【弁護士監修】反社(反社会的勢力)とは?定義や見分け方、チェック方法をわかりやすく解説

ビジネスにおいて、反社会的勢力との関わりを避けることはますます重要視されてきていますが、定義が曖昧で、どこからが反社会的勢力なのかわからない…とお悩みの方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、その定義と具体例に加えて、基本的な見分け方や調べ方なども詳しく解説していきます。なお、本記事は弁護士監修のもと制作されています

この記事の監修弁護士

弁護士 高橋知洋 
AZX総合法律事務所 パートナー弁護士
2011年弁護士登録、
2014年AZX総合法律事務所入所、2019年から現職。

弁護士 柳沢優帆 
AZX総合法律事務所 アソシエイト弁護士
2020年弁護士登録、2021年AZX総合法律事務所入所、同年から現職。

 

この記事を読んでわかること
  • 反社会的勢力とはどのような人や組織を指すのか
  • 「反社会的勢力と関わる」行為の具体例
  • 反社会的勢力かどうかの見分け方

◎ 【反社会的勢力とは何か】を簡単に説明した「まとめ」を読むとより理解が深まります。

反社会的勢力(反社)とは?

反社会的勢力(反社)とは、暴力や威力、詐欺的な手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人の総称で、主に暴力団やその関係者、フロント企業、半グレ集団(準暴力団)などの犯罪組織を広範囲に指します。

威力:恐喝や脅迫などの精神的な圧力や、政治的なつながりや腐敗を悪用して行う賄賂などの不正行為による権力の乱用、資金洗浄(マネーロンダリング)などを含む不正な経済活動などの手法。

反社会的勢力の定義

実は、反社会的勢力には、明確な定義がなく、どこからが反社会的勢力なのかという基準を設けることはできません

例えば、反社会的勢力の定義についての政府の見解として、2019年には以下のように述べられています。

「反社会的勢力」については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難である

衆議院議員初鹿明博君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書

これと関連して、一般企業がアクセス可能な反社関連の企業・個人名が一覧になっているリストは存在しません)。そのため今回は、政府による指針や条例における定義を取り上げ、それに当てはまる人物や組織について解説していきます。

警察が持つ指定暴力団のリストや、専門の調査会社や団体が独自に作成したリストは、一定の条件下で閲覧できる場合があります。

【弁護士監修】反社会的勢力の実名リストはある?確認方法と指定暴力団や反社関連企業の見分け方

では、国や自治体によって規定されている定義を確認していきましょう。

2007年6月19日、政府指針として『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』が取りまとめられました。この指針では、「反社会的勢力」は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています(反社会的勢力の定義に関する質問主意書参照)。

また補足として、以下のような「属性要件」と「行為要件」に着目することの重要性も示されています。

  • 属性要件:反社会的な集団や人物の属性そのものを指す

(例)暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等

  • 行為要件:特定の集団に属する属さないに関わらず、行為によって反社会的勢力とみなす

(例)暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求

これを踏まえ、今回は反社会的勢力を主に以下のように分類して解説します。

  1. 半グレ集団・詐欺集団
  2. 総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等
  3. 暴力団・暴力団関係者
  4. 条例上の規制対象者(密接交際者)
  5. フロント企業(企業舎弟)の役員や従業員等

「反社会的勢力とは何か」と合わせて、「反社会的な行為とは何か」も具体的に確認していきましょう。

(1)半グレ集団(準暴力団)・詐欺集団

半グレ集団(準暴力団)・詐欺集団は、暴力団に所属せずに、主に特殊詐欺などの犯罪を行う集団を指します。

特殊詐欺は、半グレによって組織化されていること、半グレが暴力団とは異なり、暴力団対策法の対象外であることから、警察の取り締まりが難しく、社会的な問題となっています。

「暴力団対策法(暴対法)」(1992)

正式には『暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律』。都道府県公安委員会が暴力団を指定し、その団体に対する規制措置を講じる。具体的には、暴力団の特定の活動や交際を制限し、特に特殊詐欺などの犯罪を行う暴力団を厳しく取り締まり、法的な措置を可能とする。1992年3月1日制定。

(2)総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団

『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』における「属性要件」として挙げられるもののうち、「総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団」について簡単に紹介します。

総会屋

別名「まとめ屋」とも呼ばれ、日本の企業の株主総会に関連する不正行為を行う者。株主として企業に出席し、不正な手法で会議を混乱させたり、企業に対して金銭を要求したりする。

