが行われましたが、組織との関係は否認していました。しかし、4月には排除措置公表を通知し、同企業を暴力団関係事業者の対象業者として公表。これが公共工事受注や社会的信用の失墜につながりました。社長は取引先への謝罪や金融機関との交渉を続けましたが、決済は不調に終わり、その後5月に自己破産を申請して倒産しました。

企業や従業員が脅迫などの不正な要求に巻き込まれるリスクがあるから

反社と関わることで、企業やその従業員が脅迫や恐喝などの不正な要求に巻き込まれるリスクが高まります。例えば反社会的勢力による精神的な圧力(脅迫、恐喝等)は、莫大な金銭を要求する、「法的トラブルを引き起こす」と脅す、業務に対する妨害を行うなどの方法で現れることがあります。

このようなトラブルによって、企業の経営が不安定になるだけでなく、従業員の安全も脅かされます。反社チェックを行うことで、こうしたリスクを未然に防ぐことにつながります。

反社チェックはどこまでやる?一目でわかる対象範囲とタイミング

反社チェックはどこまでやれば良いのでしょうか?明確な決まりはありませんが、最低限チェックを行うべき範囲は、取引先、従業員・役員、株主です。それぞれの理由や適切な頻度を解説します。

反社チェックはどこまでやる?一目でわかる一目でわかる対象範囲とタイミングまとめ表

対象チェックのタイミング範囲
新規取引先取引開始前、契約前企業、代表者、役員、主要株主、顧問税理士、弁護士などの外部関係者
既存取引先1年に1度企業、代表者、役員、主要株主
従業員入社前(雇用前)過去の経歴、親族、親族が経営している企業
役員役員就任決定から就任前までの間過去の経歴、親族、親族が経営している企業
株主株主の増加・変更時法人、代表者、役員、主要株主、顧問税理士、弁護士などの関連する外部関係者

なお今回説明しているのは、あくまで反社チェックを実施するべき範囲の目安であり、より詳細な調査が必要となる場合や、より高頻度に行うことが推奨される場合もあります。

反社チェックはどれくらいの頻度で行うべき?

1. 取引先企業

新たに取引を開始する企業や、既存の取引先について定期的に再チェックを行うことが求められます。取引先が反社と関わりがある場合、企業自身もその影響を受けるリスクが高まるため、契約前や定期的な見直しの際に、反社チェックを実施することが推奨されます。

新規取引先

新規取引先には、契約前に反社チェックを行います。その際、相手企業の代表者、役員だけでなく、大株主、顧問税理士、顧問弁護士などの外部関係者も対象に調査を行う必要があります。
契約前に反社チェックの結果がわからない場合は、契約書に反社条項(※)を記載しましょう。契約締結後にこの条項を削除しようとする場合は注意が必要で、相手が反社会的勢力と関わりがある可能性が高いことを示唆しています。このような「反社条項」が契約書にある場合は、相手方の反社会的勢力との関係が判明しても迅速に対応できます。

※契約書の「反社条項」:契約を結ぶ際に、相手方が反社会的勢力ではないことや、暴力的な要求を行わないことを示し、保証する特定の契約書の条項を記載すること。各都道府県の暴力団排除条例で努力義務として定められている場合がある。(参考:売買契約書のモデル条項例の解説

既存取引先

既存取引先に対しても、定期的な再チェックが必要です。過去に問題がなかったとはいっても、その後も反社会的勢力との関係が生じている可能性が考えられるためです。
最低でも、1年に1度の頻度で実施しましょう。最後にチェックを行ってから数年経過し、知らないうちに役員が反社会的勢力の関係者に代わっていた、というような事態も起こりかねません。また、上場企業で反社会的勢力との関係が明らかになった場合、上場廃止にもつながりかねないので要注意です。

2. 自社の従業員や役員

自社の内部において、従業員や役員が反社と関わりがないかを確認することも重要です。特に新規採用時や昇進時には、徹底した反社チェックを行うことで、企業の健全な運営を確保することができます。

入社前(雇用前)

従業員採用時、アルバイトやパート社員も含め、雇用・入社前の反社チェックが重要です。
現代ではSNSを通じて学生と暴力団とのつながりがあるケースもあるため、学生の新卒者に対しても注意が必要です。実際に、強盗傷害事件や詐欺事件に学生が絡む事例も報告されており、予防のためのチェックが重要になります。

役員就任前

役員就任が決定し、就任する前にも反社チェックを行います。役員は組織内で責任あるポジションを担うため、後から反社との関わりが明るみに出ると大きな問題になります。
そのため、役員に対しては、就任前の過去の経歴に加え、親族や親族が経営している企業なども対象にしたチェックを実施する場合もあります。

