反社会的勢力との取引を回避し、安全なビジネス環境を築くにはどうしたら良いのか、迷っている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、反社会的勢力の危険性、企業に近づく手口、取引を回避するための3つの方法、効果的な反社チェックの方法までまとめてお伝えします。また、取引前後の万が一の事態への対処法についても解説します。
企業のコンプライアンス管理に関心のある方は必読です。
- 反社会的勢力と取引を行うリスク
- 反社会的勢力の取引を回避する方法
- 反社会的勢力との関わりが判明した(取引先が怪しい)時の対処法
目次
反社会的勢力(反社)とは?
反社会的勢力(反社)とは、一般的には法律や社会規範に反する活動を行い、暴力や犯罪行為を組織的に行い、利益を追求する組織や個人の総称です。脅迫や恐喝などの圧力や、身体的な暴力行為、詐欺など、さまざまな違法な手段を用いて活動しています。
具体的には、暴力団やその関係者、フロント企業、半グレ集団などの犯罪組織や個人などが含まれます。
下記記事では、どこからが「反社会的勢力」なのか、その定義や具体例について、政府の見解等を紹介しながら詳しく解説しています。
反社会的勢力との取引を行うリスク
反社会的勢力との関わりを持つことで様々なリスクが生じます。今回は以下の3点についてご紹介します。
- 罰則を科せられる
- 不当な要求・暴力・脅迫等に晒される
- 企業存続の危機に瀕する
なぜ反社会的勢力との取引は避けるべきなのか、その理由や重要性についても合わせて考えていきましょう。
罰則を科せられる
反社会的勢力と取引を行うと、法律に違反することになり、刑事罰や民事訴訟の対象になる可能性があります。
例えば、東京都暴力団排除条例では、反社会的勢力に対する利益提供が厳しく禁止されています。仮に行った場合、勧告や公表、そして刑事罰の対象となり、最大1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。これが刑法の犯罪に対する罰則と同様の刑事罰であることからも、反社会的勢力との取引を禁じることの重要性は明らかです。
また、例えば反社チェックをせずに、契約した相手が反社会的勢力であることが判明した場合、取締役の善管注意義務(会社法330条、民法644条)違反として、会社や第三者から損害賠償責任を問われる可能性もあります。
不当な要求・暴力・脅迫等に晒される
反社会的勢力と関わると、不当な要求を受けたり、暴力・脅迫等の被害に遭う可能性が高まります。具体的には、反社会的勢力による恐喝等の精神的な圧力、莫大な金銭の要求、「法的トラブルを引き起こす」といった脅迫、業務妨害などの形で現れます。したがって、反社会的勢力との関わりを避けることは企業と従業員の安全を確保するためにも極めて重要です。
企業存続の危機に瀕する
反社会的勢力との関わりを持つことは、企業にとってコンプライアンス(法令遵守)上の大きなリスクを伴います。
反社会的勢力との関係・取引が公表されると、企業の評判が大きく損なわれ、外部からの信用を失わせ、結果として取引先や顧客が減少します。これは業績に大きな悪影響を及ぼし、最悪の場合、倒産に至る可能性もあります。さらに、企業には、法的な問題や制裁により、高額の罰金や訴訟費用、信用失墜による経済的困難が襲いかかるかもしれません。
反社会的勢力が企業に近づく手口
反社会的勢力が企業に接近する手法は巧妙化していますが、大きく「接近型」と「攻撃型」の2つの類型に分けられます。
接近型の手法
接近型の反社会的勢力は、通常の取引を装いながら企業に近づいてきます。以下はその手法の一部です。
- 機関誌の購読や物品の購入など、「一方的なお願い」や「勧誘」を行う。
- 魅力的な取引を提案し、関係を築いた後に不正な要求をする。
- 弱みにつけ込んで脅迫する。
- 優秀な人物を紹介して企業に潜り込ませる。
近年では、SNSを利用した半グレ集団にる犯罪行為の勧誘も増加しており、警戒が必要です。
攻撃型の手法
攻撃型の反社会的勢力は、企業の弱みを利用して圧力をかけてきます。主な手法は次の通りです。
- 社員のスキャンダルなどを使って脅迫する。
- 経営者や役員の弱みを握り、金銭や企業情報を要求する。
- 商品の欠陥や従業員の対応にクレームをつけ、金銭を要求する。
- 街宣車よる街宣活動を行なって金銭を要求する。
攻撃型の反社会的勢力に屈すると、企業は信頼を失い、経営危機に陥る可能性が高まるため、弱みを見せないよう注意が必要です。
反社会的勢力との取引を事前に回避する方法3つ
反社会的勢力との取引を避け、反社会的勢力を排除することは、政府による指針や条例で定められており、社会的責任の遂行や、企業のコンプライアンスの遵守の観点から重要です。
反社会的勢力との取引を回避し、健全な企業活動を続けるためには、以下の対策が重要になります。