社会運動標ぼうゴロ

人権問題や環境問題などに名を借りて、社会運動を装い、実際には企業等に違法・不正な利益を追求する者。

政治活動標ぼうゴロ

政治活動を装い、街宣活動等による組織の威力を行使して、企業等に違法・不正な利益を追求する者。

特殊知能暴力集団

反社会的な組織と関わりを持ち、その支援を受けつつ、組織的な不正行為を指導する中心的な集団。反社会的勢力と協力し、会計や法律に関する専門的な知識を悪用して、株価の不正操作や内部者取引などを通じて、証券市場や企業から不当な利益を得ることを繰り返している。

参考:暴力団情勢と対策 | 全国暴力追放運動推進センター

(3)暴力団・暴力団関係者

東京都暴力団排除条例』(以下「条例」)は、東京都における「暴力団排除活動を推進するための措置、暴力団排除活動に支障を及ぼすおそれのある行為に対する規制等」を定めたものです。この条例での「暴力団(員)」及び「暴力団関係者」、「規制対象者」が反社会的勢力にあたります。

ここからは、「暴力団(員)」とは何か、「暴力団関係者」とはどこまでを指すのか、そして条例上の「規制対象者」とは何なのかについてご説明します。

「暴力団(員)」とは?

暴力団対策法において、暴力団は「集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織」と定義されています(第2条第2号参照)。具体的には、自己の私的な目的を達成するために、暴力や脅迫を駆使して犯罪行為を行い、社会に害を及ぼします。また「暴力団員」とは暴力団の構成員です。

「指定暴力団」

指定暴力団は、暴力団対策法に基づいて各都道府県公安委員会によって指定される暴力団のことを指し、「構成員による集団的または常習的な暴力的不法行為等を助長するおそれが大きい」と認定されたことを示す。指定暴力団の指定は各都道府県ごとに行われ、指定された暴力団に対しては、厳格な規制や監視、法的な制約が課せられる。

「暴力団関係者」とは?

条例上の「暴力団関係者」とは「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と定義されています(第2条第4号)。

ここで言う「暴力団員と密接な関係を有する者」について警視庁は以下のように説明しています(東京都暴力団排除条例Q&A Q6参照)。

  • 暴力団又は暴力団員が、実質的に経営を支配する法人等に所属する者
  • 暴力団員を、雇用している者
  • 暴力団又は暴力団員を、不当に利用していると認められる者
  • 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
  • 暴力団又は暴力団員と、社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者

続けて、「暴力団又は暴力団員と、社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者」とは何か確認していきます。

「暴力団又は暴力団員と、社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者」とは?

上記「暴力団又は暴力団員と、社会的に非難されるべき関係を有していると認められる」とは以下のような場合を指します(東京都暴力団排除条例Q&A Q7参照)。

  • 相手が暴力団員であることを知りながら、その主催するチャリティー・ゴルフ・トーナメントに参加している
  • 相手が暴力団員であることを認識しながら、頻繁に共にレストランで食事をしている
  • 誕生日パーティーの名目で、多数の暴力団員が出席するパーティーに参加している
  • 暴力団員が運営する地元の地下賭博クラブに頻繁に出入りしている

暴力団関係者と”みなされない”場合

以下の状況・境遇等に置かれている場合は、それだけをもって「暴力団関係者」とはみなされません(東京都暴力団排除条例Q&A Q6参照)。

  • 暴力団員と交際の噂が広まっている
  • 暴力団員と一緒に写真に写ったことがある
  • 暴力団員とは、幼なじみの間柄で交際している
  • 暴力団員と結婚を考えて交際している
  • 親族や血縁関係者に、暴力団員がいる

(4)条例上の規制対象者(密接交際者)

条例第2条第5号で規定される「規制対象者」とは、具体的に以下を指します(東京都暴力団排除条例Q&A Q9参照)。

  • 暴力団員(同号のイ)
  • 既に暴力団を離脱しているものの暴力団員と変わらない者
  • 「暴力団員ではないが、暴対法第11条に基づく中止命令等を受けた日から3年を経過しない者」(同号のロ)
  • 暴力団員と認定できないまでも、準構成員等、極めて暴力団員に近い者
  • 「暴対法第12条、同法第12条の6に基づく中止命令等、同法第12条の4第2項に基づく指示を受けた日から3年を経過していない者」(同号ハ、ニ)
  • 「暴力団との間で威力を使用することの対償として利益供与することを合意している者」(同号ホ)
  • 「暴力団員の行った暴力的不法行為等の共犯等として刑に処せられて、その執行が終わった日から5年を経過しない者」(同号ヘ)
  • フロント企業の役員や従業員等
  • 「暴力団員が代表者であったり、その運営を支配している法人等の役員や従業者等」(同号ト)
  • 自己の事業のために暴力団の威力を利用する者
  • 「第24条第1項に規定する利益供与違反を繰り返し公表された者」(同号チ)
東京都暴力団排除条例 Q&A Q9

