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反社チェック、どこまでやる?対象の定義や範囲、調査方法を解説

反社チェックに関してよくある、「どこまでを対象に実施すればいいのか?」「一度だけやればそれでいいのか?」などの疑問を解消するべく、適切な調査の範囲やタイミングをご紹介します。また、対象の定義や緊急時の対処法にも触れていきます。

反社チェックとは?

反社チェックとは、取引先や従業員、関連する個人や組織が、暴力団などの反社会的勢力と関連していないかを確認するための調査のことです。

反社チェックについて詳しく知りたい方は、下記記事をご参照ください。

反社チェックとは?重要性、具体的なやり方、チェック対象、判明時の対処方法まで詳しく解説

反社チェックの必要性

反社会的勢力との関わりを避けるための反社チェックが、なぜビジネスにおいて重要なのか、今回は以下の3つの理由に着目してその必要性を解説していきます。

  • 罰則を受ける可能性があるため
  • 暴力や脅迫の危険に晒される可能性があるため
  • コンプライアンスを遵守するため

それぞれ確認していきましょう。

罰則を受ける可能性があるため

反社会的勢力と関係を持つと、法律や条例の違反として罰則を受ける可能性があります。

暴力団排除条例)においては、反社会的勢力への利益供与(金品その他財産上の利益を与えること)は、条例第24条に禁止行為として定められており、これに違反すると、1年以下の懲役・50万円以下の罰金、及び調査・勧告・公表が課せられます。

また、例えば反社チェックをせずに、契約した相手が反社会的勢力であることが判明した場合、取締役の善管注意義務(会社法330条、民法644条)違反として、会社や第三者から損害賠償責任を問われる可能性もあります。

このような罰則を受けないためにも、企業や団体は法的コンプライアンスを確保するために反社会的勢力とのつながりを避ける必要があります。

暴力団排除条例:日本の地方自治体が施行する組織犯罪対策条例。暴力団やその他の犯罪組織の活動を制限し、排除することを目的としている。

暴力や脅迫の危険に晒される可能性があるため

反社会的勢力とのつながりがある場合、暴力行為や脅迫にさらされる可能性が高まります。反社会的勢力による精神的な圧力(脅迫、恐喝等)は、莫大な金銭を要求する、「法的トラブルを引き起こす」と脅す、業務に対する妨害を行うなどの方法で現れることがあります。反社チェックは企業と従業員の安全を守るためにも非常に重要です。

コンプライアンスを遵守するため

反社会的勢力との関わりを避け、企業のコンプライアンスを遵守しなければなりません。コンプライアンスを守れず、企業の信頼や評判が失墜し、取引先や顧客がいなくなれば、最悪の場合倒産に追い込まれる可能性もあります。

実際に反社との関わりが判明して2週間で倒産した事例

管工事や電気工事を手がける大手設備工事業者で、毎期50億円程度の売上高を持っていた企業が、反社会的勢力との関連が明らかになったことで、わずか2週間で倒産に追い込まれました。

倒産までの流れとしてはまず、2月に警察が暴力団組織関係者を逮捕し、同企業と組織との繋がりが発覚。3月に警察に取り調べが行われましたが、組織との関係は否認していました。しかし、4月には排除措置公表を通知し、同企業を暴力団関係事業者の対象業者として公表。これが公共工事受注や社会的信用の失墜につながりました。社長は取引先への謝罪や金融機関との交渉を続けましたが、決済は不調に終わり、その後5月に自己破産を申請して倒産しました。

また、IPO()申請時に、反社会的勢力との関係がないことを示す確認書を提出する必要があり、東京証券取引所(東証)は、上場申請企業と反社会的勢力のつながりを調査し、リストに挙げられた企業についてもチェックを行います。

そのため企業は、反社チェックの基本方針を設定し、社内規則を整備し、取引先との契約においても反社会的勢力排除を実施することが求められます。さらに、反社チェックを、一度だけでなく定期的に実施し、既存の顧客や社員、株主との関係を継続的に監視する必要があります

IPO:”Initial Public Offering” の略語で、日本語では「新規公開株式」とも呼ばれる。企業が初めて株式を一般に公開し、株式市場に上場する際のプロセスのこと。これにより企業は一般の投資家に株式を販売し、株式市場での取引が可能になる。

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そもそも”反社”とはどんな人?