このような「個人」を対象にした反社チェックの方法は下記記事をご参照ください。

個人の取引先の反社会的勢力チェックもこれで完璧!おすすめ調査方法と注意点

3. 株主

企業の株主についても、反社チェックが必要です。株主を増やす際や変更する際に、その株主に対して実施しましょう。

株主が法人の場合には、その法人自体だけでなく、代表者、役員、大株主、顧問税理士、弁護士など、関連する外部関係者までチェックを行うことが推奨されています。

反社との関わりが判明したまたは可能性が高い場合の対処法

反社チェックを実施した結果、反社との関わりが判明した場合、または疑念が生じた場合には、迅速な対応が重要になります。必ず、担当者のみで対応せず、部署や会社全体で情報共有し、警察や暴追センター、弁護士への相談を経て、取引中止または契約解除を進めましょう。

警察や暴追センター、弁護士に相談する

気づいた時点で、なるべく早めに警察や地元の暴力団対策センターに連絡し、専門家の意見を仰ぎましょう。また、法的なアドバイスが必要な場合には弁護士への相談も効果的です。指導を受けながら、慎重に対処することを心がけましょう。

詳細を伏せた上で取引中止・契約解除する

反社会的勢力との関与が確認された場合には、早急に取引を中止するべきです。契約がまだ結ばれていない場合は、自社の判断で取引を中止するとだけ伝え、理由を詳しく伝えずに中止しましょう。

契約締結後の場合は、契約書に反社条項がある場合、その条項に基づいて契約を解除し、損害賠償を求めることができます。反社条項がない場合でも、民法の「契約内容の有効要件」の「適法性」により、反社会的勢力との契約は無効とされる可能性があり、契約解除や損害賠償請求が可能です。ただし、法律的に契約解除や損害賠償請求は可能ですが、暴力行為や報復などにより法的問題に巻き込まれるリスクも考えられるため、実行には注意が必要です。警察と協力しながら慎重に対処し、取引解消(契約解除)を円滑に進めましょう。必要なら、「警察からの指示に従い契約解除せざるを得ない状況にある」とだけ伝え、詳細は言わない方が賢明です。

下記記事では、反社会的勢力との取引の危険性や対処法について詳しく解説しています。

反社会的勢力との取引を回避するには?契約後の対応方法

反社チェックを行う方法

反社チェックには主に、自社調査、行政機関への照会、専門調査機関への依頼の3つの方法が考えられます。

まず、自社調査です。これは社内で行う調査で、新聞記事データの検索やGoogle検索、反社会勢力情報データベースの検索などを用います。コストは抑えられますが、専門知識がない社員が行うため、情報の確実性は比較的低いです。そのため、複数の検索方法を組み合わせることが推奨されます。

次に、行政機関への照会があります。暴力追放運動推進センターへの照会などが該当し、センターから情報を教えてもらえる場合がありますが、開示されないこともあります。

最後に、専門調査機関への依頼です。高いコストがかかりますが、自社では調べられない内容まで調査してもらえるため、精度の高い調査が可能です。

反社チェックは、企業の信用を守るために欠かせない工程であり、コストと取引リスクを考慮して適切な方法を選ぶ必要があります。詳しい方法は下記記事でご紹介しています。

反社チェックの方法は?必要な理由や緊急時の対処法

反社チェック業務になるべく工数をかけず、作業自体を効率化したい場合には、反社チェックツールの活用がおすすめです。

反社チェックツールおすすめ12選比較!料金や調査範囲の違いは?

反社チェックをどこまで行うかは慎重に判断しよう

反社チェックはどこまで行うべきなのか、対象範囲とタイミングを中心にご紹介しました。

反社チェックは取引先企業、従業員や役員、株主といった対象範囲を明確にし、適切なタイミングで実施することが重要です。また複数の方法を組み合わせて活用することで、より効果的な調査が可能となります。

反社チェックを通じてリスクを未然に防ぎ、健全な経営を続けるための努力を怠らないようにしましょう。

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この記事を書いた人

Ayuka Fujii
Ayuka Fujii

2023年3月〜オートロに従事し、現在は主にAI系の記事制作と公式X(@autoro_io)の運用を担当。初心者目線で親しみやすい記事作りを心がけています。趣味は日本全国のグルメマップを作ることで、行ってみたいお店の数が全国3000を突破しました。新潟生まれ新潟育ち。