これをもとに、以下を取り上げ反社会的勢力について具体的に解説していきます。

  • 暴力団との間で威力を使用することの対償として利益供与することを合意している者
  • 自己の事業のために暴力団の威力を利用する者・暴力団の活動を助長する者

順番に確認していきましょう。

「密接交際者」

暴力団関係者及び規制対象者のほか、ほとんど同様の意味で「密接交際者」という呼び方をする場合がある。密接交際者とは、「暴力団と深いつながりや社会的に受け入れがたい関係を持つ企業や個人」のことで、この後に説明する、暴力団と利益供与関係・協力体制・共生状態にある企業や個人を指す。

暴力団との間で威力を使用することの対償として利益供与することを合意している者

以下は条例が定める規制対象者の定義の一部を引用したものです。

「暴力団員との間で、その所属する暴力団の威力を示すことが容認されることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与すること(以下「利益供与」という。)を合意している者」

東京都暴力団排除条例 第2条第5号のホ

つまり暴力団員との間で「利益供与」を行い、「暴力団ともちつもたれつの関係にある者」は規制対象者にあたります(東京都暴力団排除条例Q&A Q9参照)。
「利益供与」とは「金品その他財産上の利益を与えること」であり、例えば、商品を売る、適正な価格で買う、というだけでもこれに該当します(東京都暴力団排除条例Q&A Q11参照)。

ただし、条例で規制されるのは、その利益供与の相手方が暴力団と知った上で取引が行われた場合に限ります(知らなかった場合や、後から判明した場合は除外)。

自己の事業のために暴力団の威力を利用する者・暴力団の活動を助長する者

条例では、事業者が規制対象となる、「相手方が暴力団であると知った上で、利益供与を行う場合」について以下のように定めています。

  • 暴力団の威力を利用することの対償として行われる場合(条例第24条第1項)
  • 暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることを知って行われる場合(条例第24条第3項)

言い換えると、「自己の事業のために暴力団の威力を利用する場合」または「暴力団の活動を助長する場合」といえます。このように、事業者が規制対象となる(利益供与違反になる)、または規制対象とならない(利益供与違反にならない)のは、具体的にどのような場合なのか、第24条第1項・第3項それぞれに則って確かめていきましょう。

第24条第1項において事業者が利益供与違反になるケース

第24条第1項における「暴力団の威力を利用することの対償として行われる場合」とは以下のような行為のことを指します(東京都暴力団排除条例Q&A Q12参照)。

  • 建設会社が、土地の取引において競合他社を排除するために、「競合他社の代表者に圧力をかけ、取引を諦めさせてほしい」と暴力団に依頼し、金銭を支払った場合
  • 製造業者が、労働組合のストライキを阻止し、生産ラインをスムーズに続けるために、「組合員を脅してストライキをやめさせてほしい」と暴力団に依頼し、金銭を支払った場合
  • 運送会社が、競合他社からの仕事の奪取を図るために、「競合他社のトラックを妨害し、契約を獲得できるようにしてほしい」と暴力団に依頼し、金銭を支払った場合
  • 飲食店が、特定の食材供給業者からの調達価格を引き下げるために、「供給業者に脅しをかけ、価格を下げさせてほしい」と暴力団に依頼し、金銭を支払った場合

第24条第3項において事業者が利益供与違反になるケース

第24条第3項における「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることを知って行われる場合」とは以下のような行為のことを指します(東京都暴力団排除条例Q&A Q13参照)。

  • 建設業者が、特定の土地に新しい暴力団事務所を建設する工事を受注し、それを知りながら工事を進行させる行為
  • イベントプロモーション会社が、特定の暴力団組織の主催であるコンサートや祭りの広告活動を行い、そのイベントに協力する行為
  • タクシー会社が、特定の暴力団事務所からの配車依頼を受け、それを知りながらその配車を実施する行為
  • 印刷会社が、特定の暴力団組織が使用するビラやパンフレットを印刷し、それを知りながら提供する行為
  • 会議施設が、特定の暴力団事務所が主催する会合や集会の場所として使われることを承知の上で会場を貸し出す行為
  • 自動車ディーラーが、特定の暴力団組織が車両を購入することを承知した上で、その組織から車両の購入注文を受ける行為