実は「反社会的勢力」(反社)には明確な定義がなく、企業名や実名のリストも存在しません。では、反社とは一体どんな人や組織を指すのでしょうか?政府による指針や条例をもとにご紹介します。

暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人

政府による『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』(以下「指針」)において、「反社会的勢力」は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。

具体的には、指針で着目すべき属性として、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団などが挙げられているほか、半グレ集団(準暴力団)や詐欺集団などもこれに該当します。それぞれ簡単に説明します。

  • 暴力団

組織的な犯罪行為を行い、通常は暴力や脅迫を用いて他者を支配し、経済的利益を得る犯罪組織。

  • 暴力団関係企業

暴力団と密接な関係を持つ企業で、資金洗浄や不正な取引を通じて組織に資金を供与する場合がある。

  • 総会屋

株主総会などでの投票権を悪用し、企業や株主から金銭を巻き上げる者。別名「まとめ屋」。

  • 社会運動標ぼうゴロ

合法的な社会運動やデモに紛れ込み、社会運動を装い、実際には企業等に違法・不正な利益を追求する者。

  • 政治活動標ぼうゴロ

政治イベントや選挙活動に関与して、政治団体等に装い、不正な利益を要求する者。

  • 特殊知能暴力集団

反社会的勢力との結びつきが背後にあることを利用して威力を用いる、または反社会的勢力と資金的なルートを持つ、組織内で不正行為の中心となっている集団。

  • 半グレ集団(準暴力団)・詐欺集団

暴力団に所属せずに、主に特殊詐欺などの犯罪を行う集団。

暴力団に資金提供を行う企業の役員や従業員等

東京都暴力団排除条例(以下「条例」)での規制対象の一つとして挙げられる、暴力団に資金提供を行い、暴力団の資金源となる企業、通称「フロント企業」も反社会的勢力のうちの一つです。

フロント企業は、暴力団自体が設立する場合もあれば、既存の企業の支配権を、暴力団が後から獲得する場合もあります。また、代表者に一般市民を置き、一般企業を装って運営することが多く、一般の企業と見分けるのは非常に難しくなってきています。

暴力団関係者・密接交際者

同じく条例上の規制対象として、「暴力団関係者・密接交際者」が挙げられます。具体的には、暴力団と利益供与関係・協力体制・共生状態にある企業や個人を指します。具体的には以下のような場合がこれに該当します。

  • 相手が暴力団であると知った上で、通常の価格で商品を売買する
  • 飲食店が、特定の食材供給業者からの調達価格を引き下げるために、「供給業者に脅しをかけ、価格を下げさせてほしい」と暴力団に依頼し、金銭を支払う
  • 建設業者が、特定の土地に新しい暴力団事務所を建設する工事を受注し、それを知りながら工事を進行させる

ただし、相手が暴力団であると知らなかった場合や、正当な理由がある場合には規制対象にはなりません。

下記記事では反社会的勢力について、より具体例を用いて詳しく解説しています。

【弁護士監修】反社会的勢力とは?定義や見分け方をわかりやすく紹介します。

反社チェック、どこまでやる?

反社チェックはどこまでやれば良いのでしょうか?明確な決まりはありませんが、最低限チェックを行うべき範囲は、取引先、従業員・役員、株主です。それぞれの理由や適切な頻度を解説します。

取引先

新規取引先と既存取引先で、それぞれ反社チェックが必要になります。

  • 新規取引先

新規取引先には、契約前に反社チェックを行います。その際、相手企業の代表者、役員だけでなく、大株主、顧問税理士、顧問弁護士などの外部関係者も対象に調査を行う必要があります。
契約前に反社チェックの結果がわからない場合は、契約書に反社条項()を記載しましょう。契約締結後にこの条項を削除しようとする場合は注意が必要で、相手が反社会的勢力と関わりがある可能性が高いことを示唆しています。このような「反社条項」が契約書にある場合は、相手方の反社会的勢力との関係が判明しても迅速に対応できます。

契約書の「反社条項」:契約を結ぶ際に、相手方が反社会的勢力ではないことや、暴力的な要求を行わないことを示し、保証する特定の契約書の条項を記載すること。各都道府県の暴力団排除条例で努力義務として定められている場合がある。(参考:売買契約書のモデル条項例の解説