- 社内体制の整備
- 反社チェック
- 反社条項の記載
それぞれ確認していきましょう。
社内体制の整備
反社会的勢力との取引を回避する方法としてまず重要なのが、社内体制の整備です。企業の明確な態度は反社会的勢力に対して抵抗を示し、関係を築くことを難しくさせ、社内外での意識向上にもつながります。社内体制の整備のポイントは以下の通りです。
- 対応マニュアルの作成、社員への周知徹底
- 不当要求防止責任者など責任者の選任
- 講習会などによる社員教育の徹底
対応マニュアルは、
- 目的
- 反社会的勢力の定義
- 反社会的勢力の排除にかかる範囲(取引先、株主、役員、従業員等)
- 反社会的勢力の不当要求への対処方法(不当要求への対応、反社条項の作成等)
などの要素を含めて作成し、社員への周知を徹底して行いましょう。
不当要求防止責任者の設置に関しては、警視庁が推奨しており、暴力団対策法でも努力義務として規定されています。
「暴力団対策法(暴対法)」(1992)
正式には『暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律』。都道府県公安委員会が暴力団を指定し、その団体に対する規制措置を講じる。具体的には、暴力団の特定の活動や交際を制限し、特に特殊詐欺などの犯罪を行う暴力団を厳しく取り締まり、法的な措置を可能とする。1992年3月1日制定。
反社チェック
反社チェックとは、企業が契約や取引を始める前に、相手が反社(反社会的勢力)に関係していないかを確認する手続きです。取引先、社員、株主などが反社会的勢力との関係が疑われる場合、それを事前にチェックすることで、反社会的勢力との取引の防止につながります。ただし、反社会的勢力の企業が一覧になったリストなどは公表されていないため、必要に応じ、自分で調べる必要があります。
反社条項の記載
契約を締結する際に、相手方に対して反社会的勢力ではないことや、暴力的な要求行為などをしないことを示し保証する、特定の条項を契約書に記載することで、反社会的勢力との繋がりを未然に防ぎます(反社会的勢力排除条項)。これは、政府による『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』(以下「指針」)に基づいて作成された各都道府県の暴力団排除条例において、「努力義務」とされている場合があります。
契約書に反社条項を記載する際には、明確な定義、行為の禁止、無催告解除についての記載など、詳細な内容が重要になります。詳細は、売買契約書のモデル条項例の解説を参考にしてみてください。
反社会的勢力かどうか調べる方法
特定の組織や個人が反社会的勢力かどうかを調べる、反社チェックの方法を4つご紹介します。
- インターネットで検索する
- 警察または暴追センターへ相談する
- 反社チェックツールを使う
- 調査会社に依頼する
順番に確認していきましょう。
簡単にできる反社チェック診断はこちら。
インターネットで検索する
インターネットでの検索は、調べたい組織名・人名を検索して調べる最も手軽な方法です。サジェストや検索結果に反社関連のキーワード・記事が出てこないかを確認します。
ニュースサイトや新聞記事のデータベース、SNS・ブログなどを対象に、噂レベルの情報まで網羅できる一方で、信憑性が不十分であることや、手作業で行うためチェック漏れ・情報漏れが起きたり、莫大な手間がかかったりすることは考慮しなければなりません。
警察または暴追センターへ相談する
各都道府県に設立されている暴力追放運動推進センターでは、反社会的勢力に関する相談を受け付けており、警察署が保有する「暴力団関係者データベース」と情報の照会ができます。しかし、調査結果を得るまでにはある程度の時間を要します。また警察署も、反社の疑いの根拠がない限り情報を提示しないことが一般的です。
ちなみに、暴力団追放運動推進都民センターでは、データベースへのアクセスは『賛助会員』にのみ許可され、会員になるために年会費(1口5万円)を支払う必要があります。
反社チェックツールを使う
反社チェックツールとは、反社チェックに特化した専用ツールやデータベースのことです。反社チェックの作業自動化、時間効率と情報の正確性の向上、人的ミスの軽減、人員の削減などが可能になります。
「できれば反社チェックに費用をかけたくない…」という方には下記記事がおすすめです。無料で試せるツールも紹介しています。
調査会社に依頼する
反社チェックは、専門の調査会社に依頼することができます。専門知識とリソースを駆使した信憑性の高い情報を得られる一方、比較的費用が高く、調査結果が得られるまで一定の時間を要します。
反社チェックの方法について詳しく知りたい方は、それぞれのメリット・デメリットや手順をまとめた、こちらの関連記事をご参照ください。
反社チェックはどこまで実施すればよい?