事業者が利益供与違反に”ならない”ケース

条例上、相手が暴力団員等であることを知らなかった場合や、金銭の代わりに提供した利益が暴力団の活動を支援することにあたらない場合、相手が暴力団員等であっても、利益の提供に正当な理由がある場合には、事業者の利益供与違反にはなりません。それぞれの具体例は以下の表の通りです(東京都暴力団排除条例Q&A Q13参照)。

事業者が利益供与違反にならない場合具体例
相手が暴力団員等の「規制対象者」であることを知らなかった場合高級レストランが、特定のグループから大規模な予約を受け、豪華な食事を提供したが、その際に相手が後から暴力団関連であることが判明した
提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」を知らなかった場合会議施設が、一般的なビジネスセミナーとして予約されたため貸し出したが、実際には予約した団体が暴力団関連の組織だったことが後から判明した
提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」にならない場合・ホテルや葬祭業者が、暴力団員の家族のために冠婚葬祭を行うために会場を提供する
・スーパーマーケットなどの小売店が、暴力団員に対して日常生活で必要な商品を販売する
・飲食店が、暴力団事務所に対してそばやピザなどの出前を提供する
法令上の義務又は情(事情)を知らないでした契約に係る債務の履行として利益供与する場合その他正当な理由がある場合・暴力団事務所に電気やガスの供給を行ったり、医師が法律に従って診療行為を行うなど、法的要件に基づいた行動
・建物や施設の維持管理など、法的な規定を遵守し、暴力団事務所の保守作業を行う
・弁護士が、民事訴訟において暴力団員の代理人を務める

違反かどうかの判断に迷う場合は、警察に直接相談してください。

(5)フロント企業(企業舎弟)の役員や従業員等

条例上の「規制対象者」を定める第2条第5号において、フロント企業の役員や従業員等は規制対象者に該当します(東京都暴力団排除条例 Q&A 警視庁 Q9参照)。

フロント企業とは?

「フロント企業(企業舎弟)」とは、反社会的勢力が資金を調達するために運営される企業であり、暴力団の資金源になっている企業のことを指します。通常の企業の倫理観や取引の常識から逸脱した営業活動を行い、トラブルが生じると、背後の暴力団の威圧力を利用するなど、一般の企業にとっては非常に危険な存在となっています。

1992年3月に制定された暴対法(暴力団対策法)により、指定暴力団と認定された組員が暴力的な要求行為を行うと、公安委員会からの「中止命令」が発令され、その行為を中止させることが法的に可能になり、これに従わない場合には罰則が設けられました。そのため、指定暴力団は暴対法の規制を回避するために、自分たちの組員を公然とは関係のないフロント企業を設立し、組織からの形式的な脱退を装う傾向が強まりました。

ちなみに、「フロント」の由来は、英語の「front(隠れみの)」で、反社会的勢力が企業を隠れみのとして、堂々と資金を獲得し活動していることからきています。

フロント企業の特徴

フロント企業は、法的措置を回避するため、暴力団自体によって新たに設立されることもありますが、資金力を背景に既存の企業の支配権を取得し、自身のフロント企業に変えることもあります。さらに、代表者を一般市民に任せていることがほとんどであり、一般の合法的な企業と同様に装うことができるため、外部から見る限り、フロント企業と通常の企業を区別するのは難しくなっています。

また、働いている社員が自分の会社がフロント企業であることを知らないことも多々あります。設立や業務内容が合法であり、一見して普通に働ける環境だったとしても、暴力団が少しでもその運営に介入している場合はフロント企業と分類され、反社会的勢力であるとみなされるため注意が必要です。

反社会的勢力との関わりを避けるには?