  • 既存取引先

既存取引先に対しても、定期的に反社チェックが必要です。過去に問題がなかったとはいっても、その後も反社会的勢力との関係が生じている可能性が考えられるためです。
最低でも、1年に1度の頻度で実施しましょう。最後にチェックを行ってから数年経過し、知らないうちに役員が反社会的勢力の関係者に代わっていたというような事態も起こりかねません。また、上場企業で反社会的勢力との関係が明らかになった場合、上場廃止にもつながりかねないので要注意です。

反社チェックはどれくらいの頻度で行うべき?

従業員・役員

従業員・役員の反社チェックは、特に、入社前の新卒者や役員候補者に対して、予防措置を講じるために重要です。

  • 入社前(雇用前)

従業員採用時、アルバイトやパート社員も含め、雇用・入社前の反社チェックが重要です。
現代ではSNSを通じて学生と暴力団とのつながりがあるケースもあるため、学生の新卒者に対しても注意が必要です。実際に、強盗傷害事件や詐欺事件に学生が絡む事例も報告されており、予防のためのチェックが重要になります。

  • 役員就任前

役員就任が決定し、就任する前にも反社チェックを行います。役員は組織内で責任あるポジションを担うため、後から反社との関わりが明るみに出ると大きな問題になります。
そのため、役員に対しては、就任前の過去の経歴に加え、親族や親族が経営している企業なども対象にしたチェックが必要です。

このような「個人」を対象にした反社チェックの方法は下記記事をご参照ください。

個人の取引先の反社会的勢力チェックもこれで完璧!おすすめ調査方法と注意点

株主

反社チェックの対象には、企業の株主も含まれます。株主を増やす際や変更する際に、その株主に対して実施しましょう。
株主が法人の場合には、その法人自体だけでなく、代表者、役員、大株主、顧問税理士、弁護士など、関連する外部関係者までチェックを行うことが推奨されています。

反社チェック、どこまでやる?まとめ表

対象チェックのタイミング範囲
新規取引先取引開始前、契約前企業、代表者、役員、主要株主、顧問税理士、弁護士などの外部関係者
既存取引先1年に1度企業、代表者、役員、主要株主
従業員入社前(雇用前)過去の経歴、親族、親族が経営している企業
役員役員就任決定から就任前までの間過去の経歴、親族、親族が経営している企業
株主株主の増加・変更時法人、代表者、役員、主要株主、顧問税理士、弁護士などの関連する外部関係者

なお今回説明しているのは、あくまで反社チェックを実施するべき範囲の目安であり、より詳細な調査が必要となる場合もあります。

反社チェックのやり方

反社チェックの主な方法は以下の通りです。

  • インターネットで検索する
  • 反社チェックツールを使う
  • 調査会社に依頼する

順番に見ていきましょう。

「できれば反社チェックに費用をかけたくない…」という方は、下記記事をご覧ください。無料で行う方法のほか、無料で試せるツールもご紹介しています。

【最新】反社チェックを無料で行う方法とは?おすすめツール6選

インターネットで検索する

インターネットでの検索は、無料で最も手軽な方法です。具体的な方法としては、調査対象となる社名や代表者名などを検索して、反社関連のキーワードがサジェストに出てこないか、「調査対象+特定のキーワード」で検索して、反社関連の記事・情報が出てこないかを調べます。

SNSやブログなども調査範囲に含まれ、噂程度の情報まで網羅できる分、情報の鮮度信憑性同一性(同じ社名、同姓同名の個人など)の確認作業に手間がかかります。また、反社チェックで重要となる証拠を残すための記録まで、手作業で行う必要があるため注意が必要です。

Google検索での反社チェックについて、詳しい手順や、効果的な検索キーワードについては、下記記事をご参照ください。

反社チェックをGoogleで!進め方と手順を要チェック

また、有料にはなりますが、過去の新聞記事等のデータベースの検索を活用するのも効果的です。代表的なものとして、日経テレコンG-Search帝国データバンクなどが挙げられます。