反社チェックを行う範囲に決まりはありませんが、最低限以下について調査することをおすすめします。
- 新規取引先
- 既存取引先
- 雇用前の従業員
- 就任前の役員
- 株主
従業員や役員に関しては、本人の過去の経歴に加えて、親族が経営している会社なども含めてチェックする必要があります。また、株主に関しては、株主を増やすまたは変更する際に実施し、株主が法人である場合は、その代表者や役員も含めて反社チェックを行うことを推奨します。
詳しくは下記記事をご参照ください。
反社チェックを実施する頻度やタイミングについては、下記記事をご参照ください。
覚えておきたい反社会的勢力への心構え
反社会的勢力に屈さないための心構えを確認していきましょう。
反社会的勢力は顧客ではない
反社会的勢力との取引は、法的にも倫理的にも許容されていません。反社会的勢力は顧客ではなく、企業に不利益をもたらし存続を脅かす、排除するべき対象です。
契約自由の原則
契約は自由意思に基づくものであり、企業は契約を結ばない自由があります。反社会的勢力が抵抗する可能性もありますが、契約自由の原則に基づき、「契約はできない」と明確に断るべきです。理由を付けることは避け、相手に攻撃の口実を与えないようにしましょう。
一切譲歩しない
反社会的勢力は巧妙に誘導し、譲歩を引き出そうとします。しかし、企業は一切の譲歩をしない強固な姿勢を崩してはいけません。譲歩は相手に攻撃の機会を与え、リスクを高めます。反社会的勢力の言葉巧みな誘導に乗らず、断固とした態度を貫くことが大切です。
反社会的勢力との関わりが判明した際の対処法
取引相手が反社会的勢力であることが疑われた場合や、反社会的勢力との関わりが判明した場合の対処法を、契約締結前後に分けてご紹介します。
ただし、どの段階であっても、担当者のみで対応せず社内全体で情報共有をすること、不当な要求がある場合や暴力的な行動が取られた場合には、直ちに警察や暴追センターに相談することを心がけてください。
取引前・契約締結前
- 証拠を残す
反社からの要求は確実に断りつつ、相手情報や用件を確認しましょう。取引相手が反社会的勢力である可能性がある場合、動揺して重要な情報を確認できないかもしれません。しかし相手に関する情報は、上司や適切な外部機関に助けを求める際にあると必ず役に立ちます。そのため、来訪者カードの記入を依頼したり、名刺を受け取ったりなどして確実に証拠を残すようにしましょう。
- 継続的なモニタリング(監視)
相手が反社会的勢力であるかどうかを確定することが難しい場合、急激に取引を中止することは法的な問題を引き起こす可能性があるため、相手の取引相手なども含めて継続的に監視を続け、慎重に対処することが重要です。その後、相手のリスクを評価し、新たな契約を結ばないことを検討するようにしましょう。
もし相手が即座の回答を求めてきたとしても、「後日ご回答します」という強い姿勢を崩さないことが大切です。
- 詳細を伏せて取引を中止(契約拒否)
早い段階で相手に取引の中止を伝え、その後の関係を断ちましょう。まだ契約を結んでいない段階では、詳細な理由を相手に伝える必要はありません。理由を詳しく伝えると、相手から反論される可能性があるためです。具体的な理由については触れず、「自社の判断に基づき取引を中止する」という結論を伝え、会話を終えましょう。
契約締結後
- 弁護士・警察・暴追センターなどに相談
取引先が反社会的勢力である可能性を感じた場合、最初に、警察や「暴力追放運動推進センター(暴追センター)」に相談しましょう。緊急時にスムーズに対応してもらえるよう、相談は早急に行い、必要に応じて警察との連絡を維持することが重要です。
また、弁護士に相談することも一つの対応策です。弁護士は法的な視点から問題を解決し、必要に応じて警察や暴力追放運動推進センターと連携することもあります。相談を通じて、適切な対処方法を見つける手助けをしてもらえます。
その際、取引の履歴や関連書類を処分せずに保管し、将来的な法的トラブルに備えましょう。これらの資料は主張や立場の裏付けとなる重要な証拠となります。
- 契約解除と損害賠償請求を実施
取引の相手方が反社会的勢力であることが確認された場合、契約に含まれる反社条項に基づき、契約解除と損害賠償請求を行うことが可能です。反社条項が契約に記載されていない場合でも、反社会的勢力の関与は重大な契約違反と見なされ、民法の規定に基づいて契約を解除し、損害賠償を求めることができます。
ただし、反社会的勢力に対する契約解除と損害賠償請求は、報復行為や法的な争いのリスクを伴うため、警察と協力しながら慎重に対処することが必要です。そして、取引を解消する決断に至った場合、円滑に契約を解除する努力が重要です。具体的な理由を直接伝えるのではなく、「警察からの指示に従い契約解除せざるを得ない状況にある」といった形で伝えましょう。
また、このような事態に備え、取引の履歴や関連書類の保管も怠らないよう心がけましょう。
まとめ
今回は、反社会的勢力との取引を回避する方法や、契約後に判明した場合の対処法について解説しました。取引相手が反社会的勢力である可能性を感じた際は、慎重に行動し、警察や専門機関と連携しながら適切な対処を行うことが重要です。反社会的勢力による圧力から、企業や従業員の身を守るためにも、反社会的勢力に関する知識と対策を備えていきましょう。
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