反社会的勢力との関わりを避けるには、定期的な「反社チェック」が効果的です。反社チェックとは、企業が契約や取引を始める前に、相手が反社会的勢力に関係していないかを確認する手続きです。取引先、社員、株主などが反社会的勢力との関係が疑われる場合、それを事前にチェックすることで、反社会的勢力との取引の防止につながります。

【2024年最新】反社チェックとは?具体的な方法や対象範囲、緊急時の対処法を徹底解説

反社会的勢力との取引に関するリスク対策もしもの時の対応方法について、詳細は下記記事をご参照ください。

反社会的勢力との取引を回避するには?契約後の対応方法

反社会的勢力かどうか見分ける方法

反社会的勢力かどうか見分ける、反社チェックの主な方法は以下の通りです。

  • インターネットで検索する
  • 警察または暴追センターへ相談する
  • 反社チェックツールを使う
  • 調査会社に依頼する

順番に確認していきましょう。

簡単にできる反社チェック診断は、こちら

あなたの取引先は大丈夫?簡単にできる反社チェック診断

反社チェックを行う適切な頻度については下記記事をご参照ください。

反社チェックはどれくらいの頻度で行うべき?

インターネットで検索する

インターネットでの検索は、法人名や個人名を検索する最も手軽な方法です。サジェストや検索結果に、反社会的な関連キーワードや記事が表示されないかを確認します。

ニュースサイト、新聞記事のデータベース、SNS、ブログなどを対象にし、噂の情報まで幅広く収集できますが、情報の信頼性が不確かな場合があります。また、手作業で行う必要があるため、チェック漏れ・情報漏れや手間が増える可能性もあることは理解しておかないといけません。

検索によるチェックの手順や、効果的なキーワードについては下記記事をご覧ください。

Google検索で反社チェックを行う方法|具体的な手順を解説

警察または暴追センターへ相談する

各都道府県に設立されている「暴力追放運動推進センター」では、反社会的勢力に関する相談を受け付け、警察署が管理している「暴力団関係者データベース」の情報を照会できます。ただし、調査結果が提供されるまでに時間がかかることがあり、また、警察署は一般的に反社会的な関与の根拠がない場合、情報を提供しないことが通例です。

ちなみに、暴力団追放運動推進都民センターでは、データベースへのアクセスは『賛助会員』にのみ許可され、会員になるために年会費(1口5万円)を支払う必要があります。

反社チェックツールを使う

反社チェックツールとは、反社チェックに特化した専用のツールやデータベースを指します。ツールを活用することにより、反社チェックのプロセスの自動化によって作業効率を向上させます。さらに、情報の正確性を高められるだけではなく、人為的なミスの軽減や、人員の削減にもつながります。

反社チェックツールについての詳細と、おすすめのツールは下記記事をご参照ください。

反社チェックツールおすすめ12選比較!料金や調査範囲の違いは?

「できれば反社チェックに費用をかけたくない…」という方には下記記事がおすすめです。無料で試せるツールも紹介しています。

【決定版】無料で使える反社チェックツールのおすすめ8選比較!方法や調査内容の違い

調査会社に依頼する

反社チェックは、専門の調査会社に依頼することができます。専門知識とリソースを駆使した信憑性の高い情報を得られる一方、比較的費用が高く、調査結果が得られるまで一定の時間を要します。

そのため、自社での調査の結果、企業や個人に反社との関わりが疑われ、さらに情報が必要になったら、調査会社に詳細なチェックを依頼する、といった使い方が良いかもしれません。

反社チェックの方法について詳しく知りたい方は、それぞれのメリット・デメリットや手順をまとめた、こちらの関連記事をご参照ください。

反社チェックの方法は?必要な理由や緊急時の対処法

反社チェックはどこまでやればいい?

反社チェックを行う範囲に決まりはありませんが、最低限以下を対象にしたチェックを行うことをおすすめします。

  • 新規取引先
  • 既存取引先
  • 雇用前の従業員
  • 就任前の役員
  • 株主

従業員や役員に関しては、雇用前・就任前本人の過去の経歴を調査する必要があります。また、コンプライアンスが特に重視される金融会社や大手上場企業などにおいては、従業員や役員の親族が経営している会社までチェックを行う場合があります。

株主に関しては、株主を増やすまたは変更する際に実施し、株主が法人である場合は、その代表者や役員も含めて反社チェックを行うことを推奨します。

反社チェックをどこまでやればいいのか、それぞれ調査が必要な理由など、詳しくは下記記事をご参照ください。

【徹底解説】反社チェックはどこまで行うべきか|調査範囲と方法、緊急時の対処法

反社会的勢力への国や地方自治体による対策

国や地方自治体が行なっている反社会的勢力への対策をご紹介します。

法律の整備

1991年に「暴力団対策法」が制定され、これは過去の暴力行為、覚せい剤、恐喝、賭博、ノミ行為などと結びつく反社会的勢力に対処するための法律でした。しかし、これ単独では反社の撲滅には至りませんでした。