とはいえ、検索エンジンも新聞記事のデータベースも、本来は反社チェックのためのツールではないことを承知した上で利用するようにしましょう。

反社チェックツールを使う

反社チェックツールは一般的に、インターネットや新聞記事等のデータベース検索、調査結果の保存・記録の自動化などの機能により、反社チェック業務全体を支援します。

これにより、手作業で起こりうるチェック漏れ・情報漏れなどの人的ミスの削減、調査の正確性向上手間や時間の削減が可能になります。また、企業の規模拡大によってチェックの対象(取引先)が増加しても、作業がひっ迫することがなく、増員不要で安定した運用を続けられる点が強みです。反社チェックは定期的な実施が必要であることからしても、ツールの導入は効果的であると考えられます。

ただし、利用には一定の料金がかかるため、費用対効果の観点から、ツールの導入や、ツールの選び方は慎重に検討しなければなりません。

おすすめのツールや選び方のポイントは下記記事をご参照ください。ツールの活用事例も紹介しています。

反社チェックツールおすすめ12選比較!料金や調査範囲の違いは?

調査会社に依頼する

反社チェックは、専門の調査会社に依頼できます。自社での作業が不要な上に、蓄積されたノウハウをもとにした調査による、信頼性の高い情報が得られます。ただし、費用が比較的高く結果が得られるまで一定の時間がかかることが懸念されます。

そのため、検索やツールでの調査の結果、特定の企業や個人に反社との関わりが疑われ、さらに情報が必要な場合に、調査会社に依頼するといった使い方が効果的です。

下記記事では、それぞれの方法のメリット・デメリットを詳しく紹介していますので、こちらも合わせてご確認ください。

反社チェックの方法は?必要な理由や緊急時の対処法

反社との関わりが判明した、
または疑われる場合の対処法 3STEP

反社チェックを実施した結果、反社との関わりが判明した場合、または疑念が生じた場合には、迅速な対応が重要になります。必ず、担当者のみで対応せず、部署や会社全体で情報共有し、警察や暴追センター、弁護士への相談を経て、取引中止または契約解除を進めましょう。

STEP1:部署や会社全体で情報を共有する

最初に行うこととして、情報の共有が非常に重要です。必ず、担当者だけでなく、関連部署や上司にも状況を正確に伝えて対応しましょう。トラブルを避けるためにも、問題の全体像を明らかにし、適切な対応策を打つための協力体制を整えましょう。

STEP2:警察や暴追センター、弁護士に相談する

なるべく早めに警察や地元の暴力団対策センターに連絡し、専門家の意見を仰ぎましょう。また、法的なアドバイスが必要な場合には弁護士への相談も有効です。指導を受けながら、慎重に対処することを心がけましょう。

STEP3:取引中止・契約解除

反社会的勢力との関与が確認された場合には、早急に取引を中止するべきです。契約がまだ結ばれていない場合は、自社の判断で取引を中止するとだけ伝え、理由を詳しく伝えずに中止しましょう

契約締結後の場合は、契約に反社条項があれば、それに基づき契約解除と損害賠償請求が可能です。契約に反社条項がなくても、民法に基づき契約を解除し損害賠償を求めることができます。

ただし、暴力行為や法的問題に巻き込まれるリスクも考えられるため、警察と協力しながら慎重に対処し、取引解消(契約解除)を円滑に進めましょう。必要なら、「警察からの指示に従い契約解除せざるを得ない状況にある」とだけ伝え、詳細は言わない方が賢明です。

下記記事では、反社会的勢力との取引の危険性や対処法について詳しく解説しています。

反社会的勢力との取引を回避するには?契約後の対応方法

まとめ

反社チェックをどこまでやればいいのか、対象の範囲や調査の頻度を中心に、「反社」の定義、チェックの必要性、調査方法、そして発覚した場合の対処法までお伝えしました。これらの情報をもとに適切な調査方法を検討し、企業のコンプライアンスや従業員の身を守るべく、定期的な反社チェックを行っていきましょう。

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この記事を書いた人

Ayuka
Ayuka

2023年3月〜オートロに従事し、現在は主にAI系の記事制作と公式X(@autoro_io)の運用を担当。初心者目線で親しみやすい記事作りを心がけています。趣味は日本全国のグルメマップを作ることで、行ってみたいお店の数が全国3000を突破しました。新潟生まれ新潟育ち。