その後、2003年に「本人確認法」(正式名称『金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律』)が導入され、2007年には『犯罪収益移転防止法』が成立し、資金の流れを明確にする方向に対策が転換されました。特に金融業務などでの本人確認が必須とされました。

法務省の指針

政府の犯罪対策閣僚会議が2007年に発表した『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』は、企業に対して反社会的勢力への対処方法を提供しています。この指針は、企業が反社との関与を防ぐための基本的な方針から実務対応まで包括的にカバーしているガイドラインです。

都道府県における暴力団排除条例

2009年から2011年にかけて、全国の都道府県で制定された「暴力団排除条例」は、地方自治体が反社会的勢力に対抗するために導入した条例です。これらの条例は都道府県および市区町村レベルで適用され、一般的には事業者に反社への利益供与を禁止し、これに違反した場合には勧告や公表の対象となります。

また、事業者に対して反社との取引相手の確認や、取引契約に「暴力団排除条項」を組み込むことなど、様々な努力義務を課しています。

参考:東京都暴力団排除条例暴力団排除条項の記載例/大阪府警本部

まとめ【反社会的勢力とは何か】

これまでの説明に基づき、定義が曖昧な「反社会的勢力とは何か」についてわかりやすくまとめると、①個人や集団の属性が反社会的勢力である場合、②個人や集団の属性は反社会的勢力ではないが、それらと関係を持つことによって、反社会的勢力とみなされる場合に分類できます。

さらに、はじめにご紹介した政府指針企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針における定義より、特定の集団に属する属さないに関わらず、行為によって反社会的勢力とみなされる場合(行為要件)も反社会的勢力として見なされる要因となり得ることも頭に入れておかなければなりません。

ここからは、以上に示した「反社会的勢力とは何か」という問いに対する、①②の説明について具体例とともに確認していきます。

① 個人や集団の属性が反社会的勢力である場合

  • 暴力団、半グレ集団、フロント企業等の反社会的な集団自体のこと
  • 反社会的な集団や分類に属し、その一員となっている人物
    (例:暴力団員、半グレなど)

これらを指して、以降「反社会的な集団や人物」と表記します。

なお、「暴力団員の親族・血縁者」などは、それだけの理由で反社会的勢力とみなされることはありません。

② 個人や集団の属性は反社会的勢力ではないが、それらと関係を持つことによって、反社会的勢力とみなされる場合

ビジネス編

  • 反社会的な集団や人物が(実質的に)支配する法人等に所属している(フロント企業の役員・従業員なども含む)
  • 反社会的な人物を雇用している
  • 反社会的な集団や人物に、暴力・威力等の手段を用いることを依頼するなどして、意図的にビジネス関係で利用し合い、金銭その他の利益を与えたり受け取ったりしている(利益供与関係・協力関係・共生状態)
  • 反社会的な集団や人物の活動の手助けとなる金銭その他の利益を、それを承知の上で提供している

私生活編

  • 反社会的な集団や人物と、それを承知の上で、頻繁に食事するなど日常的に交流がある
  • 反社会的な集団や人物が主催するまたは多数参加するパーティーや行事、賭博などに、それを知った上で参加している
  • 反社会的な集団や人物が経営しているバーなどの店舗などに、そうとわかった上で頻繁に出入りしている

以上は一例ですが、これらに当てはまる人物や集団、企業等はすべて「反社会的勢力」と考えて良いでしょう。そして、これらすべてとの関わりを避けるべきであり、そのために反社チェックなど事前対策が必要不可欠になります

今回は反社会的勢力の定義や、反社会的勢力と判断される場合の具体例、基本的な調べ方についてご紹介してきました。しかし、反社会的勢力に関する情報は日々変化しており、新たな手法や傾向が現れるかもしれません。企業や従業員を守るためにも、常に最新の情報に注目して、適切な対策を講じましょう。

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この記事を書いた人

Ayuka Fujii
Ayuka Fujii

2023年3月〜オートロに従事し、現在は主にAI系の記事制作と公式X(@autoro_io)の運用を担当。初心者目線で親しみやすい記事作りを心がけています。趣味は日本全国のグルメマップを作ることで、行ってみたいお店の数が全国3000を突破しました。新潟生まれ新潟育ち。